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銀河帝国皇帝アスカ様 零ーZEROー ~スペアボディと呼ばれた彼女が皇帝陛下と呼ばれるまで~  作者: MITT


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プロローグ「ロズウェル准将、最後の戦い」④

「確かに、野郎は綺麗事しか言わないハッタリ野郎って、俺らも思ってますからね。でも、ここはひとつ、話相手にくらいなってやってもいいのでは? 時間稼ぎには丁度いいじゃないですか」


「確かにな……。それに向こうも第六通路が埋まった事で手詰まりで途方に暮れてるみたいだからな。第一小隊の連中……グロウ大尉も実によくやってくれた!」


 本当に……よくやってくれた。

 第六通路の閉塞が間に合わなかったら、今頃こちらもARMS相手に血みどろの白兵戦を繰り広げているところだった。


「しっかし、いくら潜行艦のダメコン用の硬化充填剤だからって、あれくらいぶち破れ無いんですかね……」


 第六通路の閉塞に使ったのは、たまたま潜航艦から持ち出しせていた緊急補修材だった。


 艦体に穴が空いた際に、エーテル流体の侵食を低減する為に放棄区画に充填する……そんな使い方をする元々は宇宙船でも使われるような硬質発泡素材だったが。

 グロウは、何かの役に立つと言うことで、物資陸揚げ時の優先物資として、それを陸揚げしており、細い連絡通路に対して使った結果、通路全体をガチガチに固めることに成功していた。


 他の通路は隔壁閉鎖の上でロックシステムを破壊することで閉鎖出来たのだが、第6通路だけはメンテナンスホールのような通路で、まっすぐ素通しに近かったのだ。

 

 そこを封鎖すべく、第一中隊は奮闘を重ね全滅の憂き目を見たようだったが、敵を一歩も通すなと言う命令は完遂したと言えるだろう。

 そして、彼らの置き土産はまさに最高の防壁として機能していた。


「大方、人間を切り刻んで殺すことしか想定してなかったんだろうな……。まったく、実戦を知らない坊やのやりそうなことだ……喜べ、我が方の勝利は確定だぞ」


 そう言って笑うと、誰もが不敵な笑みで返す。

 

 そして、根拠地を失った銀河守護艦隊は、時間の問題で干からびてもはや勝手に全滅するだろう。


 なにせ、私もここに来て知ったのだが。

 連中の補給生産拠点は、本気でここ一箇所だけのようなのだ。


 たった一箇所の補給生産拠点で全軍の物資補給を担っている。

 我々帝国軍からしてみれば、凡そ正気とも思えない対応なのだが、どうやら本気でそう言う事らしい。

 

 確かに、敵の兵力規模が開戦当初と比較すると明らかに小規模化していたり、必要以上に燃料、弾薬の消耗を惜しむ傾向があるなど、補給に難を抱えている可能性は高いと見ていたのだが。

 

 その兵站能力は、我々の想像を超えて貧弱なものだった。

 てっきり、他にも何箇所も物資補給拠点があると思っていたのだが、そんな事も無かった。

 

 念のために、管制室からこの根拠地の管理システムに潜り込んでみたのだが、本当に予備の根拠地など一切なかった。

 せいぜい、偽装用のダミー施設や小規模のデポや、デポ代わりの大型輸送艦があるとか、その程度のようなのだ。


 奴らのクライアントと言える銀河連合諸国に至っては、その技術力も生産力も衰退しきっていて、銀河守護艦隊の先進装備を賄う為の要求水準すら満たしておらず、この戦争においてはもはや何の意味の存在と化していた。

 

 始めからそうと解っていれば、帝国軍の全戦力を叩き込んで、この根拠地を粉砕することで、早々に勝負が決まっていたかもしれない。

 その程度には、銀河守護艦隊には致命的な弱点が存在していたのだ。

 

 ……まぁ、たらればは禁物ではあるのだが、この情報がもっと早く入手できていれば……そう思わずには居られなかった。

 もっとも、正面からの正攻法では、この根拠地を粉砕するのは厳しかっただろうとも思い直す。

 

