第4話 君とブラジャーをキメる
「錆咬さんを呼んだのは他でもありません。武達さんが3Pを望んでいるからです」
斑柄の発言を反射的に否定しかけるが、手をつなぐ理由とやらがそれか。頭のイカれ具合を舐めてたわ。
「脱げば、いいのでしょうか?」
「はい、いいえ、脱ぐのは早いですね」
欲望が漏れてるし、3Pに納得する速度で正気を疑う。変に考えず下ネタで攻めれば全てが丸く収まりそうだった。
「まだ本番はできないので軽く相性を調べるんです。さぁ、手をつなぎ肌を密着させましょう」
何でもこいの錆咬がこちらへ伸ばす両手、その片方を斑柄がスティールした。
「私との接触も大事、ですよね。武達さん?」
「……もちろんだ」
急に振るなら事前に一言ぐらい頼む。
「二人で濃厚なキスをしてくれると助かるな」
「それも早いです。焦らないでください」
割と本音なんだが。眉間のしわが深まったのは興奮を隠すためか?
とにかく予定通り、まずは三人で手を取り合って円を作る。バカみたいな絵面だな。
「……っ!」
さすがにこの程度は、と油断したところで左手の錆咬が指を絡めてきた。艶めかしい動きにゾワッと鳥肌が立つ。
続けてギュッギュッ、と力を入れてくるのがむず痒い。ただ、不思議と次第に気持ち良く感じてしまう。斑柄は大丈夫かと心配するが、そっちは普通の手つなぎか。
右手で気づかせると片眉を上げて生唾を飲み込んだ。顎を動かし、やってみたらどうだとアイコンタクトを送る。
「武達さんが何か言いたそうですね」
「俺? えっと……ほら、二人も仲良くさ」
恋人つなぎの左手を振って見せる。
「おっ……!」
すると、斑柄が危うい声を出した。向こうでも始まったのが、つないだ右手の力が抜けることで伝わる。指を絡めて気合を入れろと応援だ。
「んっ……! ぐっ……!」
しかし、脚が内股になっていく様子で限界が近いのは明らか。耐性のなさが予想を遥かに下回る。
「まぁ、大体の相性は簡単だけど分かったな」
ここで崩れ落ちても別に性癖がバレるとは思わないが。手を離してUFOを呼ぶ儀式は終了だ。
「合格、なのですか?」
「第一段階はクリアか」
斑柄の息が荒いため、代わりに何様の評価で答える。
「第二段階は……?」
「また今度だ」
露骨にがっかりする錆咬を見ると、こちらの勝手な計画に付き合わせたことへ若干の申し訳なさが湧く。急な呼び出しでやるにはくだらなかったか。
とはいえ、手をつなぐのでさえ耐えられたか怪しいのだ。これ以上は、我を忘れて襲い掛かる可能性がマジである。
「少し、触らせてもらえませんか?」
錆咬がずいと近づき巨大な胸が目の前に迫った。見下ろす薄紫の瞳に期待の色が輝く。
「っ!」
スリスリと優しい指使いが了承なく攻め立ててくる。後ろに下がれば逃げるのは容易なのに、引っ張られているような感覚が身体を支配した。
「斑柄さんとは、きっと、よくされていますよね」
「い、いや……接触はまったく……」
「私の前に、どなたかと、楽しんだのでしょうか」
「こういうのは初めて、だな……」
教室で行った付き合う宣言の時、どさくさに紛れて触られたのを除けばか。
「あぁ、ふふ……」
妖しい笑い方に危険信号が灯る。斑柄に視線で助けを求めると、羨ましそうな睨みとぶつかった。
「錆咬さん、彼女を置いて耽るのはマイナスポイントですよ」
興奮は落ち着いたらしく警告を与えてくれる。スリスリは止まり、小さく残念との呟きが聞こえた。
「ではブラジャーのプレゼントを、ぜひお願いします」
「分かり、ました」
それが当前の約束事みたいに通じ合うんだからな。常識の根底が違うで済ますには変態性が高い。
「どうぞ」
「え?」
錆咬が両手を広げる。まさか俺に外せと?
「早く武達さん。やっちゃってください、さぁ」
待ちきれずに涎を垂らしてるって、おい。斑柄が欲しいだけだろとのツッコミはあと。さらなる醜態を晒す前に覚悟を決めた。
セーラー服の下を探ると素肌に触れて衝撃を受ける。インナーを着ないのは普通なのか?
背中に手を回すと胸が大きすぎるせいで顔が埋まる。これは不可抗力と言い訳するが、正面ではなく後ろに回ればよかったな。
そんな考えすら抜け落ち、柔らかさと甘い香りで余計頭がおかしくなる。もうこのまま一気にとホックを見つけて外す。遥か昔にシミュレーションした知識が役立った。
ずるりと取り出すブラジャーは、かなりの大きさだ。黒のレースで透け部分がいやらしく映る。斑柄に渡すと……。
喜怒が混ざった表情で何度も頷かれた。
「錆咬、今日のところは……」
あのキマった顔を隠すため腰に手を当てて玄関へ誘導する。
「キス、させてください……少しなら大丈夫、ですよね……少し、ほんの少しで構いませんので……武達さん……?」
寄りかかってきての囁き攻撃は破壊力が凄まじい。ついでに尻を撫でるのはやめてくれ。
「舐めて、いいですか……いいですよね……甘いの、欲しいです……」
「ちょ、扉を開けるから……!」
なんとか廊下に押し出すが、手を取られてしまう。
「お別れのキス……礼儀のキス……大事な……」
「呼び出したことは内密に頼む……」
「頬で、構いません……頂ければ、黙っておきます……」
力が強く振り払うのは困難。ここは仕方ないと、背伸びをして錆咬の頬にキスをかます。その瞬間、手は解放されて扉を閉めた。まるでモテ男だが勘違いだけは絶対にやめよう。
くたびれて部屋に戻ると、斑柄がブラジャーに顔を埋めていた。
「すぅぅぅー……!」
匂いを吸う気持ちは分かるが、第三者の視点ではドン引きものだ。このブラ吸い妖怪め。
「あぁ、武達さん。今日はありがとうございました」
これで満面の笑みを作るとは。もはや手遅れなんじゃ。
「片方、空いてますよ」
確かに胸を包む部分は二つある。迷ったものの、興味に動かされ顔を埋めてみた。濃く甘い香りは笑顔も納得の背徳感だった。
「すぅぅぅー……!」
「っ!」
再び斑柄もブラ吸いを始める。向かい合っていたせいで、ブラジャー越しにキスもかくやの激しい接触だ。
結局は押し負けて椅子に座り変態行為を眺めていると、寝室にふらふら歩いていく。
「……んっ! ……ふっ! ……ぐっ!」
案の定というか、すぐに嬌声が聞こえてきたので慌ててドアを閉め、ため息をつく。やれやれで済ますには心労がすごかった。
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