第五話 ライセンス試験、俺、ハンターになれるのか!?
目が覚めてから、ギルドの酒場に向かうと、ナビィが朝ご飯のパンを食べていた。
「……おはよう。イッシン」
「おはよう。何を食べてるんだ?」
「ああ……これ? おいひいよ?」
ナビィは食べ物を口に含ませながらモゴモゴと話す。
「あんたもたべう?」
食べるか話すかどっちかにすればいいと思うのだが、どうやら食べるのをやめられないらしい。俺はナビィからパンをもらい食べてみることにした。
モチモチっとした食感と歯ごたえのある弾力がとてもおいしい。
「おいしいな、これ」
「でしょ? クロイス村名物、クロイスパンっていうの。たまに酒場で売ってるから買ってみたら?」
「へえ~、そうなんだ。今度買ってみるよ」
「うん。そういえば今日、ライセンス講習の日じゃない? 行かなくていいの?」
「あ……」
そういえば……。
「その顔は忘れてたって顔ね。まあ、そこまで時間厳守じゃないから大丈夫よ。講習受けるのはあんただけだしね、ライスさんに言えば大丈夫だから行って来たら?」
「わかった。行ってくるよ」
「ふぁ~い。いってらっ……あっ、そうだ!」
ナビィはふと思いついたように俺を呼び止め、モシャモシャと口の中のパンを食べつくす。
「ライセンス講習が終わったら、一緒に武器と防具を見に行きましょ! 約束ね!」
「おう、わかった」
「酒場で待ってるから、終わったら来てね~」
俺は酒場を後にして、ギルドの受付に向かった。
受付ではライスさんがお客さんと相手をしている。
ふと俺に気づいたのか、笑顔を返してくれた。
「お待ちしておりました、イッシンさま。ライセンスの講習ですか?」
「あっ……すみません、お待たせして」
「いえ、大丈夫ですよ。では、修練所で優しい教官さんがお待ちしておりますのでギルドの裏庭までお越しください」
「わかりました」
ギルドの裏庭に行くと、広い芝生の上に筋肉質な体つきが印象的な強面のおっさんが腕を組んで待っていた。
「おう、来たな小僧! 待ちわびたぞ!」
鋭すぎる眼光が、俺の体に突き刺さる。
「えっ……」
あれ? おかしいな。
優しい教官だと聞いていたんだけど、教官さん、なんか想像と違くない?
ライスさん、優しい教官って言っていたよね? え、どうして?
「よし、そこに座れ小僧!」
「あっ……はい!」
俺は教官の前で正座をした。
教官の横にはテーブルがあり、武器がたくさん置いてある。
あれを使うのだろうか? まさか、いきなり襲ってきたりはしないよな?
もしかして、遅れてきたことを怒ってる? でも、時間厳守じゃないんだよな。
どういうことだ!?
「名を名乗れ」
「えっと……タケダ・イッシンです」
「声が小さあい!!」
「タ……タケダ・イッシンです!!」
「よおし、イッシン! その意気だ! ではこれから、ハンターズライセンスの試験を始める! 準備は良いか!」
「おっ……オス!!」
な……なんか、すごいペースで始まりそうだ。怒っているわけじゃないのか?
