第10話
政治の話は難しい…。素人が考えた妄想設定なので、何処かしらおかしいところが出てくるかもしれません。もしおかしなところがあったら笑って許して下さい。
「ふぅ、思った以上に大変な事態になっていますね…。」
少女の事情を聞き始めたアキトは、深く溜め息をつきながら情報を整理していた。
「しかし、まさかアビス国王が暗殺されたとは…。」
少女の話によると、今までヨミ国と友好を深め、ヨミの言葉と技術を国民に広める事で国民の生活水準向上に努めた親ヨミ派筆頭のデモロド・レィ・アビス王が先日、居城で亡くなったいるのが見つかったのだそうだ。
故デモロド王は、30年近く前に起こった人と導族との戦争、“二年戦争”により国民が疲弊していることを憂い、人に対して強硬路線を採り続けていた当時の国王、故デモロド王の実の父親に当たる人物を誅殺して台頭し、ヨミ国と協調して休戦協定を結んだ人物である。大の親ヨミ家と名高く、その居城はヨミ国製の家具が多く存在していた。
「それで、今は前国王の父方の従兄弟に当たるマクウィス・イツ・アビスという人物が王位についていると…。」
前国王には4人の息子と娘がいる。アビス王国の王位継承法によると、亡くなった前国王に息子または娘がいた場合、前国王の従兄弟よりもその継承順位は上となる。故に通常ならば故デモロド王第2夫人が嫡男、王位継承順位第一位のアリベル・ヒ・アビス王子が次期国王になる筈であり、継承順位第五位のマクウィスが王位を継ぐことは無い。
「はい…、本来ならばアリベル王子が王位を継ぐ筈だったのですが…。」
「前国王を謀殺した嫌疑が、その王子や他の弟妹に掛かっているのですね?」
「はい…、その通りです…。」
前国王を殺した下手人はその場で処刑されたが、その下手人の雇い主がアリベル王子または他の弟妹達であるとの疑いが持ち上がった。
そこで、王子達に事情聴取のための出頭要請が来たが、王子達はそれを無視して国外へ逃亡。今はアビス王国の隣のメイフ王国に匿われている状況であった。マクウィスは、逃亡を理由に王子達を糾弾し、犯人は王子達であると公に発表した。王位継承順位第一位から第四位までが居なくなってしまったため、順位第五位のマクウィスが現在臨時の国王を務め、近々正式に王位を継承するという。
「しかしまた何故、シルバーナ様の命が狙われているのですか?」
「そんなに畏まらないで下さいアキト様。…それは私の出自が関係しているのです。」
「…あなたが実は王族であるとか?」
アキトの予想にシルバーナの目が見開く。
「はい…、よく判られましたね。ですが、王族と言っても傍流の庶子なのでその扱いは一般人と何ら変わりませんが…。」
シルバーナの言葉によると、彼女の父親は遠い親戚の王族で、母親は名も知らぬ春売りであった。父親は子供を認知せず、母親は貧困のため子を育てることを拒否した。そこで孤児院に預けられて居たが、それを不憫に思ったバイドンことフェルミ公爵の息子夫妻が赤ん坊のシルバーナを引き取り、養女として愛情をもって育て上げたのだという。バイドンの息子夫妻が事故で亡くなった後は、バイドン自らが彼女の後見人となり、更に正式にシルバーナを跡継ぎとして指名していた。
シルバーナの義理の祖父、バイドンは前デモロド王の母方の伯父にあたる。その高い武勇を認められ国王直属の親衛大隊の隊長を勤め上げた人物であり、王位継承権こそ無いものの、前国王に重宝されていたためその発言力は高く、また領民からの信頼も高かった。また、自身の妻にはデモロド王の叔母に当たる人物を迎えて入る為、血縁的にも王族と深い繋がりを持ち、多大な影響力を持っている。そんな人物が後見人についているシルバーナは、ともすれば次期国王になる可能性を持っていた。
「だからあなた様は命を狙われているのですね…。」
「はい…、お祖父様は、おそらくマクウィスがデモロド王を殺し、その罪を王子達に被せて王位を纂奪したのだろうと仰っていました。お祖父様はデモロド王の所属していた穏健派の筆頭、マクウィス率いる強硬派とは長年対立してきました。
なので現状に不満をもったマクウィスがデモロド王を殺し王となった今、次に狙われるのは対立する我々、特に王位継承の可能性がある私が標的となるとお祖父様は仰い、ヨミ国に一時避難しようと私を此処に連れて来られたのです…。」
私は王位になんて興味は無いんですけどね…と続けるシルバーナの顔は、悲しみと疲れで大分精神的に追い詰められている様であった。
バイドンは人気があり、その糾弾には国民からの大きな反発が予想されたため、表向きにはバイドンはヨミ国に親睦の為の外交特使として、新国王就任の挨拶を兼ねて派遣されたと言う発表がなされている。
その裏で暗殺者を放ち、バイドンとシルバーナを亡き者にしようとし、ヨミ国内のスパイを利用してヨミ国へ避難する途中の彼らを襲ったのだという。
「それで今暗殺者は…?」
「お祖父様が自らを囮にして引き付けてそれきり…。」
そう言って俯くシルバーナに、失言だったとアキトは慌て、暗くなった雰囲気を変える為、彼女を安心させる為に話かけた。
「とにかく事情はわかりました。辛い中よく此処まで来られましたね。色々大変でしょうけれど、気をしっかり持って下さい。僕もできる限りの事はさせて頂きます。」
「…いえ!そんな!私達の問題にあなた様を巻き込むなんて…。」
アキトの発言にシルバーナが慌てると、アキトは苦笑した。
「もう十分巻き込まれて居ますよ。それに、せっかく助けた人を見捨てるなんて僕には出来ません。幸い僕の通う学園の学園長は政府と繋がりがあると聞いていますので、これから学園長に連絡して相談しようと思います。大丈夫です。学園長は変わった方ですが、良い人なので必ず力になってくれますよ。」
「…何から何まで、本当にありがとうございます。」
シルバーナは口に手を当てて声を震わし嗚咽をこらえ、拭いながらも尚も溢れる感謝の涙に頬を濡らしていた。その姿を見ていたアキトは心の中で呟く。
(なかなか大変な事になってしまいましたね…。)
アキトはお人好しでは有るが命知らずではない。わざわざ危険に飛び込むのが好きな特殊な性癖は持ち合わせていない。本来ならばこの様な厄介事は何が何でも回避しようとする臆病な青年であった。
(ですが…、今目の前の少女を見捨てるなんて、出来ません。出来る訳が有りませんよ…。)
アキトは自身の長い後ろ髪を弄りながら、決意を新たにするのであった。
男性が少女に話し掛ける事案発生。




