十九日。
「えー、またぁ?」
「いいじゃぁん。お姉ちゃんと思い出作ろうよ。」
最近のお姉ちゃんはやけにべたべたする。
夜遅くまで遊んだのが一昨日なのに、昨日も今日も無理矢理朝早く起こしたのに。
「最近、寂しいのー。お姉ちゃんは寂しくて寂しくて…冬が近づくから人の温もりが欲しいんだ。」
いつもよくわからん理由で私を振り回してくる。
まさに、嫌でもすべてを照らす太陽の如き人だ。
「彼氏でも作ったら。」
「そんなこと言わないでよ。陽鞠がいるのに彼氏なんて作るわけないじゃない。」
突き放してもすぐに注がれる。影に隠れても向きを変えてくるみたいに。
「私は恋人じゃないよ?」
「姉妹は恋人同様な関係なのよ?」
……太陽とは、なんだ?
「え……?」
あまりの真面目そうな顔と雰囲気につい、動揺してしまう。恋人同様。
「流石にこれは違ったか。誤解しないで?お姉ちゃんそういう趣味ないから。本当にないから。ねぇ本当に嘘だから。」
お姉ちゃんにとって恋人は私達のような関係を示しているのだろうか。
一方的な輝きを、恋だと。
「うん…」
そこまで深くは考えてないだろう。お姉ちゃんだし。
「なにそこ反応!お姉ちゃんをそんな人だと思ってるの?そういう考え方をしたら辛くなるのは陽鞠ちゃんだけだよ!お姉ちゃんがどれだけ優しくしてくれても邪な心で仲良くしてると思うようになるよ!?わたしはただ姉心で陽鞠と仲良くわちゃわちゃしたいだけなのに!」
言葉が多いなぁ。私なにも言ってないのに。
わちゃわちゃ騒がしい。うるさい。だから、無理矢理話題を変える。恋人がどうのこうの言うのはまだ少し抵抗がある。
「私、前に告白されたのー。」
多分、あの子のせい。
「はぇ?告白?」
「彼女になってって。」
私もそろそろ好きになったのかも知れない。真面目に思うようになったのだろうか。
「ふーん……その子、いい子だね。」
「なんで?」
お姉ちゃんらしくない返事にぽかん、と。目を見開いてしまう。とっくに、ありえない!誰だそいつ連れてこい!くらいに反応すると思ったのに。
「陽鞠の魅力に気づいた人が悪い人なわけないじゃん。ただあなたが好きだから話してるんじゃないよ。陽鞠は…恋し難いタイプだから。」
「恋し難い?」
「陽鞠は難しい子だからね。健気で、活発で、眠たげで、甘えん坊で、冷酷で。とても矛盾してる人なの。人は誰だって矛盾してるけど、陽鞠はそれがもっと際立つって言うか。まぁそれが陽鞠の魅力だけどね。」
難しい人。
お姉ちゃんは私をそう思っていた。じゃあみんなも、難しい人って私を思うのだろうか。
「だから、そんな陽鞠にただ好きです!って言うんじゃなくて、ちゃんと彼女になってって、愛し合おうって言うのだから。きっと、あなたの矛盾すらと受け入れられる人なんだろうね。人の相反する姿を抱けるのは、優しい人だけだよ?」
「……なんか、お姉ちゃんらしくない。」
「お姉ちゃんらしいのがなんなの。もっと誰だそいつ!ぼこぼこにしてやるー!陽鞠は渡さんぞー!くらいに燃えて欲しかった?」
「欲しいって言うか、そうなると思ってた。」
「残念だったね。陽鞠が矛盾だらけのように、お姉ちゃんもちゃんと矛盾してるんだよ。」