「いい返事だ! まずは私の名を覚えよ! 我が名は、ゴッズ・フェルト教官だ! ゴッズ教官と呼べ!」
「オス! ゴッズ教官! よろしくお願いします!」
「んん~いいぞいいぞ! その調子だ! 乗ってきたじゃないか!」
「ありがとうございます!」
こんなんでいいんだろうか……。
「それじゃあ、試験の説明を始める! なあに、簡単だ。準備をするから少し待ってろ。お~い、持ってきてくれ~!」
「は~いだモン~~!」
教官の言葉で修練所にある倉庫からしゃべるリスのような生き物達が荷車を使い、巨大なリスのような形をした人形を運んできた。
「ありがとう、ハコビモモンガ達! ご褒美のモモクルミだ、食べてくれ」
「わ~!! ゴッズ教官! ありがとうだモン!」
教官が懐から出した種のようなエサをおいしそうに食べ始めた。
「おいしいモン~!!」
ハコビモモンガというのだからきっと、リスではなくモモンガなのだろう。
エサを頬にたくさん詰めて食べている姿は愛らしく、かわいい。
「いいか、イッシン。このハコビモモンガ達は、ハンターのクエストにおいて非常に重要な存在だ。依頼をすればクエスト中の荷物を運んでくれたり、危険にあった時は信号を送ればすぐに飛んで駆けつけてくれる。いわば、ハンター達専用のお助け隊だ。困った時はすごく頼りになるから失礼のないようにな!」
「そうなんですか、わかりました」
思っていたよりも重要な存在だった。確かに、ハンターがクエスト中に危険な状態になったら、自分でなんとかするしかないが、助けてもらえるならそれに越したことはない。失礼のないように接しよう。そう思っていたら、いつの間にか目の前にハコビモモンガが一匹近づいてきた。
「イッシンさん、なでなでしてほしいモン」
「えっ?」
ハコビモモンガは頭を差し出してきた。なでなでしますか? はい、いいえ。
というゲームのような表示が頭に浮かんでくる気がした。
とりあえず、なでなでしてみる。ふさふさとした毛が手のひらを柔らかく包み込み、温かい体温が手のひらの感触から伝わってきた。
ああ……気持ちいい。このまま抱きつきたくなるような心地良さだ。
なでなでしていると、他のハコビモモンガ達も集まってくる。
「僕達もおねがいしますモン」
「あ……ああ……」
なでなで、ふさふさ。柔らかな感触が幸せな気分にさせてくれる。心地良い。
だが、しばらくすると、ハコビモモンガ達は一匹ずつ離れていった。
そして一匹ずつ整列して、俺の前に立つ。
「ありがとうございますモン。僕達はこうして触れ合うことを親睦の証としているモン。これで、イッシンさんと僕達は一心同体。クエストで困った時はいつでも言ってくださいモン!」
「ああ、ありがとう。頼りにしているよ」
本当のことを言えばもっと触りたかったけど、なんか戻れない気がするからやめておこう。
「こちらこそだモン! バイバイだモン!」
ハコビモモンガ達はピョコピョコと修練所の倉庫まで戻っていった。
「よし、イッシン! 試験を再開するぞ」
「はい、お願いします!」
「では、このテーブルに置いてある武器を使い、ハコビモモンガ達が持ってきてくれたあのハコモモ人形を時間内に破壊できたら試験はクリアだ。制限時間は一時間。武器の使い方がわからなかったら、私に聞け。以上だ!」
「わかりました」
ハコモモ人形。どうやらハコビモモンガの形を模した人形のようだが、あれを破壊するだけでいいのだろうか。
もしかしたら、結構簡単な試験なのかもしれない。とりあえずやってみるか。
テーブルの上にはいろんな種類の武器があった。武器の前に名札がある。
「え~と、なになに? プロテクトソード、ブレイクハンマー、ソードウィップ、ブーストサイス、ジェットランス、アルターボウガン、カスタムバレルガンか……。多いな」
とりあえず、近くにあった盾を持ってみた。プロテクトソードというらしいが、ソードという割にはただの盾のようだ。剣が別にあるのか?
「ほう、プロテクトソードか。そいつは初心者にも扱いやすい武器だな。盾と剣が合体している特徴を持っている。盾の内部に剣が仕込まれているだろ。引き抜いてみろ」
確かに、盾の裏側に剣の柄のような物が刺さっている。引き抜いてみると、盾のサイズと同じくらいの剣が出てきた。
「へえ~。盾の中に剣があるから持ち運びしやすいのか、便利だな」
「そうだな。だが、本来はそれだけではないぞ」
「え? 他に何か?」
「ハンターの好みにもよるのだが、基本的に全ての武器には変形機構という特殊形態を備えることができる。鍛冶師との相談にもよるが、自分好みの変形機構を付けてもらうことができるぞ」
「へえ~」
「まあ、今回のは試験用の武器だから変形機構はついていない。とりあえず、どの武器に適性があるのかを見極めるための試験だ。気楽にやってみろ」
「わかりました」
とりあえず、俺はプロテクトソードを構えて、人形に向かって走り出した。
「やああああああ!!」
走った勢いを利用して人形に向かって斬撃を繰り出す。
だが、人形は剣先に触れた瞬間、ポヨンと剣をはじき返した。
「げっ!? なんで!?」
「ふん! 貴様、あれをただの人形だと舐めていたな? こいつは防具にも使われている伸縮性のある特殊なゴム皮で作られた人形だ。生半可な攻撃ではこいつには届きはせん。さっきの攻撃は振りが遅すぎたのが不発の原因だ。残念だったな」
