九日。
楽しいことはいつやっても楽しいのだ。今すぐやっても、寝る前にわっても、寝起きにやっても。
それが好きなら尚更、心躍る。
「はぅー…。」
本を読み終えて、ちょっとだけ興奮した体を抑えるように息を吐く。
「悲しかった。でも楽しかった。」
そのつもりではなかったのに、気づいたらもう空は夕焼け色に染まっていて、家に帰る時間になってて、もったいないなって思った。
もう少し長かったら、もっとたくさんなものを見られただろう。
「むーんっ。」
くーっと体を伸びながら、そっと隣を見る。
あまり本とは慣れない性格なのか、それとも疲れてしまったのか、うとうとしているあの子が見えた。
本の前でうとうとする気持ち、わかる。あの眠気がいちばん心地よいんだから。
そっと起きて自分の読んだ本を片付ける。起こさないようにこっそり。
戻して来てもまだうたた寝してるだけで、じーっと眺めることにした。人の寝顔なんてみるもんじゃないけど、楽しいから。寝落ちる寸前の人はさっき読んだ物語と同じくらい楽しい。
頭がへこへこ、ごめんなさいって謝ってるように下がって上がって、目もまともに開けられない。
これのどこが楽しいのか。それは、起きた時と眠る時の温度差が激しいところなのだろう。
「ねぇー、寝てるー?」
声をかけると小さく返事するところも好きだ。
返事するお人形みたいに、声かけるとよくわかんない声で返事するのが、とても可愛らしい。
「寝てるんだー。」
ここですごいことを言うとびくっと跳ねあげるのかも知れない。それを想像すると、見たくなって。
そっと近づいて、耳元で名前を呼んだ。
「あはは、そんなに驚く?」
予想通りびくんっと椅子ごと跳ねた。魚みたいにばたばた。元気だなぁ。
「私そろそろ帰ろっかなって。君も帰る?それとももう少しいる?」
自分の鞄を手にして、帰りますよーって感じを作る。
それを見て慌てて何もかも鞄に詰め込んで、一緒に帰るとばかりに、隣に並ぶ。
「ふふ…」
とても、可愛い仕草だ。
「じゃあ一緒に帰ろっか。今日はちょっと遅くなったから寄り道はしないよー。わかった?」
図書館の中を出て、肩を並べて、ふと。近くなったなー、って感じがした。
おててを繋げるくらい近い距離。少し前までは人ひとりくらい入れるくらい離れていたというのに。
もうこんなに仲良くなったのだろうか。
「ねぇ、おててが空いてるよー?あんま寒くはないけど、温かくなりたいなぁ。」
あっという間だな。本を読むのも、人と深い仲になって行くのも。
気づいたらもう終盤。
いつやっても、いつ見ても。この楽しい気持ちはきっと、私がこの子が好きになった証なのだろう。
恋愛かまでまだは未だにピンと来ないけど。
「君も温かくなりたいでしょー?」
好意は確かに、花となって咲いた。
「だから…手ぇ、握る?」




