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三十日。

 話があるって、呼び出された。

 相手はいつものあの子。私が好きって、素直に気持ちを伝えて、不器用に愛を語る子。

 約束時間までは少し時間が余っていて、図書館で本を軽く読んでいたら、少し時間が過ぎてしまった。だから慌てて待ち合わせ場所に来たら、相手はまだいなくて。

 なんだか懐かしい気持ちになった。

「ふう…」

 初めて告白された時も、お互い遅刻してたなぁ。よく怒ってなかったな私。あの時は結構心が広かったな。

 待たされて数秒ですぐにちょっと不機嫌になる今がおかしいのかも知れない。

「……ふーん。」

 ちょっとだけムキになって、少し離れたところに身を隠す。驚かせてやろう。

 人目の届かない木々の間に、土に寝そべって、相手を待つ。服が汚れることくらいは気にしない。

「…んっ。」

 今日は土がぼさぼさで、乾いてて、服についてもとんとんって叩けばすぐに消えそうだった。その分、よく宙に舞い上がって、少しだけ鼻がくすぐったい。

 くしゃみしたらバレるだろうか。

 多分バレるだろう。

 遠くから見え始めた、慌ただしい姿を見て我慢しようと決めた。バレたらもったいないチャンスなのだ。

 驚かすチャンス。

 そもそもなんで驚かすのか、わかんないけど。

「………。」

 はぁはぁと荒い息が聞こえてくる。

 待ち合わせ場所について、きょろきょろと辺りを見回して、ほっとしたように息を吸う姿が見える。

 遅く来て、まだ相手が来てないからって安心するなんて、ちょっと許せない。

 だから、待った。

 幸い、走ったおかげで力は減って、すぐにへにゃへにゃになりつつある。もう少し待てば、ちょうどいい感じになるだろう。

 だから待つ。

 待って、待ってぇ…

「わっ!」

 一番気を抜いた瞬間、パッと起き上がって襲いかかった。真正面からがっ!と。

 とてもよくよく効いたみたいで、体を跳ねるのを超え、腰を抜かしてしまう。

 私は抱きつく勢いで襲いかかったから当然、一緒にその場に倒れそうになる。

「……」

 相手は腰を抜かし、私はなんとか保て、かなり変な体勢になってしまう。

 まるで、本当に首根っこを狙って噛み付いたような感じの、かなり野性的な姿勢。

 目の前に、うなじが見えた。

 少し視線を上げると、ちょっと涙ぐんだ瞳。

 ばくばくと跳ねる、心臓の音が耳を叩く。

 手のひらから伝わってくる肩の温度はかなり、高くなっていて、熱い。

 顔はかなり、赤みを帯びていた。

「遅かったじゃん。」

 鼻をくすぐるのは、私と同じ匂で。

「待ってたよ。」

 わけもなく、愛されてるなって思った。

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