十六日。
「美味しいー?このままじゃ、もうすぐ甘いものは嫌いになっちゃうんじゃない?」
卓球をやったのだけど、思ったより下手くそ過ぎてて、圧勝してしまった二日だった。
最初は褒め言葉で終わらすつもりだったけど、体動かしたら甘いものが食べたくなっちゃって、結局昨日も今日も二人でクレープを食べに来てしまった。
財布がだんだん細くなりつつある。ちょっと前にお小遣いを貰ったばかりなのに、もう半分。
勝ちすぎるのもよくないのかも知れない。
「次は勝てそう?」
でも手加減はいやだし。
奢られるより、ぼこぼこに倒すのが楽しいし。
「そうよ。まだ100年は早いんだから。君が強くなる分私も強くなるから。切磋琢磨だけでは足りないんだよ?私、向上心は高いから。」
ま、お金が本当に足りないとなにも食べずに帰ればいいか。褒めるくらいでもいいだろう。
「ふふん。もっと崇めてもいいぞー?」
つっても、褒められるのは私みたいけど。
負けた時は褒めてあげてるんだから、勝負とか関係ない今なら私が褒められたっていいのだ。
「ふへへ。」
いっぱい褒められて、崇められて、よしよしされて、自分がとても価値のある人間だと思える。
私に褒められる時、この子もこんな気持ちを感じるのだろうか。もしそうだったとしたら、負けてもそこそこ嫌いではない顔だったのもわかる。
そうやって崇められ数分。そろそろ褒め言葉も思い出せなくなる頃。クレープも全部食べ終わった時。
「そろそろ帰ろっか。」
時計は六時を指して、空は茜色に染まり、寒気は一気に顔を出した。そろそろ、お別れの時間だと知らせるように、世界が移り変わる。
「明日もやろー?明日は…ケーキ食べようよ。急にパンケーキがめちゃくちゃ食べたくなっちゃった。」
店を出ると、ふんわりと雨の匂いが香る。
「奢ってくれるんでしょー?」
空には雨雲はあまり見えなかったけど、ぶつぶつと小雨が降り始めていた。
「わ、雨だぁ。傘持ってる?」
寒さは意外と少ない。
雨は冷たく顔を叩くが、太陽は熱く私を照らしていて、むしろ暖かいくらい。
「えー私もない。んー、弱そうだし、打たれてみる?雨に打たれるの、ちょっと楽しいよ?」
だから、傘がなくても大丈夫だと思った。
小雨の街に一歩近づく。
「ほら、ふつーだよ。これなら風邪もひかないし。行こ?むしろちょっと涼しくていいくらい。」
今年の秋は例年より長いのかも知れない。
「早く帰らないと強くなるかもー?」
紅葉が未だに、木の枝に縋り付いていた。