「くそっ! ならもう一回!」
「うむ。何度でも挑戦するがいい」
その後、教官は近くの椅子に座り、いつの間に用意していたのか、紅茶でティータイムを始めていた。
「おりゃ! うりゃ!」
その間、何度も人形を壊すためにプロテクトソードを振ったが、人形は俺の斬撃をたやすくポヨンと跳ね返し、壊すことは出来なかった。
「そこのテーブルにある武器はなんでも使っていいぞ。物は試しだ。色んな武器を使ってみろ。一時間以内に武器で人形を破壊さえすれば合格だからな」
「ハァ……ハァ……」
剣を振りすぎて息切れが激しい。とりあえず、別の武器を使ってみることにした。
「何がいいかな……。とりあえず、簡単そうなのにしよう」
ブレイクハンマーという鎚の形状をした武器を手に取ってみた。だが……。
「おっも!!」
持ち上げることはできるが、長時間持つには相当な腕の筋力が必要だ。
さすがはモンスター用のハンマーと言うべきか、柄と頭部が両方共、硬い鉱石で作られている。予想以上に重い武器だ。だが、振り下ろせないわけではない。
「よし! まあいっちょ行ってみるか!」
ブレイクハンマーを持ち上げて人形に向かって走り出し、体重を乗せて一気に振り下ろす。
「どお~~りゃっ!!」
人形に当たった瞬間、ブヨンと潰れて手ごたえがあったように見えたが、人形はそのまま衝撃を吸収し、俺の攻撃をはじき返した。
「うわあ!!」
俺は跳ね返った衝撃で腰を抜かし、武器は吹っ飛ばされ、地面に転がった。人形は上に跳ね飛び、宙に浮いてからゆっくりと地面に着地する。
「これでもダメか。どうすれば壊れるんだあれ……」
仕方なく、ブレイクハンマーをテーブルに戻した。恐らく、今の勢いで破壊できないのであれば、何度やっても無駄だろう。
「次はどれにするか……」
とりあえず、次も簡単そうなのから手に取ってみる。
ソードウィップ。見た感じはただの長剣のようだが、何か普通の剣とは違う所があるのだろうか?
「ソードウィップか、そいつは剣の形をしているが伸縮性のある紐が内部に仕込まれている。柄にあるボタンを押すことでムチと剣の両方に切り替えることができるぞ」
「へえ~ムチと剣か。面白い武器だな」
剣の柄にあるボタンを押してみる。剣先からプシューと空気の抜ける音と共に、剣が分割され、だらんと地面に落ちた。どうやら内部の紐が分割された剣に繋がっており、鉄線のような頑丈そうな紐でできている。
「おお~すげえ。よくできてるな、これ」
分割された剣をジャラララと音を鳴らしながら体の後ろにしならせる。
「じゃあ、いっちょ行ってみるか」
人形に向かって走り出し、走った勢いと共に体を回転させ、遠心力を使って思い切り人形にムチを打った。
「どうだ!」
バヨンと人形はムチをたやすくはじき返した。
「なんでだよ!!」
「フンッ! 当たりまえだ! その武器はただ振るだけでは威力はでない。ムチ特有の振り方を使わないとその人形は壊せんよ」
「くっそぉ! じゃあ次だ!」
次はブーストサイス。人と同じくらいの大きさでできた巨大な鎌だ。
鎌の刃元にロケットのような穴の付いた機械がついている。これはどんな機能なのだろうか。
「そいつは推進装置だ。ブーストサイスはただの鎌ではなく、グリップについているボタンを押すことで刃元についている推進装置が起動し、高速移動を可能にすることで強力な裁断力を持つ。並のモンスターなら一撃で切り裂けるぞ」
「へえ~すごい武器だな。これならいけるかも……よし!」
長い柄を持って人形に向かって走りだし、グリップのボタンを押した。……だが。
「……ん? ちょっ、おわっ!!」
振った瞬間に推進装置の勢いが強すぎて体が宙に浮いてしまった。あまりの勢いに武器から手が離れ、体が投げ飛ばされる。投げ飛ばされた体は人形にぶつかり、ポヨンと跳ねた。ブーストサイスは勢いよく地面に突き刺さり、推進装置は止まってしまう。
「おい、大丈夫か?」
「……いてて、大丈夫です」
教官が心配して駆けつけてくれたが、人形のおかげで少し頭を打っただけで怪我はなかった。
「推進装置を起動するタイミングを間違えたな。起動すると体がすぐに持っていかれる。威力はあるが、技術が必要な武器なんだ。……どうする? まだやるか?」
「いやっ、この武器はやめます」
「そうか、まだ時間はある。無理せず、自分に合った武器を使うと良い」
「ありがとうございます」
とりあえず、地面に刺さったブーストサイスをテーブルに戻し、武器を選ぶ。
「う~ん、どれがいいかな……」
残りの武器は近接武器のジェットランスと、射撃武器のアルターボウガンとカスタムバレルガンか。俺、射撃苦手なんだよな……。
とりあえず、残っている武器で簡単そうなジェットランスを持つことにした。
一見、ただの槍だが、どうせまたなんか機能があるのだろう。
持っていれば教官が説明してくれるだろうから少し待ってみよう。
「そいつはジェットランス。ただの槍のように見えるが、槍の内部に火薬とリールが仕込まれている。グリップのボタンを押すことで内部の火薬が爆発し、槍先を発射するができるぞ。槍先はもう一度ボタンを押すことで内部のリール装置が起動し、槍先に付いた鉄紐が巻き取られることで元に戻すことができる。癖のある使い手を選ぶ武器だな」
本当に説明してくれたよ。説明書でも持っているのか?
