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『十二星天の裏支配者 〜追放された雑用係、実は星座を喰らう最後の蛇でした〜』  作者: パーカー
第四章『観測と選択』

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第25話 『確率の檻』

死亡確率、88%。

未来は固定され、街は静かにアルクの死を前提に動き始める。

敵は王か。

それとも、もっと近くにいるのか。

水瓶王国の街は、奇妙なほど秩序正しかった。

さきほど市場が崩れたというのに、

人々は慌てない。

「被害軽微。想定範囲内」

水色ローブの役人が淡々と告げる。

すでに“補償未来”が再計算されているのだろう。

俺は時計塔を見上げる。

“死亡確率 88%”

赤い数字が、街の上空に幽霊のように浮いている。

「気分が悪いわね」

リゼが小さく言う。

「生きてる人間を、数字にするなんて」

「ここでは当たり前だよ」

案内役の男――名をセイルというらしい――が答える。

「数字は安心をくれる」

「不安を減らす」

「選択の負担を軽くする」

俺は鼻で笑う。

「選択を奪ってるだけだ」

セイルは否定しない。

「……そうとも言える」

そのとき。

通りの向こうで、子どもがこちらを指差した。

「あの人、死ぬ人だ」

母親が慌てて手を引く。

「見ちゃいけません」

まるで、もう死体のような扱い。

なるほど。

固定とはそういうことか。

“未来”が社会の前提になる。

俺が生き残る可能性は、もう考慮されていない。

「固定は、どの範囲まで影響する」

俺が問うと、セイルは答える。

「都市規模」

「高位固定なら、国全体」

嫌な予感。

「今のは?」

「……高位だ」

つまり、王級。

だが王が直々にやるには、妙だ。

俺は時計塔の針を睨む。

さっき、俺が落下を回避したとき。

確率がわずかに下がった。

88%。

固定は絶対じゃない。

「ズレがある」

俺は呟く。

リゼが頷く。

「天秤も揺れてる」

彼女の星紋が、薄く震えている。

「未来が重なり合ってる感じ」

セイルの顔色が変わる。

「それは……」

「固定が完全じゃない証拠よ」

リゼが断言する。

「誰かが急いで固定した」

「不完全なまま」

内部犯行。

あるいは、王の命令を無視した単独行動。

そのとき。

時計塔の上階で、何かが光った。

一瞬だけ、水色ではなく――

黒。

蛇が強く反応する。

「今の、見えたか」

リゼも頷く。

「異質」

セイルは見えていない様子だ。

「何も……」

なるほど。

観測網に映らない何か。

“固定の核”が塔のどこかにある。

「登れるか」

セイルは躊躇する。

「許可が必要だ」

「俺は死ぬ予定なんだろ」

淡々と言う。

「だったら今さら問題ない」

セイルは苦笑する。

「確かに」

やがて頷いた。

「短時間なら」

塔の内部は冷たい。

階段を上がるたび、空気が薄くなる。

壁一面に、水晶板が並ぶ。

無数の未来が、波のように揺れている。

俺の姿も映っている。

だが。

ほとんどが“死”。

血。

崩壊。

焼死。

落下死。

毒死。

ぞっとする。

リゼが顔をしかめる。

「悪趣味ね」

最上階に近づくほど、未来の数が減っていく。

分岐が閉じられている。

固定されている証拠。

そして――

最上階。

中央に、巨大な水晶。

内部に、一本の針が刺さっている。

それは時計塔の針と同じ形。

だが色が違う。

濃い、青。

「これが……固定核」

セイルが震える声で言う。

本来は水色のはずだ。

だが今は濁っている。

リゼが息を呑む。

「外から干渉されてる」

「管理者……?」

俺は首を振る。

違う。

もっと人間臭い。

水晶に触れる。

冷たい。

同時に、未来が流れ込む。

無数の死。

だが奥に。

ほんの一つだけ。

ぼやけた未来。

俺が立っている。

生きている。

七つに届いていない。

六つ。

止まっている未来。

「……これだ」

蛇が低く唸る。

奪う?

違う。

未来は星じゃない。

だが。

“核”は星に似ている。

針を掴む。

瞬間。

警告音が鳴る。

塔全体が震える。

セイルが叫ぶ。

「やめろ! それは王の管理領域だ!」

俺は笑う。

「固定された未来なんて、気に入らない」

力を込める。

針が、わずかに傾く。

“死亡確率 83%”

数字が下がる。

リゼの目が見開かれる。

「本当に……触れてる」

だが次の瞬間。

強烈な圧が背後から押し寄せた。

冷たい。

凍るような気配。

「そこまでだ」

低く、静かな声。

振り向く。

階段の入り口に、立っている。

長い水色の髪。

澄んだ瞳。

胸に、王級の水瓶紋。

「未来は、弄ぶものではない」

水瓶王が、静かにこちらを見ていた。

第四章、核心へ。

第25話でした。

・未来固定の“核”登場

・主人公が未来に触れ始める

・固定が不完全だった理由示唆

・ついに水瓶王登場バトルはまだ

ここからは

即戦闘には入りません。

思想戦・観測論争・未来の扱いについて丁寧に描きます。

六つ目はまだ遠い。

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