4話 組長
そこに現れたのは
水仙組組長、柳浩二だった。
「おーみんな元気にやってるかぁ~」
ひときわバカでかい声が組の中に響き渡る
とても70歳には到底見えない。
「親父、今日は事務所に来る予定ではなかったのでは…」1人の組員が言う。
「あーまぁそうだったが、別にいいじゃねぇか。
それとも何かぁ?自分の家に用事がないと来ちゃいけねぇのか。」
そう言われた組員は
「いえ、そういうわけではないです。」
と小さくかしこまった。
「おう、大河久しぶりじゃねぇか。最近どうよ下の調子は?おめぇまだ若いんだからできる時にやっとけよ~、俺なんかヤリたくてもちーとも使い物にならんからよ~」
組員はみんな爆笑しだした。
その一言で組のさっきまでの雰囲気が見事に吹き飛んだ。
それを見た男はこう思った。
(まだこいつの情報は頭に流れてきてないが、こいつがここの主か‥‥意図してかそうでないか分からないがこの場の流れが変わった。)
そう思った矢先、いつもの情報が頭に流れ込んでくる。
柳浩二
70才 水仙組組長
(やはりな、ワシの思った通りじゃ)
「親父、ご無沙汰しております。いや~てんで使う機会が全くないんですよ~今度誰か紹介して下さい」
今度は大河の中でスッと言葉が出てきた。
「そうかそうか、おめぇ顔はそこそこいいんだからきっかけさえありゃやりたい放題できるぞ~
ガハハハハ」
と言ってまたその場の雰囲気が和んだ。
そして、すっと表情を引き締めて
「で、男がぞろぞろみんな集まってなにしてたんだよ。そこの椅子に座ってる坊っちゃんよ、ちょっくら俺に説明してくれないかぁ?」
「親父、いや少し聞き分けのない組員に指導をしていたんですよ…‥」
バツが悪そうに智史が答える
「ほぅ~指導かぁ~で誰を指導してたんだ?」
「仕事を覚えない大河を指導してました‥‥」
「大河に‥‥そうかそうか。というより教える程今のこの組に仕事なんてあるかよ~ガハハハ」
そう言うとまた組員が笑い出した。
さっき以上に笑っていると
「おい、お前ら笑い過ぎだろ。その辺にしとけ。
おめぇらがもっと頑張って組の仕事増やせよ。」
とノリツッコミをする組長
「まぁ~冗談はさておき、智史。おめぇまたいびってたわけじゃないだろなぁ~?」
「俺が知らないとでも思ってるのか?おめぇの悪い癖だぞ。おめぇは新人や気に入らないやつに対しては風当たりがつえ~からなぁ~。」
「そんなんじゃ下がおめぇについていかないぞ。
もっと下から好かれる人間になれ。分かったか」
「分かりました。以後気をつけます。」
「よし。分かればいい。んでいつまでその椅子に座ってるんだ早くどけどけ。俺の席じゃ」
そう言って智史を突っついて椅子からどかせた。
「大河。智史がすまんなぁ。こんなやつだがこれからも組の為に良くしてくれ。」
「親父‥‥もったいなき御言葉。恐悦至極に存じます。」
不意に男の口から出てしまった。
(しまった。つい感情が揺さぶられると言葉が)
「ん。なんだその言葉遣いは。説教され過ぎておかしくなったんか?」
そこですかさず浩介が
「こいつなんか時代劇見すぎて、その影響で時々言葉がおかしくなってしまって。」
「ほーなるほど。そうかそうか、まぁあんまり何でもはまり過ぎるなよ。女にも気をつけろよ」
「はい、肝に銘じときます。」
(助かった浩介)
「そうそう、忘れるとこやった。その為に事務所にきたんだが、大河に任せたい仕事があってな」
「今俺らがケツモチしてるキャバクラがあるんだが、最近物騒な連中が時々きて困ってるみたいなんやわ」
「ちょっと顔出して状況だけでも確認してきてくれへんか?」
「分かりました。この後すぐ向かいます。」
「そうかそうか、ほな頼むで」
「なんやったらそこの可愛い子紹介したろか?俺が選ぶ子やから外れなんてないぞ。」
「親父‥‥さっき自分でも言ってたじゃないですか、女にも気をつけろよって。親父、女の子に甘えられたらなんか何でも買うてそうやし」
そこで組員みんなが頷く。
「あーそやったかなぁ…まぁほどほどにな。じゃ頼むで」
あっ逃げた。組員みんながそう思った。
「まぁ何にせよ、また報告にきますので、よろしくお願いします。」
そう言って、男は事務所のドアを開け、その場を後にした。