 なにせ、本来は、銀河守護艦隊最強と謳われたN艦隊という精鋭がここを拠点とし、守備を任せられていたようで、N艦隊の釣り出しに失敗した場合は、作戦を中断する……その程度には、N艦隊については、帝国軍からも高く評価されていたのだ。

 

 もっとも、そのN艦隊は精鋭故に最優先で戦場に投入されがちだったようで、今は第五帝国の首都星系ゲート包囲戦の真っ只中との事だった。

 

 ソレもあって、今こそが千載一遇のチャンスだと私も判断したのだ。

 なにせ、どれだけ強力な艦隊でも物資補給がままならなければ、そのうち燃料切れで動くこともままならなくなって、タダの的となる。


 そして、私にはこの根拠地を消し飛ばすことができるだけの秘密兵器といつでも死ねる覚悟があった。

 それに気付いてしまったからこそ、私はここを死に場所とする事に決めたのだ。


「どうも、一生懸命封鎖された通路の壁を引っ掻いてるみたいですが、アレじゃどうしょうもないでしょうな。それこそ雑にレールガン艦砲射撃で、ドカンと穴を開けるか……専用の建造物破壊用重機でも持ってこないと……そんなところですかね。連中には、俺等みてぇな歩兵が居ないってのが弱点ではあったんですが、あんなブリキ人形程度じゃ、やはり俺等歩兵の代わりにはなり得ないですね」


 ……アスカ陛下にも、いつの時代でも生身で戦う歩兵と言う兵科が消えることはなく、最終的に勝負を決めるのは歩兵なのだと、いささか偏った教えを施していたのだが。


 どうやら、その考えは間違っていないようだった。

 我々はここで果てるだろうが、引き換えにあの強大極まりない銀河守護艦隊に致命傷を与えるのは確実なのだからな。


 命を懸けた決死の思い……。

 それは時として、兵器のスペックだの常識だのを軽く覆す……我々が戦場を完全に無人兵器任せにしない最大の理由がそれなのだ。


「その通りだ……。いずれにせよ後5分程度では何をやっても間に合うはずもない。故に我らの勝利は確定だ! 総員、誇れ……あの銀河守護艦隊を滅ぼすのは巨大戦艦でも人型機動兵器でもなく、生身の歩兵に過ぎない我らの決死の覚悟なのだからな!」


「そう言っていただくと、俺らとしても誇らしいです。先に逝った連中の犠牲の甲斐はあった……そう言うことですな。では、ここはひとつ敵将と無駄話でもして、もうひと押し時間を稼いでいただきたいところですな」


「まぁ、そうだな……この位置関係では、向こうも確実に消し飛ぶだろうからな。さすがに勝ったつもりになりながら、訳も分からず消し飛ぶと言うのも気の毒な話ではある。では、指揮官たるこの私が対応すると先方に伝えろ。いいな? 我々の切り札はギリギリまで悟られるなよ……我々は、もはや全滅間際の敗残兵なのだ。せいぜい、死に怯え絶望に沈んだ不景気な面でも並べるとしようか」


 そう言って私は笑った。

 

 そう……もはや、この身は死が確定しているのだ。

 思い残すことがないと言えば嘘になるが。

 

 我が教え子にして我が主君たるアスカ様の未来を切り開く礎となるのであれば……。

 ここは死に場所としては悪くないし、こうなる運命については、ずっと昔に予言されていたのだ。


『汝、銀河の王たるものと出会い、その導き手となり、そして、王の未来を切り開く礎となり、その生命をも捧げることになるだろう』


 あの日、遠い異星からの異形の使者より告げられた予言の言葉は、今でも克明に覚えている。 


 預言者の告げた銀河の未来は、あの時の時点では笑い飛ばしたくなるような未来だったが。

 あれは本物の予言であり、その後の私は概ね予言通りとなった。


 だが、私は本物の……銀河帝国の真なる後継者を見い出し、育て上げるという役割をこなすことが出来た。

 私の役目はそれで終わると言う話ではあったのだが、こう言う終わりなら、悪くはなかった。


 もっとも一応、私自身は再現体の派生コピーであるからには、奴ら同様に蘇りも不可能ではないかもしれない……。

 だが……もはや、私の精神摩耗も限界に近づきつつあり、再現の試みも恐らく失敗に終わるだろうし、帝国には死者の再現技術は伝わっていない。

 

