二十一日。
「わーっ!」
「うわぁ?!!」
無防備な後ろから強くガッと抱きしめる。
「だーれだっ。」
そのまますりすりと、背中に顔を擦り付ける。
すりすり。
「もぅっ、驚いたじゃん。突然人に抱きつくんじゃないよ。いくら陽鞠が好きでもお姉ちゃん、こんな急激なスキンシップは嫌いだよ?」
ふんわりと香水の香りがする。嗅ぎなれた香り。最近は、あの子がいつもつけっぱなしで、もともと飽きてたけど、尚更飽きてしまった匂い。
「どうしたの?普段はこんなことしない陽鞠ちゃんが。急にお姉ちゃんが好きになったわけでもないでしょう?」
「えへへ。」
「ふーん……」
お姉ちゃんに抱き着いていると、だんだん熱が伝わってきて暑くなる。
「さてはお小遣いのおねだりだなぁ?お姉ちゃんあまりお金ないよ?あげたい気持ちは山々だけど…一緒に食べに行くとかならいいけど…」
「そんなんじゃないよ。お金まだ余ってるし。」
「え、余ってるの!?お姉ちゃんはもう財布が紙幣くらいに薄くなったのに。」
変な例え方。お姉ちゃんは大人のようで子供のようで、よくわからない。
とにかく、今日の目的はこれじゃない。
「お顔合わせしようかなって。」
「顔合わせ?……え、やだ。お姉ちゃんは知らないままでいたいよ。見せつけないで。陽鞠の彼氏なんて見たくない!やだっ!陽鞠はずっと独り身でいて欲しいの!」
「そうじゃないの。いや、そうだけど。」
「やっぱり!相手はどんな子?前に言った告白して来たやつ?お姉ちゃんがきちんと見極めてやる!」
今日は、顔合わせのつもりだったけど。この調子じゃ、まともに話も出来なさそうだ。
お姉ちゃんはどうしてこんなに行き来するのか。前にはいい子って言ってたくせに、今はまるで良いか悪いか見極めようとしている。
「…ね、おいで。こっちだよー。」
でも今更今日は無理って言うのもあれだし。あの子はさっきからずっとちょくちょく見てくるし。
ここは心を鬼にして。鬼にしても私とはなんの関係もないのだろうけれども。
「え…?あの、陽鞠ちゃん……?」
「はい。」
「…なんで、仮面?」
「顔見られるの恥ずかしいって言ったから、狐面買ってきたの。ミステリアスな感じがするでしょー?」
流石に狐面に戸惑ったみたいで、お姉ちゃんが固まった。凍りついた方が正しいのかも知れない。体から伝わる温度がだんだん、下がるのが感じられる。
「顔合せで仮面被るやつがいるか!!」
めっちゃ怒ってるみたいだった。
無理もないだろう。仮面を被って、自分を見せずに相手と向き合うなんて、失礼極まりない行動だ。
楽しそうでやっちゃったけど。
「ごめーん。私が言い出したよ。」




