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銀河帝国皇帝アスカ様 零ーZEROー ~スペアボディと呼ばれた彼女が皇帝陛下と呼ばれるまで~  作者: MITT


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第十八話「ヤクーツク元帥」④

 なに? モスクワ再建って……モスクワ奪回の聖戦を起こして、その戦いの最中に死ぬのが本望?

 コイツらって、そんなくだらない理由で地球とやりあおうとしてたのか?


 うん、全然理解できない。

 総帥も良くこんなのと真面目に議論とかしていられるよな……。


 それに……もしも、コイツらが居なかったら……。

 そもそも、あの衛星落着も起こらなかったんじゃないか?


 こんな奴らがいるから……人類が宇宙へ進出するような時代になっても戦争が無くならないんだ。

 ……私の中でなんと暗い感情がもたげるのが解った。

 

「いやいや、待ち給え。そんな聖戦とか無意味な事をするまでもなく、非武装で観光に行ったり、テントでも張って気が済むまで滞在するって事なら、一向に問題ないらしいんだが……。遥くん、君の話を聞いた限りでは、そう言う事なんだろ?」


 おっと、話振られたか。

 確かに、そんな話もしたよなぁ。


「そうですね。あの辺りは誰も管理していない管理外区域なので、立ち入りについては推奨もされていませんが、好き好んでいく分には誰も止めないでしょうね。行く方法についても、イギリス辺りまで行ければ、あとは現地で飛行船でもチャーターでもして、モスクワの跡地くらいまでなら、行こうと思えば誰でも行けると思いますよ」


 まぁ、安全が保証されていなくて、正式な航路がないってだけで、行く方法なんていくらでもあるからなぁ。 


「ふむ、要するに我々が地球にいた頃のまま……と言うことか。確かに、あの時点でユーラシア大陸はその大半が、すでに管理外区域化していたからね。何もモスクワだけを蔑ろにしていたと言うわけでもない……。それは私も実感を持って言えるな」


 考えてみれば、この人もすごいよなぁ。

 管理外区域指定……要するに、不毛の地と化したユーラシアを歩いて横断してたらしいからなぁ。


「今の時代……各地で人口減少が問題化している程なので、皆なるべく一塊になって、効率良く住もうってそう言う考え方になってるんですよ。もっとも、モスクワは放射能汚染の数値がヤバいらしいんで、住んでる人も一人も居ないらしいんで、勝手にロシアの国旗立てたり、住み着いても、誰も文句は言わないでしょう」


 まぁ、実際……エルサレムなんかは、ユダヤ教徒とイスラム教徒がどっちも聖地扱いしてるから、未だに住み着こうとする輩が絶えないらしいんだが。

 

 今どき宗教なんて信じてるのは、旧世代の人々ばかりで、昼夜の気温差が50度とか行く上に海の水ですら干上がるような過酷すぎる環境の前に、大抵一ヶ月もすれば全滅するか……虫の息で救援要請をして、強制送還されるってのを繰り返してる。

 

 そもそも新世代の連中は宗教なんて、誰も信じてないからな……宗教も時間の問題で消滅するってのは、もはや確定してる。


 と言うか……宗教云々で人間同士でいがみ合うとか、そう言う時代じゃないんだよなぁ……。


「……やれやれ、廃墟になっているのも相応の理由がある……そう言うことか。その場合、正式に居住許可申請を出したりする必要はあるのかね? 要するに、武力を用いずに真っ当な方法で居住許可を得ると言うことなんだが」


「そうですね。そう言うことなら、アマテラスも話くらい聞いてくれるでしょうし、元住民だと主張すれば、居住許可も恐らく通りますね。もっとも、再建の援助をしろとか、放射能汚染の除染やらを要求するようであれば、さすがにそれは虫が良すぎると言う話だと思いますがね」


 事実として、モスクワ跡地行きの定期飛行船の便なんてないんだけど、イギリス発の旧欧州周回航路ってのがあって、旧ベルリン辺りなら、旧ドイツ系住民が頑張って再建してるから、そのあたりなら行こうと思えば、行けなくもない。

 

 ただし、完全にオフラインエリアなので限りなく無法地帯ってだけの話なんだがね。

 

 ベルリンまで行ければ、あとは常温核融合炉を複数搭載した大型無限軌道輸送車あたりなら、余裕で到達できる距離だろうし、気合と根性と食料や水の運搬手段さえあれば、気長な歩き旅でもなんとかなるだろう。


 ちなみに、旧ベルリンでは何故か、ベルリンの壁が復活してるらしいんだけど。

 単なる歴史モニュメントとして再建したらしく、かつては西ベルリン全域を囲っていたんだけど、再建したと言ってもほんの数百m程度だけで、普通に迂回出来たり、通用門があったりと、本気で単なるお飾り。


 陸路で旧モスクワまで行って、テント並べて住み着いたり、新生ロシアを建国って宣言しても、実際は現地でのんびりと自給自足のキャンプ生活してるとか、その程度なら誰も何も言わないだろう。


 実際、ドイツやフランスのような旧ヨーロッパ諸国は国家としてはすでに崩壊していて、その国名も過去のものとなっているんだけど。

 

