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三十六日。

 思いっきり卓球台から手を振る。

「おらっ。」

 かたんっ、と気持ちいい音と共にボールが飛んで行く。風を切る感覚も手から伝わってくる。

「ぬぁっ。」

 ボールを逃して、空振りしてしまう綾。

「終わりー!」

 かなり長引いてたせいで、少し大声で叫んでしまう。やっと勝てた。

「ぁー…負けちゃった…」

 悔しそうに、今にももう一回って口を出しそうな綾からそっと目を逸らして、スポドリを飲む。

 もうやってらんない。一時間くらいやれば疲れるのが当たり前なのだ。

「楽しかった。」

 だから終わりっぽい雰囲気を出してみるも。

「次は負けないからさ。今のうちにちゃんと休んどきなさいよ。」

 終われそうな気は全くしない。どうすればいいのだこれ。このまま綾と付き合うときっと明日はベッドから起きるのも大変に違いない。

 他に綾と遊んでくれそうな人は…

「まだ綾には早いのよ。私に挑みたいなら他の子達から折って来るのよ?」

 かなは下手で、美羽は負けっぱなし。じゃあ残ったのは、私をじろじろ見るあの子しかなくて。

 名前を呼んだ。

「任せるよー。私といっぱいやってたから、綾も勝てると思うよ。」

 てくてく近づいて、ラケットを無理矢理握らせては綾の方に送る。

 困惑してる顔だったけど、少しは嫌そうにも見えたけど、私のためなんだからやってくれるだろう。

「がんばれー。」

 だから応援した。がんばれの四文字にすぐ、テンションが上がったのが目に見える。

 すぐさっきまではなんで?って目をしていたのに、応援されてすぐ、やってやる!って雰囲気に変わっていた。人を動かすのは言葉なんだやっぱり。

「勝ったら私とやれるんだからねー。」

 綾は相手が私じゃなくても構わなさそうに見える。ただただ卓球が好きな子。

 私も無心に集中出来る趣味があったらなーって羨むくらい、真っ直ぐな姿勢だった。姿勢?

 振る舞いと言うべきなのか?

「ねね、陽鞠ちゃん。」

 少し頭がいっぱいになってる私の肩をつついて声をかけるのは美羽で。

 その手にはなんだか美味しそうなクレープが。

「一口あげるー。」

「わぁあ。」

 口元に押し付けられて、思いっきりぱくっと。かじりついた。

 舌を濡らす苺の味と、唇を真っ白にさせた牛乳の香りが、とても食欲をそそる。

「おいしーっ。」

「ぬふふ。」

 唇にいろいろついてひんやりする。

「陽鞠のも買ってきたよ。」

「ほんと?」

「うそー。」

「あぁん?」

 唇を舐めると、甘みが伝わった。

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