まあ、ありがたいからいいけど。
「とりあえず、やってみるか」
試しに、人形にジェットランスを向けてグリップのボタンを押してみた。
ボガンッ! という爆発音と共に槍先が勢いよく人形に向かって飛んでいく。人形に突き刺せば簡単に破壊できると思ったが、人形の背中まで槍先はめり込み、めり込んだ反動でバインッと弾き飛ばされてしまった。
「なんで弾き飛ばされるんだよ!?」
「言っただろ。その人形は防具にも使われている特殊な素材でできたゴム皮だ。その程度で破壊されたら防具とはいえんだろう。そもそも、ただ槍先を飛ばしただけでは威力は落ちる。使い方の問題だ」
「そうはいっても、そういう武器じゃないのか? これ?」
「仕方ないな、どれ、貸してみろ」
ゴッズ教官にジェットランスを渡す。
教官はジェットランスのボタンを押し、地面に突き刺さっていた槍先をリールでガチンと戻した。そのまま武器を構えて人形に狙いを定める。
「よく見てろ」
教官は走り出し、高く跳躍した。人形に飛び乗る勢いを利用し、ジェットランスを突き刺す。ゴム皮が槍先で思い切り伸びた瞬間、グリップのボタンを押して槍先が爆発し、推進力で一気に突き出る。
耐えきれなくなった人形はバン!! と破裂し、見事に破壊された。
「どうだ? わかったか?」
「おおお~」
思わず、拍手してしまった。あの人形がこんなにも簡単に破壊できるとは……。
教官は修練所にある倉庫からハコビモモンガ達を呼び、もう一度ハコモモ人形を用意した。
「やってみるか?」
「じゃっ……じゃあ……」
教官からジェットランスを受け取り、同じように人形に向かって走り出す。
「うおおおおおおっ!!」
人形に飛び乗った勢いを利用して人形に槍を突き刺す。突き刺したと同時にグリップのボタンを押すが……。
「うおあ!!」
ボガンッ!! と槍先の爆発の勢いが強すぎて体が吹っ飛ばされてしまった。槍は明後日の方向に飛んでいき、地面に突き刺さってしまう。
「いててっ……」
どうやら、突き刺すと同時に爆発の勢いに耐えなければいけないらしい。なかなかに難しい武器だとわかった。
「言ったろ? 癖のある武器だと。しかし、おかしいな。普通なら適正武器は一つか二つ、見つかるはずなのだが、こんなにも苦戦している奴を見るのは初めてだ」
え、まじかよ。俺、もしかして才能ないとか……?
「お前、指南訓練をサボっていたのか?」
「指南訓練? 何それ」
「武器指南訓練だ! 幼少期にやっているはずだろ? 武器指南訓練は親か学び舎で教わっているはずだが、何故知らない?」
「えっ!? なんだって!?」
待てよ。ってことは、この世界の人は幼い頃から武器の訓練を!? だから試験が簡単だって言っていたのか! じゃあ俺は……武器の適性が……ない!?
