第8話 この人痴漢です
止まった路面電車は二両編成だ。後ろの端に四人で乗り込むが、他に客はいなかった。
「この時間に向こうへ移動するは稀だよ」
「町は結構あるのか?」
「小さいとこがポツポツかな。管理嫌いはエリアを出てくし。あ、再開発地域のことね」
計画的に整備されてるなりに安全安心安定が揃ってそうだけど。自分は特別扱いを受ける身なため、生活を送るうえでの不満はさっぱりだ。外出も普通にできたし。
「でも行き先のキャッツヘルシティは広くて住人もたくさんいるよ」
「随分な名前が付いてるな」
「断絶後はみんな頭がバカになってたのかもねー。元々ペットの規制が厳しい町みたいでさ。半壊で済んだから逃げてきた人たちもいて、無秩序に建造物が増えたってわけ」
実際は再開発より残った都市機能に頼る方が多いか。
「そんな話ばっかしてると着いちまうぞ。おれと藤雉は気にせず痴漢プレイを楽しめよ。こんなふうに出かけられんの次はいつになるか、わかんねーし」
会話で電車内をやり過ごす作戦が阻まれる。傍から見て楽しいか、なんて聞くだけ無駄だよな。
「……セクハラに対する厳しさはどこにいったんだ?」
「いやいや、これはラブラブチュッチュへの配慮でしょー」
「ひと月もせず彼女を作る、不健全男子代表の武達には発散が必要だろ」
「よ、天性のビッチ!」
えらい言われようだな。もはや、付き合ってませんでしたとは伝えづらい。変に刺激を与える結果になるのは明らかで反動が心配だった。
しかし、男に興味がない斑柄だ。あまり不本意な接触をさせては……。
「っ!」
と考える最中に尻を触られる。私の身体ならいつでも使え、などと言われた覚えはあるが。結局は心の内が分からないので、もし嫌がってたらと申し訳なさが少し湧く。本音を引き出す手段がほしかった。
「身体がビクッと動いたか?」
「ひゅー、かーわいー!」
藤雉が右、巳家が左に立って辱めを受ける。後ろの斑柄は密着気味に撫で続けるし。つり革を持つ手に汗をかいてきた。
「わざわざ女装してんのがグッとくるな」
「背徳感だよねー」
外出の交換条件と思えばこの程度は……。
「なぁ、もっといこうぜ?」
「ほら、あたしたちが横で他の乗客に見られるのを防いでるんだしさ」
そもそも車両には四人なんだが。シチュエーションで盛り上がるのやめてもらえます?
「ぐっ!」
斑柄が服の中に手を潜り込ませてくる。腹をさする手つきは妙に艶めかしい。これは錆咬と指を絡めたときに感じたもの? まさか学んだというのか、あの短時間で極上のテクニックを。
「か、可愛いへそが……舐めていいか?」
「もっと服をペロンて! 乳首券を発行しちゃおう!」
鼻息を荒げながら覗く二人がとてもうるさい。さらに攻め立てられると、下半身にエネルギーチャージされかねなかった。
「あー、悶々としてくんな。ちょっとケツをパンパン頼む」
「そっちの趣味はないんだけど?」
「交代でやってやる! 隣で痴漢されてんだぞ!」
「わかったよー」
痴漢への熱量に若干引いてクールダウン。なんとか耐えて我慢だ。
「この淫売め! ここが気持ち良いんでしょ!」
「武達! おれを見ろ!」
芝居がかったセリフで、藤雉が巳家の後ろに周って腰を打ちつける。ショートパンツとミニスカートの組み合わせは太ももにかけて肌の露出が多いせいか、生々しい音が聞こえた。
「んっ! ふっ! あぁ……! 中々いいぞ、これっ!」
座席の背もたれに手をついての動きは、女子同士の悪ふざけにしては吐息が激しくなり心がざわついた。それは斑柄も一緒のようで乱れた呼吸が耳元に当たる。
公共の場というスパイスが余計に興奮を誘うのだろう。自分だけは冷静に、となったところでエスカレートされるとどうなるか。
少し逡巡するが斑柄の手を取り巳家につながせる。口直しに楽しんでもらい座席に腰を下ろした。
「なんっ!」
「おっ!」
こうなれば狙い撃ちで一人が満足いくまでだ。錆咬仕込みの指使いを食らわせてやれ。
俺は見てくれと言われたのに従い静かに眺める。体勢が崩れてメガネが危ないので外し、落ちて傷ついたり壊れたりを避けるため置く場所に悩んだ末、自分へかけた。
「メガネ男子もいいねー」
巳家の左右に俺と斑柄、後ろに藤雉の並びに変わり、痴漢には度が過ぎた行為が続く。不謹慎なお遊びは時代にかかわらず、通報されたら何かしらの罪に問われそうだ。
度が入るメガネ越しにもR18認定を受ける表情なのが分かった。乱暴な口調相応の冷めた眼差しはどこへやらか。
意外とこんな形から女もありだな、となる可能性はあり得る。斑柄が鼻血を吹き出す一歩手間の顔つきで震えているが。よわよわ耐性の改善よりクラスメイトを百合に堕とす方が早い気もした。
まぁ同じ趣向を持つ人物だって探せばたぶん見つかる。世の中総女性時代とも言えるんだし。ただ、相手の好みがあるよなと嬌声を聞きつつ考える。
藤雉も興が乗ったのか腰使いが荒々しさを増す。そして、巳家がこちらに倒れ込んできた。
「あ、それ反則だよ!」
描写を憚られる様子に窓の外へ視線を移す。車両の揺れと間接的な衝撃に身を任せて、目的の停留場を待った。
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FANZAサークル名:deep78pool
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