表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『十二星天の裏支配者 〜追放された雑用係、実は星座を喰らう最後の蛇でした〜』  作者: パーカー
第四章『観測と選択』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/52

第27話 『生存率79%』

“死亡確率 79%”

時計塔の上空に浮かぶ赤い数字。

さきほどまで88%だったそれは、確かに下がっている。

だが――

79%は高すぎる。

街の人間は、依然として俺から距離を取っている。

未来は少しズレた。

だが前提は変わっていない。

「五割まで下げろ、か」

俺は塔の最上階から街を見下ろす。

水瓶王の言葉は単純だ。

六つ目に触れず、生存率50%以上。

星を奪わず、未来だけで勝て。

面白い。

難易度は最悪だ。

リゼが隣に立つ。

天秤は微かに揺れている。

「あなた、本気でやる気?」

「やらないと死ぬ」

「そうじゃなくて」

リゼは俺を見る。

「水瓶王は、あなたを試してる」

「“選択できる器”かどうか」

沈黙。

未来を増やす。

それはつまり、誰かの未来を削らないといけない可能性もある。

セイルが恐る恐る言う。

「固定は、国の観測網を通して拡張される」

「つまり?」

「街全体が、あなたの死を“前提”に動いている」

だから市場事故が起きた。

俺の死亡未来が強まれば、他の未来が歪む。

「逆に言えば」

俺は呟く。

「俺の生存を前提にすれば、街も安定する」

セイルが目を見開く。

「そんなこと……」

「できる」

俺は時計塔の針を見る。

固定核。

あれを完全に壊せば早い。

だがそれは“奪う”行為。

水瓶王のルール違反だ。

今回は、星に触れない。

なら。

「人間側を変える」

リゼが首を傾げる。

「どうやって?」

俺は階段を降りる。

街へ。

広場の中央に立つ。

“死亡確率 79%”

赤い数字が頭上で揺れている。

俺は大声で言った。

「聞け」

人々が足を止める。

恐怖ではない。

観測。

「俺が死ぬ確率が高いからって、何もしないのか」

ざわめき。

「回避保証は?」

「補償は?」

不安の声。

水瓶の民は“予測”に依存している。

自分で選ぶことを忘れている。

「俺は死なない」

断言。

リゼが息を呑む。

「根拠は?」

誰かが叫ぶ。

俺は笑う。

「79%だろ?」

「100じゃない」

静寂。

「21%は生きる未来だ」

人々の視線が揺れる。

セイルが小さく呟く。

「……その考え方は」

水瓶では危険思想だ。

「その21%を増やす」

俺は地面を踏みしめる。

「協力しろ」

一瞬、沈黙。

やがて、若い男が前に出た。

「どうやって?」

「観測を一つ、ずつらす」

具体性はない。

だが方向はある。

固定は“削る”行為。

ならば俺は“足す”。

街で起きる小さな分岐。

事故を回避するだけでなく、

俺に有利な未来へ繋がる行動を重ねる。

まずは単純なこと。

「時計塔の予測通りに動くな」

人々がざわつく。

「予測された事故は、逆に行動を変えれば起きない」

セイルが理解する。

「観測前提の行動を崩す……?」

「そうだ」

未来は観測されることで“固まる”。

ならば。

観測を裏切る。

その瞬間。

時計塔の数字が揺れた。

“死亡確率 76%”

小さく下がる。

街がざわめく。

「下がった……?」

リゼの天秤が強く光る。

「未来が増えてる」

水瓶王が塔の上から見下ろしている。

その瞳に、微かな興味。

俺は広場で叫ぶ。

「未来は与えられるものじゃない」

「選ぶものだ」

誰かが動く。

誰かが予定を変える。

観測網が乱れる。

数字がさらに揺れる。

“死亡確率 73%”

わずか。

だが確実。

水瓶王が呟く。

「集団干渉……」

未来は個人だけのものではない。

社会全体の選択が、分岐を生む。

俺は拳を握る。

「50%まで行くぞ」

まだ遠い。

だが、ゼロじゃない。

蛇が静かに笑う。

未来は奪わない。

増やす。

水瓶王国での戦いは、まだ始まったばかりだ。

第27話でした。

今回はバトルなし。

代わりに

・未来固定の社会構造

・観測前提の人間心理

・集団分岐による生存率変動

を描きました。

水瓶編は、

力ではなく「思想」で削り合います。

アルクは

奪う → 重ねる → 越える

に続いて

増やす

という段階に入りました。

ここからは

水瓶王の本格的介入

リゼの天秤が観測側に共鳴する展開

“六つ目に触れずに”どこまで行けるか

じわじわ進めます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