「ま、まあ……まだ武器はある。もしかしたら、射撃武器が合うかもしれんぞ」
「あっ……はあ、じゃあやってみます」
残る武器はアルターボウガンと、カスタムバレルガン。これで適正武器がなかったら、試験失格。いやいや、まだ試験は終わってないんだ。諦める時じゃない。
とりあえず、この中だと簡単そうなアルターボウガンから持ってみた。
「ああ、すまん。射撃武器は的が違うんだ。用意するから少し待っていてくれ」
「わかりました」
「お~い、ハコビモモンガ達ー。射撃武器の的を準備してくれ~」
「はーいだモ~ン!」
ハコビモモンガ達は、ハコモモ人形を片付け、今度は沢山のハコビモモンガの形をした風船を膨らませた。風船は浮いたままだったり、地面に落ちて跳ねたりしている。規則性がない動く的だ。
「ありがとう、ハコビモモンガ達! それでは射撃武器の試験を始める。このハコモモ風船を一分以内に全て落とし切れば合格だ」
「なるほど。で、このアルターボウガンはどうやって使えば良いんですか?」
拳銃のような見た目に弓矢がつけられているただのボウガンのようだが、なにせ、射撃は苦手だ。使い方は聞いておいた方がいい。
「ああ、そいつは拳銃のようにトリガーを引くことで弦にセットした矢が射出される武器だ。更に、弓を折りたたみ、銃身のスイッチを入れることで内部にある火薬庫を発火させ、爆発を利用した強力な矢を射出することができるぞ。だが、武器への負担が激しいため、数発しか打てず、冷却時間も必要だ。まあ、これは変形機構の一種だから今回の武器では使用できないがな」
「なんだよ、使えないのか……」
「まあ、風船を破壊するだけだからな。必要ないだろ」
「それもそうか……よし」
ふわふわと浮かぶハコモモ人形に向かってアルターボウガンの標準を定める。矢をバシュッと射出するが、矢は風船の横を通り抜けていった。
「……あれ?」
もう一度、もう一度と矢を射出するが、風船に当たることはなく、全ての矢を撃ち尽くしてしまった。
「もしかして、お前。射撃をしたことがないのか?」
「いやあ……あはは……えっと……はい……」
だって、今まで殴ることしか考えてなかったし、射撃なんて祭りの射的でしかやったことねえよ……。
「……どうする? カスタムバレルガンも一応使ってみるか?」
「あっ……はい」
ゴッズ教官は修練所の倉庫から鉄のパーツをたくさん持ってきてテーブルに並べ出した。
「これは?」
「いいか、こいつがカスタムバレルガンだ。カスタムバレルガンは素銃と呼ばれる武器にいろんな種類のバレルを組み合わせることで、様々な形態の銃を扱うことができる武器だ。バレルにはアサルトバレル、スナイパーバレル、ガトリングバレル、ショットガンバレル、ランチャーバレルの五種類がある。それぞれ二つまで組み合わせられるぞ。ただし、重量には気をつけろよ。重すぎて扱えなかったら意味が無いからな」
「ってことは、アサルトバレルとスナイパーバレルの二つを組み合わせられるってことですか?」
「ああ、そうだ。他のバレルも同じようにな」
「なるほど、すげえ武器だ」
「とりあえず、最初はアサルトバレルだけで試してみたらどうだ。風船を落とすだけならアサルトだけで充分だからな」
「そっか……じゃあ……」
素銃にアサルトバレルを取り付け、風船に狙いを定める。
「あー言い忘れたが、アサルトバレルは銃身のスイッチで単発とフルオートに切り替えができるぞ」
「わかりました」
単発になっていたスイッチをフルオートに切り替えた。改めて標準を風船に定め、引き金を引く。バババババババッッ!! と、射撃音が響き渡るが風船には一発も弾は当たらなかった。
「くそお!!」
せめて、一発は当てたい! テーブルにあるスナイパーバレルを手に取り、素銃に取り付けた。
「スナイパーバレルはバレルにスコープがついていて、狙いが定めやすい。弾速も早く、貫通力があって威力が高い武器だ。偏差撃ちをほとんどしなくていいから気楽に行け」
「はい!」
スコープを覗き、風船に狙いを良く定めてトリガーを思い切り引く。だが、弾は風船の横をかすめた。
「くそお!」
悔しくて何度も何度も撃つが、全ての弾は不発に終わった。
「お前、射撃のセンス無いんだな……」
「うっ……!!」
悔しさのあまり、泣きそうになる。
そして、修練所の倉庫からハコビモモンガが出てきて、『ピピー!』と笛を鳴らした。
「試験、終了だ」




