11話 新たな門出
大河は浩介から借りた車を颯爽と運転して組の事務所へ向かっていた。
ナビもいれずに男は殆ど感覚で車を進める。
「確かここを曲がって、次は直進やったはずだ」
そうこうしている内に事務所に到着した。
運転と同じ感覚で迷いなく駐車しようとした時、車が壁に擦れてしまった。
大河が降りて車を見る。
「何か傷ついてもうたな……まぁ少しくらいやし大丈夫だろ」
大河は気にせず事務所に入る。
「遅くなってすいません。ただいま戻りました」
「遅い!!送るだけやろ~何しとってん?」
「まぁ~かくかく然々で」
「……分かった分かった。怜香さんとイチャついとってんな」
浩介が案外鋭いところを突く。
「いやいや、ただコーヒーだけでも飲んでいけばと言われてしぶしぶね…」
「まぁそういうことにしといたる。んでコイツらどうするんや」
浩介が紅蓮隊のことを言う。
「今回の事も調べなアカンし、僕の下働きみたいな感じで使いますわ」
「そうかぁ…コイツら使えるか?」
「兄貴…大丈夫です。人間何かしら使えるところはありますから、そこをうまいこと利用して使いますわ。適材適所ってやつで」
「大河。お前からそんな言葉が出るとは…お前の兄貴分としてなんか涙出そうになる」
浩介は嬉しそうに大河に話す。
「僕ってそんなにアホに見えます…?」
(普段のこいつはいったいどんだけたわけなんか、今の浩介の言葉で分かった気がするぞ)
「うん、アホ丸出しやぞ」
浩介は即答した。
「はぁ~そうですか。じゃ今日から近藤大河は生まれ変わりますわ」
(中身は本当に違うがな…)
「そうかそうか。大河!!頑張れよ」
「早速なんですが、兄貴やったら今回の件、どう動きます?」
「そうやなぁ…‥まずこの紅蓮隊の活動拠点をシラミ潰しにあたるかな」
「やっぱりそうですよねぇ。それが一番手っ取り早いですよね。まずコイツらが今どこで何してるか!!」
「そうそう、あとはそこで幹部かはたまた上層部の連中を捕えて、リーダーの場所を聞き出すかな」
「分かりました。早速いってきますわ」
「おう、また何か困ったことあったらすぐ俺に連絡しいや」
「はい、ありがとうございます。じゃコイツら連れていきますわ」
そう言って大河と紅蓮隊の奴らは事務所を後にした。
その時大河はふと思い出す。車のキズのことを。
「ああ、兄貴に言い忘れてたわ。そうや携帯のメール使お」
大河は自分の携帯を触る。その際いつもの情報が流れる。
「兄貴…‥すいません。駐車場に車を入れる時、少しキズがいきました」
(これも便利やな。離れた相手に文を即座に渡せる)
その時浩介にメールが入る。
「おっ、大河からやんけ、早速なんの連絡や…‥‥車にキズ‥‥‥
大河ーーー!!」
事務所に浩介の声が響きわたった。
事務所を出て路地裏に大河と紅蓮隊がいた。
「よし、お前らまず最初に俺が考えている、これからの事を話す」
(こいつらが俺の最初の臣下になるのだから、俺がこれから目指すところを説明しといたほうがよさそうだな)
普段の大河ではなく、威圧感がある状態で男は話し出す。
「これから俺はこの組のトップを目指そうと思うてる。その為にお前らは俺の為に働け」
突拍子もない大河の言葉に紅蓮隊の連中は唖然とした。
続けざまに大河は言う。
「俺の下で働くなら、俺の為に動け、俺の言うことをすぐ理解しろ、俺が次何をしたいかを察せ。それが条件だ」
紅蓮隊の連中は顔を見合わせる。
「そんな急に言われても...‥俺ら頭もよくないし……大河さんの求める事には応えられないかもです‥‥‥」
男は少し黙り、口を開く。
「では、そうなれるように努力しろ。もちろんそれに見合った対価も渡す。あと、今のお前らでは想像できんくらいの景色を見せてやる」
紅蓮隊の連中は困惑気味な表情を見せる。
「まぁ、今すぐにそのようになれとは言ってない。これから俺がお前らを見定める」
そして男は鋭い目つきで言う。
「今ここで、この俺に忠誠を誓え。もし嫌ならここから去れ。嫌々おられても俺は困る」
「大河さん…‥話が大きすぎて…‥少しついていけないです‥‥少しみんなと話し合ってもいいですか」
「ああ。返事は急かさん。よく考えろ」
その後、紅蓮隊の連中は少し離れて話を始めた。
「なぁ、ちょっとヤバくないかあの大河ってやつ?」
「確かに言動はかなりヤバイな。組のトップになるとか‥‥下で働く時の条件とか…」
「でも妙に言葉の説得力があるというか、引っ張られるというか、ついていきたくなるというか‥‥‥」
「紅蓮隊にはこんな人いてないよな?」
「上の人らはみんな好き勝手してるし、俺らに対しての扱いも雑だしなぁ~」
「一度この大河って人についていってもいいんじゃないか?」
「俺はごめんだな、何を考えてるかさっぱりわからない」
「俺もそれに賛成」
「そうかなぁ~恐い人だけど、俺は少しワクワクする感じがあるよ」
紅蓮隊の連中は15分くらい話し合った。
そして大河の元に戻り返答をする者、そこから立ち去っていく者に分かれた。
「大河さん。今話し合ったんですが、俺ら大河さんについていこうと思います。なのでこれからよろしくお願いします」
そこに残ったのは3人だった。
「よし、では今からお前らは俺の元でしっかりと励め。よいな」
(まぁ半分残ったならいい方だな。下手したら全滅だったかもしれんしな…)
大河は内心そう思った。
「はい、よろしくお願いします」
「じゃ軽く、お前らの事を俺に教えてくれ」
「早乙女健太郎23歳、あまり人と接するのは苦手です。力仕事は得意です」
「お前でかいな。身長どれくらいだ?」
「185cm、体重は100kg超です」
「よし分かった。次」
「平真二23歳、特技は誰とでもすぐ仲良くなれることとケンカです」
シンジは一際でかい声で話した。
「うるさいなあ…よし分かった。次」
「林勝人24歳、特技は特にないです。強いていうなら何事にも省エネで解決したいと思います」
「なんじゃそりゃ……まぁよいわ」
「よし分かった。今日からお前ら3人は俺が預かる。他に何か聞きたいことはあるか?」
勝人がボソッと聞く。
「大河さん……活動内容はどういった感じになるでしょうか?」
「そうだな~これから決める」
「はい‥‥‥分かりました」
心の中で各々が思う‥‥‥
(この人で大丈夫かなぁ~)
男の初めての部下ができる。後にこの3人はこの男にとって重要な存在に成長していく‥‥‥。