 つまり、これは永遠の死……恐らくそうなる。

 もっとも、そんな私の永遠の死出の旅立ちに……随分な数の同伴者が出来てしまった事は不本意だった。

 

 もう少し上手くやれていれば……そう思わなくもないのだが。

 私も結局、万能には程遠い……命を捨ててようやっと、オリジナル……。


 そう、ハルカ・アマカゼに一矢報いる事が出来る……。


 本来ならば、奴にも永劫の死をくれてやりたかったが、その筋道を付ける……その程度が精一杯のようだった……まぁ、所詮劣化コピーなのだから、そんなものだろう。


「不景気な面でねぇ……ここにいる全員が万歳三唱くらいやってやりたいって思ってるんですがね! おい、野郎ども! この期に及んでビビってるような玉ナシがいるなら、前に出ろ! この俺が修正してやる!」


「……今更、修正してどうするんだかな。では……我々と死出の旅を共にする……お気の毒なアギトくんの面でもおがんでやるとするか。……第三帝国! そして我らのッ! アスカ様の為にッ! 総員復唱ッ!」


「「「「「我らのッ! アスカ様の為にッ!」」」」」


 一斉に全員が敬礼を捧げアスカ陛下への忠義の言葉を捧げている最中に、バイザーで顔を隠した細面の青年が空間モニター上に浮かびあがるなり、なんとも嫌そうな顔をするのがわかった。


 なにせ、今の我々はヤツが期待していたであろう、絶望した敗残兵とは程遠い様相なのだからな。

 

 自分で言っておきながら、初っ端から演技すらも出来ていないが。

 まぁ、いい……今更、何をやられても手遅れなのだからな。


「……はっ! 追い詰められたドブネズミのように絶望に震えているかと思ったが、貴様ら揃って随分と威勢がいいのだな。ああ、貴様の名は知っているぞ……第三帝国特殊戦隊戦隊長のロズ准将だな。まさか、あの厄介な第三帝国特殊戦隊を率いる大ボスまでもがここにいるとはな。蛮勇の果てに敵地で死地に陥る……か、実に傑作な最期だな!」


「…………」


 私は、何も答えない。

 

 まぁ、ここはヤツのターンだ。

 好きなようにいわせてやる……私にもその程度の情けはある。


「だがまぁ、まんまと罠にハマってくれてお気の毒様と言ったところだな……さすがに、如何に貴様らが手練揃いでも、対人兵器のARMS相手ではもうどうすることも出来まい……アレの力はもう存分に味わってくれたと思う。貴様らのような生身の兵士風情が我々の戦いに割り込んでくるような時代は終わったんだ……たかが歩兵如きが我々銀河守護艦隊に立ち向かうなど、無謀だったと思い知るが良い!」


 まったく、陳腐なセリフだった。

 三下と呼ぶに相応しい、まさに小物のセリフ以外の何物でもない。


「ああ、アギトくんだったかな? いや、初対面でこんな事を言うのも何だが、私は君のような戦が始まると戦場の安全地帯でビクビクと震えているような臆病者と違って、最前線で兵と共に戦い死地を超える……その瞬間がたまらなく好きなのでな。その様子ではこちらを追い詰めたとでも思っているのだろうな。三下の若造アギトくんッ! クソ喰らえ! お前如きにはこの一言で十分だッ……!」


 我ながら、気の利いた煽りだったようで、バイザーの向こうでアギトが青筋を立てているのが解った。

 ハッ! 青二才が……こちとら二百歳超えの妖怪ババァなんだからな!

 

 年季が違う……年季がッ! ちったぁ、敬えッ!

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