 別にドイツ人やフランス人が絶滅した訳でもないので、アメリカとか外国に移住してたドイツ人とかフランス人が、旧パリや旧ベルリンを拠点に再建事業……と称する集団キャンプ生活を行っているし、実はそういったヨーロッパの歴史ある都市には、潜在的な観光需要というものがあるのだ。

 

 その辺りの都市再建プロジェクトは、やる気がある人が複数いるなら、ファンドや基金という形で、すぐに資金援助が付くので、ヨーロッパの主要都市も限定的ながら再建が進んでいるって話だった。

 

 実のところ、今の時代……一般の人間様は皆、結構暇人揃いで、お金にも不自由してないので、そう言うロマン溢れる事業の協力者募集ってなると、こぞって出資者や参加者が出てくるらしい。

 

 モスクワとかもやはり、同じように歴史ある都市なので、潜在的な観光需要はあると目されていて、同じように再建を試みてる人達も居るみたいなんだけど……。


 文字通りLucifer禍の爆心地である上に、衛星国家群や軍の反乱祭りで、やけを起こしたクレムリンの住民たちが、諸共に核自爆をしてしまったせいで、放射能汚染が酷くて、放棄都市とせざるを得なくなってる。


 だからまぁ……やりたければ、ご自由にってのは割とホントの話。

 もっとも、絶対に長生きは出来なさそうだけど、この人達の様子を見てる限りだと、長生きなんて別に求めてないだろう。


 いずれにせよ、モスクワの再建事業をやりたいって言えば、クラファンとかで資金調達は結構簡単だと思うし、旧ロシア系の住民もあちこちで生き残ってるから、なら手伝おうっていう命知らずも大勢集まるんじゃないかな。


 ちなみに、北京あたりも事情は一緒で、こっちは放射能汚染は問題ないんだけど……。

 派手な内戦で年単位でやりあった結果、やっぱり完全に廃墟となってしまっている。

 

 それに何よりも……実は北京って、何度も再建の試みがなされるんだけど、その度に弾道弾を打ち込まれて、廃墟へ逆戻りってのを何度も繰り返してる。


 ちなみに、今のところ中華国を名乗っていて、大陸沿岸部でそこそこの勢力を維持しているのは、上海を中心とした「南中国連合」……略して「南中連」なんだが、北京を何度も何度も吹き飛ばしてるのは、コイツらの仕業。


 ここらへんは、なかなかに複雑怪奇な背景があって、まず日本がアマテラスの国家嚮導宣言を発する中、あまりそう間をおかず台湾と上海勢がタッグを組んで、アマテラス条約機構への加盟を名乗り出てきたってのがある。


 まぁ、この辺はアマテラスがテストケースとして、島国故に比較的Lucifer禍のダメージが少なかった台湾のネットワーク網に分体を仕込んでいて、割と早い段階で事実上の掌握化が済んでいたことと、台湾自体が、元々親日国で日本発のアマテラス降臨とその後の大発展劇を見て、むしろこの波に乗っていこうと、国家ぐるみで意思決定が出来ていたのが大きかったようだった。


 で、上海勢は旧中国の南方の連中で、前々から北京勢に押されてさんざん冷や飯食わされてた上に、Lucifer禍での凄まじい勢いの人口減に直面する中、北京勢から損切りとばかりに資金も物資も何かもかも絶たれて、もはや全滅待ったなしって状況に陥っていた。


 もっとも、そこへ惨状を見かねた海のすぐ向こう側で、経済的な結びつきも深かった台湾がアマテラス条約機構への同時加盟を打診して、渡りに船とばかりに上海勢は「南中連」として、リブートした。


 もっとも、そこへちょっと待てやって、横槍を入れてきたのが当時ロシアと組むことで、生き残りを図ろうとしていた北京勢……。

 

 昔からあの国は自分たちが世界の中心と言う思想に凝り固まってて、2020年代にはレアメタルを使った資源外交にも成功し、アメリカですらもぐぬぬってなって止められない……本当に、最高潮でまさにこれからって時に、lucifer禍の直撃を食らった。


 何とも運がない話なんだけど……コロナ禍なんて、目じゃないほどの殺傷力を持つlucifer禍の前には、10億を誇っていた人口も尋常ならざるスピードで減っていって、あっという間に国家としての体裁をなさなくなってしまった。

 

 そして、色々あって南中連と小競り合いを繰り返すうちに、元々滅びかけてた北中国残党は、その最大のフォロワーだったロシアさんが自爆スイッチを押して消し飛んでからはもう息をしなくなって、元々内陸都市だった北京辺りでは無理くり沿岸部から送電ケーブルをつなげて、頑張ってたんだけど……。

 

 繰り返し弾道弾攻撃を受けて、都市機能どころか、水源も破壊されて送電ケーブルも何度も何度も切断されて、いよいよ砂漠化が北京にまで押し寄せてきた事で住民も四散していって、それっきり再建されることもなく中国4000年の歴史は静かーに幕を閉じた……。


 そして、その中露の生き残りは、巡り巡って人類統合体に合流して……銀河の果てを目指すはずが、地球に舞い戻って北京とモスクワを再建を夢見て、レッツ地球侵攻ってか……。

 

 うん? こいつら思いっきり本末転倒ってヤツだろ。

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