三十三日。
何かを学ぶことは楽しいことだ。
新しい知識を手に入れて、それが栄養になって、もっとすごい自分になる。なれる。
それはとても魅力的で、心躍る行為である。
「ぅー……」
でも、どうしてもやりたくないものがあった。
「………やだぁ…」
理由はわかんないけど、私は家庭科がとても苦手だった。学ぶ当時や、実際にやる時は楽しい。面白いし、こんなとこで使うんだ!ってわくわくもする。
でも始まるのが嫌だった。
とても、理由もなく。
家庭という名の勉強が嫌なのかも知れない。
教室が嫌いな訳では無い。中学校、小学校の頃からこの科目と睨めっこするのがめちゃくちゃ嫌だった。
本能的な拒否?
多分、それに近い。
始まるのが大変で、いつも赤点をぎりぎり避けるか、まんまと引っかかるかの二択。
「なになにー?困ってる音が聞こえるぞー?」
かなはそんな私がお見通しで、たまにこうやって勉強に付き合ってくれている。付き合うと言っても、それぞれ勉強するだけだけど。
「かなぁ…私の頭あげる。」
「唐突過ぎるじゃん。」
「私の頭はどうやっても家庭科が嫌いなの。やりたくない…どきどきわくわくするのに、吐き気がして…生理的に無理。」
「大袈裟だって。」
どうしてだろう。やりたくないのか?やりたくないのは当たり前だけど、なんでやりたくないのか。
別に悪い記憶もない。むしろいい記憶が多い。
お姉ちゃんが頑張って料理を教えてくれたのに、私より不味いのが出来たり。
綾とお金の使い方を口論して、結局は美味しいものを食べて幸せになるのが一番ってなって、二人でパフェを食べに行ったり。
大好きだったぬいぐるみが怪我して、直接なおしてそれをお母さんに自慢しに行ったり。
「ほぇ……」
いい記憶ばっかりじゃない。
でもなんでやりたくないのかな。
「私はなんでこれが嫌なのだろう。」
「嫌な思い出でもあるんじゃない?」
「それはない。むしろいいのばっかり。」
「じゃあやっぱり、生理的に無理のようねー。」
「そう簡単に片付けないでよ。こっちは真剣なの。赤点とったらまずいから。」
「赤点とったらまずいと、なりふり構わず勉強すべきなんじゃないの。」
「正論すぎるよぉ…」
幸せな思い出が塗り替えになるかも知れないから?それは違うと思う。
どうして。
なんども自問しても答えは出なくって。
「もーわかんないっ。今日はここまで。」
「やめるの早すぎるって。まだ六時だよ?」
「帰ってご飯食べるもんー。かなは一人でもっと勉強しなさいっ。」
「冷たくならないでー。」
取り敢えず、置き去りにした。




