二十三日。
「過去の自分に送るメッセージを作ろうー!」
「なんで急に?」
帰り道、の寸前。下駄箱で靴を履き替える直前に、美羽がやってきた。手紙らしき紙と、色鉛筆を持って、とても楽しそうに。
「この前アニメでさ、タイムカプセルがあったの。未来から過去に送られる手紙!素敵じゃない?」
「未来に送るんじゃなく、過去に送るの?」
「そう。過去に飛ばされる。」
「なんか違う。」
「えーなんで。過去だっていいじゃん。ロマンあるじゃん。過去を変えるかも知れないよ?」
「別に、変えたいと思う過去もないし。」
「わ、かっこいいなその考え方。」
にこにことしているところを無視するのも癪だけど、過去に手紙を書くのもまた、ぴんとこない。
「好きな人とかに書いたら?」
「!もしかして…陽鞠ちゃん…?」
「多分好きになってる人がいて。今までのお礼とか言っておきたいかな。」
「これはロマンス……恋愛だなぁ。いいよ。いくらでもどうぞ。」
相変わらず恋愛には目がない美羽だ。なんでもかんでも味わいたいのだろうか。
あんなに食べたら飽きちゃいそうだけど。
「じゃあ貰うね。」
「うんうん。ほかに必要なものはない?陽鞠が言うのならお茶くらいまでは用意するよ。」
なんかちっぽけだな。
「これで十分だよ。」
「素朴だね。もっと派手にやってもいいと思うけど、相手もきっとそれを喜ぶんじゃない?」
「それはないね。」
「おぉー…もう付き合ってるじゃん…」
「まだだよ。付き合う前提の友達。」
「なにそれ。なにそれ!そんな恋愛小説みたいな関係が本当にあるの?!もっと知りたいんですけど!」
「まだ内緒。」
「えー、焦らされたぁ!陽鞠の変態!」
「いつか教えてあげるよ。」
「教えてくれるんだよね?じゃあその時まで頑張って生きてるから、絶対言ってくれるんだよ?言ってくれないとわたし、永遠にいきちゃうかも。」
「いつか美羽が死ねるように言ったげるよ。」
「これまたロマンチック…」
少し面倒だけど、そこそこ元気を貰えるから美羽は嫌いではない。
じゃああの子は?同じく面倒で、元気を貰って、与えるから、美羽より好きなのだろうか。
今じゃ、美羽よりは好きだけど。かなよりはまだ、駄目な気がした。かなとやってるのをあの子と出来るとは思えない。
「そろそろ行くね。ばいばい。」
「うん。ばいばい!」
ぶんぶん手を振って美羽は消えていった。
残ったのは紙だけ。手紙用の紙。
ここに想いを込めて、書き込んで、渡す。
私はとても恥ずかしいことを考えたのかも知れない。手紙を渡すところを想像すると、ちょっとだけ照れくさくて、体がむず痒かった。




