三十五日。
ポッケが破れた。私のじゃない、私を好きな子のポケット。色々と詰め込んでたせいで、重さに耐えきれずにぷちっとちぎれてしまう。
「わ。」
ごろごろと足から転がるのはスマホだったり、財布だったり、飴だったり。小銭とか紙幣とか、紙切れもあるし授業のプリントもある。
あと手袋と…ウォーマー?喉に巻くやつだ。
「すんごっ。」
鞄に入るべきなのではないかこれら全部。
「君って詰め込むのが好きなの?」
そんなわけないだろうけど、つい言ってしまうくらい、落し物が多い。
これを私のポッケに入れたらきっとぱんぱんになって、いやそもそも入んないんだろうけど。
「じゃあなんでこんなに詰めてたの…?」
責めるような口になってしまうくらい、とんでもない景色ではあった。
とりあえず、手伝わなきゃ。
「はいこれ。」
まずはポケットだったものを拾って、渡す。それから財布、小銭、手袋と。
こうして色々と拾ってたら、なんだか子供の頃に戻ったみたいな感じがした。赤ちゃんの頃は何もかも拾うのが大好きで、落し物ならなんでも拾ってお父さんに自慢してた記憶が微かにある。
「ふふ…」
お父さんはわざとあれこれ落としてくれてた。私に拾わせるように、財布とか手袋とか、紙切れや財布などなど……
まるで、今とそっくりに。
「懐かしいな。私、赤ちゃんの頃よくこうやって物拾ってたんだ。ただ拾って渡すのが好きだった。ありがとうって笑って言ってくれるのが大好きで……今、君がやってくれたみたいに。」
そっと目を合わせて、にこっと笑ってみせる。
「もっとありがとうって言って。拾ってあげるから。」
照れたように目を逸らすのが可愛くて、ついつい追い打ちをしたくなるのだ。
「はい……渡す前に…一枚。」
勝手にスマホでカメラを開いて、照れたような、嬉しそうな間抜けた顔を撮る。
当然慌てて、消してってかかってくるけど。
「消せないもーん。毎日これ見て今日を思い返したらいいよ。私に好きって言われた大事な日だよ?」
ぐるりと躱して、背中をどんっと叩いた。
「好きだよ。ありがとうって笑ってくれた君の顔。 だーいすき。」
真正面から好きって言われて、ぽかんと。
「ひひ…だから、はい、スマホ。」
口だけぱくぱくするその顔に、余韻に浸る時間も与えずに急かした。
「笑顔とありがとうは?」
私に言われてようやく、ありがとうって言う。
顔は、真っ赤で、引きずって、笑うよりにやけてる方が近い顔だった。
「いひひ。変な顔。」




