表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『十二星天の裏支配者 〜追放された雑用係、実は星座を喰らう最後の蛇でした〜』  作者: パーカー
第四章『観測と選択』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/52

第26話 『観測者』

塔の最上階。

巨大水晶の前。

水瓶王は静かに立っていた。

長い水色の髪が揺れる。

その瞳は冷たく、澄んでいる。

「針から手を離せ」

命令ではない。

事実の告知のような声。

俺は掴んだまま答える。

「嫌だ」

水晶の内部で未来が波打つ。

“死亡確率 83%”

数字が不安定に揺れている。

水瓶王はわずかに目を細めた。

「干渉可能とは、予想以上だ」

「未来は固定された」

俺は言う。

「ならズラすだけだ」

「ズラす?」

王はゆっくり歩み寄る。

「君は分かっていない」

「固定とは、選択肢の整理だ」

「不要な可能性を削る」

背後の水晶に、無数の未来が映る。

俺が街で暴れ、死ぬ未来。

王に挑み、凍る未来。

管理者が降臨し、消される未来。

「君が生き延びる未来は、世界崩壊率が高い」

王は淡々と告げる。

「だから削った」

空気が凍る。

リゼが前に出る。

「それは選択じゃない」

「誘導よ」

水瓶王の視線が、リゼに向く。

天秤の紋章が揺れる。

「均衡の器か」

一瞬、意味深な光が走る。

「君も理解しているはずだ」

「不確定要素は危険だと」

リゼが息を詰まらせる。

その隙に、王は水晶へ手を伸ばす。

触れる。

瞬間、塔全体が静止した。

時間が、遅くなる。

「観測領域、限定展開」

俺の視界が歪む。

街の音が消える。

世界が、薄い水色に染まる。

「ここは?」

「確率の中間層」

王の声だけがはっきり届く。

水晶の内部へ、引きずり込まれたような感覚。

足元に無数の線。

分岐。

未来。

俺が歩くと、線が伸びる。

「君は異物だ」

水瓶王が言う。

「観測できない」

「だから固定するしかない」

俺は振り返る。

「それが国の正義か」

「正義ではない」

「合理だ」

王の背後に、崩壊した世界の未来が映る。

七つの星を持った俺。

空が完全に裂けている。

「七つに到達した時点で、干渉確率は急上昇する」

「世界は揺らぐ」

「だから六つで止める」

六つ。

七つ未満。

起動未達。

封じ込める気か。

蛇が低く唸る。

「選ばせる気はないんだな」

「選択には責任が伴う」

王は静かに言う。

「君はまだ、責任を理解していない」

胸がざわつく。

未来の自分の言葉が蘇る。

覚悟だ。

水瓶王が近づく。

「未来を奪いたいのなら、理解しろ」

足元の分岐が、急速に減っていく。

一本。

たった一本の線だけが残る。

俺が死ぬ未来。

「これが現在、最も安定した未来だ」

冷たい宣告。

リゼが叫ぶ。

「やめて!」

だが声は届かない。

俺はその一本の線を見つめる。

蛇が囁く。

――分岐は必ずある。

俺は膝をつき、地面に触れる。

冷たい。

だが、よく見る。

死ぬ未来の裏側。

ほんのわずかな揺らぎ。

王の固定は完璧ではない。

俺は指を差し込む。

分岐の“影”に。

水瓶王の目が見開かれる。

「それは――」

「観測外だろ」

俺は笑う。

線を引き裂く。

新しい分岐が、微かに生まれる。

完全ではない。

だが、ゼロではない。

水晶が軋む。

塔が震える。

現実へ戻る。

水瓶王が一歩後退していた。

水晶の針が、微妙にズレている。

“死亡確率 79%”

下がった。

わずかだが、確実に。

王は俺を見る。

その瞳に、初めて僅かな興味が宿る。

「観測外に分岐を作るか」

俺は肩を回す。

「未来は星じゃない」

「でも、触れる」

水瓶王は沈黙する。

長い沈黙。

やがて言った。

「ならば証明しろ」

「六つ目に到達せずに、生存率を五割まで上げてみせろ」

条件提示。

直接の戦いではない。

未来の操作勝負。

「できなければ」

水晶が青く光る。

「固定を強化する」

街の空気が重くなる。

リゼが俺を見る。

挑発。

だが悪くない。

俺は笑う。

「面白い」

未来を削る王と、

未来を増やす蛇。

第四章、静かに火がつく。

第26話までお読みいただき、ありがとうございます。

今回はバトルではなく、

水瓶王との“思想の衝突”を描きました。

・未来は選ぶものか

・未来は管理するものか

・選択に責任は伴うのか

そして――

アルクは初めて

「未来を増やす側」に立ちました。

これまでは

奪う → 重ねる → 超える

という力の成長でしたが、

ここからは

可能性を作る物語になります。

六つ目はまだ遠い。

すぐには取らせません。

水瓶編は、

未来をどう扱うか

リゼの立ち位置の揺らぎ

観測と均衡の衝突

をじっくり描いていきます。

ここが物語の“思想の芯”になります。

読んでくださっているあなたに感謝を。

次話から、水瓶王国の内側へさらに踏み込みます。

引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