三十七日。
「んんー……」
「起きなさーいっ!もう夜なんだから!そんなに寝たら今日寝れなくなるでしょう。」
午後。
いや、おそらく夜。
「おーきーろーっ。」
お姉ちゃんが私の布団を引っ張り、温もりに包まってた私の体はすぐに冷たさに覆われて。
寒くなってきた。
「ふとん返してよぉ…」
「むっ、起きないのならお姉ちゃんにだって考えはあるんだよ?」
布団が返るどころか、むしろ窓が開かれてしまった。外の寒気がすぐに部屋を満たして、ますます体は冷えていく。
「熱あるの…」
「嘘!さっき測ってみたけどなかったからね。寒いのはご飯を食べてなかったからなんだから。早く起きてご飯を食ーべーろーっ。」
ベッドにぐーたらと倒れた私を無理矢理引きずり、ベッドから落ちそうになる。
仕方なく、引かれるままに歩き出す。
「昼寝するのにパジャマに着替えてさぁ。お風呂も入ったんでしょ?」
「スキンケアもばっちりー。」
「寝る気満々だったじゃん!寝すぎはよくないってなんども言うのに、あなたって子は…」
ぶつぶつと文句をぶつけてくるお姉ちゃんは、ぎゅっと私の手首を捕まって、逃げられない。
声も、少しイラッとしてるようだ。
「喧嘩?」
「違うよ。ちょっと説教しただけ。」
「怒られたー。えーん。」
「怒ってないし。」
泣いたふりしても手首は掴まれたままで、お父さんはそれを愛おしそうに眺める。
「うそつきっ。」
「嘘じゃないもんっ。」
声は相変わらずイライラしてるようで、でも私にくっついて、すぐ隣に座る。
手は流石に離した。
「ほどほどにね。」
「怒ってないからって。」
お父さんの声にようやく、和らぐお姉ちゃん。
「遅いから冷めちゃったじゃーん。」
ほかほかと温もりが広がるご飯を前に、お母さんが冗談っぽく口を開いた。それからみんな一斉にご飯を食べ始める。
「あっつっ…」
「ちょっと、熱いからってぺってしないの。」
いつからなのかは覚えてないけど、お母さんの掛け声と共に食事を始めるのが日常になった。
ご飯が冷めたとか、まだ熱いとか。
「おいひぃ。」
「もー、食べながら話さないの。」
「お父さんこそ、食べながら話してるじゃん。」
「お父さんはいいぞ。大人なんだから。」
「なにそれー。」
騒がしい食卓だ。いつも思うけど、お姉ちゃんはお父さんにだけ当たりが強い。
好きだからなのかな。
「お母さんっ。」
「はいこれ。」
「ちょっと静良、それお父さんのだぞー。」
「私が食べてあげたよ。」
「えぇー…」
私はお母さんっ子で、お姉ちゃんはお父さんっ子。
「なによっ。娘が食べてあげたんだよ?喜べっ。お父さんなんだから。」




