第10話 社会見学に行くゾ
「はーい! あたしたちクラスの生徒でーす! 悪い人たちを懲らしめました! あ、警察は呼んどいてもらえる?」
「は、はい……!」
藤雉が周りをフォローし、たこ焼き屋の店員に話しかける。クラスという名称は高校関連なのだろうが、まさか自らの判断で人を撃てるとは。警察は別に存在するみたいだしな。
「よぉ、姉ちゃん。こいつらとは仲良しこよしかよ」
一方で、巳家は射的屋で死体を跨ぎ店員に問いただす。
「食べないんですか?」
「え? あぁ……うん」
「あーん、します?」
「いや……」
残りのたこ焼きを食べる気にはならず、斑柄に譲る。この惨状にも険しい顔で頬張るんだからな。貞操観念が逆転した以上に、世の中がバイオレンスに染まっていた。
「見逃してもよかったんだけどさ。後々のことを考えると早めの対処が必要だよね」
「こりゃ、3Dプリンター製だ。えらく軽いぜ」
巳家がハードケースの銃を手に細部を調べる。ライフルやマシンガン的なものか?
「アサルトライフルです。製造や所持が禁止されています」
「殺しすぎるやつはなしだ。許可が下りるのは拳銃ぐらいだな」
その拳銃で四人が死んだばかりなのに。命の軽さには驚きだった。
「ちょっと気になるし、商店街を出てみようぜ」
「今日は武達ちゃんの言う通りでーす」
「おっぱい揉ませてやるからさぁ」
「揉ませませーん」
「とりあえず、ここを離れるのは賛成だ」
死体を放置したままで大丈夫かは疑問だが視界に捉え続けるのも気が重く、一度メインストリートに戻る。さすがにノリノリでは楽しめないため、巳家が何かに引っかかるのならと入口へ向かった。
「ビンゴ、車が一台消えてるぜ!」
確かに、駐められていた黒塗りの車が減っている。
「乗り付けたのはさっきの連中だ。生き残りが一人で置いてくしかなかったな。で、これを見てくれよ」
開くパカケーのウィンドウには地図が表示され赤い点が移動した。
「こんなこともあろうかと発信機を仕掛け済みだ」
「悪いねー。ちょっかいかける気満々だったじゃん」
「社会見学によくねーか?」
こっちへ顔を向けられても困る。しかし、逃げた犯罪者を野放しにするのはな。3Dプリンターなんて代物があれば相当数の銃を作れるはずだ。
「そこも警察に頼るとか?」
「時間がかかるとアジトを引き払っちまうな。おれたちだったら、この車ですぐに追えるぜ」
もしもの備えにトラックを用意してると積み込んで終わりか。
「はいはーい。巳家ちゃんだけでやればいいと思いまーす」
「護衛に選ばれたおれが単独行動はマズいだろ」
「それこそ警察のお世話になっちゃうもんねー」
「おーい、クラスのポイントも稼いどこーぜ!」
「あたしは武達ちゃんの従順な犬だし?」
何やら二人の考えには隔たりがあるらしい。斑柄は好きにしろのスタンスで相変わらずだった。
「じゃあ……追ってみるか」
「そうこなくっちゃな!」
やっぱり、途中で青春と洒落込むには精神的に気持ち悪い。加えて社会の暗い部分を知らずにちやほやと温室で育てられるのも、息苦しさの元だ。
「ほら、鍵がねーし十八番をやってくれ」
「仕方ないなー」
藤雉がギターケースを置いて細いナイフを取り出すと、簡単に車のドアを開ける。続けて運転席のハンドル下カバーを力づくで外し、映画ばりに配線をいじってエンジンをかけた。
「本当にそんな芸当ができるんだな」
「ハイテク寄りだと手間で、超ハイテクだとオタクちゃんの助けがいるけどね」
「上等なもんを乗り回すやつらは滅多にいねーよ」
「3Dプリンターを自前で持ってたら結構でしょ」
「雑魚の教育がお粗末な時点で知れてるぜ」
四人で車に乗り込み走り出す。思ったより平常心を保ててるのが自分でも意外だ。グロ耐性の経験値はゾンビゲーム程度なので、感覚が麻痺してる説が正しいか?
「しばらく真っすぐだ」
「ほーい」
助手席に座る巳家の指示で藤雉がハンドルを握る。ビルと電線の風景を窓の向こうに眺めていると、あくびが出そうになった。
「クラスっていうのは高校の生徒を指すのか?」
ごく短時間の観光も道中を合わせるとジェットコースター気分で、ふと襲いくる眠気に会話を振る。
「勝手に呼んで呼ばれてだ。高校の名前は別にあったよな?」
「我らが性常懐抱高校じゃーん!」
「一々覚えてらんねー」
初めて聞いたが今後、口にする機会があるかすらも怪しい。
「クラスのポイントを稼ぐ話は?」
「世のため人のために正義を果たせば待遇が良くなるみたいだねー」
「手柄を立てまくった真上の姉御がいい例か。失敗続きで休止状態に陥るコールドスリープの解凍作業を任されたんだ」
「それで武達ちゃんが目覚めたってわけ!」
ただのセクハラ大魔神ではなく命の恩人なのか。解凍失敗で寝たままあの世にお陀仏は笑うに笑えなかった。
「警察とはまた違うんだな」
「個人の判断で動けるかはデカいぜ」
ふらりと訪れた商店街で犯罪行為に遭遇するぐらいだ。より強権的な組織が求められた結果か。
高校の生徒に対応させる経緯は謎だが。クラスメイトも知らないだけで、放課後にドンパチを繰り広げているのかもな。
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