第十九話、レイジング・キング・サーモン、討伐!!
足に力を入れる。筋肉がはち切れそうなほど膨れ上がり、地面がえぐれるほどの衝撃で自分の体を蹴り上げた。そのままレイジング・キング・サーモンに突撃する。
「グゴア!?」
俺のあまりのスピードに、レイジング・キング・サーモンは驚愕していた。
だが、もう遅い。俺は既に脇腹に回り込んでいる。
水の中を活かし、体を慣性で回転させ、遠心力を使った渾身の突きを放った。
「どりゃぁ!!!!」
「グガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
レイジング・キング・サーモンは殴られた衝撃で空気の泡を口から出しながら吹っ飛んだ。俺はもう一度地面を蹴り、レイジング・キング・サーモンに近づく。
そのままレイジング・キング・サーモンの顔面にもう一度正拳突きを放った。
「オラァ!!」
「グゴアアアアアアアアア!!!!」
吹っ飛ばされたレイジング・キング・サーモンは自分の身を守るために雷雲を使って全身を包み込もうとするが、それよりも速くぶん殴った。
吹っ飛んだレイジング・キング・サーモンを追いかけてまた殴る。殴る、殴る。
何度も連打を繰り返し、レイジング・キング・サーモンは疲弊していった。
「グ……ゴアアア!!」
さすがに懲りたのか、殴られながらも雷雲で全身を包み始める。
だが、俺は雷雲を気にせず、体が痺れても殴り続けた。
「オラオラオラオラオラァ!!!!」
「ゴガガガガガガアア!!!」
レイジング・キング・サーモンは逃げ出そうと、尾ヒレで俺を弾こうとする。
だが、俺はその尾ひれを両腕で掴み、全身を回転させ、レイジング・キング・サーモンを遠心力で吹っ飛ばした。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「グガアアアアアアアアア!!!!」
吹っ飛んだレイジング・キング・サーモンに向かって、また殴りに行こうとするが、全身に大きな痛みの衝撃が走る。
「くそっ……もうか!」
極みの型の限界が近づいていた。だが、まだ振り絞れる。
俺はレイジング・キング・サーモンに向かって突進し、体の下に潜り込んだ。
構えを取り、集中する。
「うおあああああああああああああああああ!!!!」
足の踏ん張り、腰の角度、腕を引き絞る力。
その全てが放つ拳のためにあるように、全力を拳の先、一点に集中させる。
「食らえ!! 豪魔獣王流、極みの構え、竜殺しの閃撃!!」
放つ拳が顎にめり込む。レイジング・キング・サーモンの体は衝撃で浮き上がり、水上を超えて空まで吹っ飛んだ。
「グガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
俺は追撃をするために足のばねを使って飛び上がる。
体をひねらせて回転しながら腕を引き絞り、拳の先、一点に力を極限まで溜めた。
空中に打ち上げられたレイジング・キング・サーモンに向かって撃ち落とすように全力を解き放つ。
「豪魔獣王流、極みの構え、終末の拳撃!!」
「グゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
レイジング・キング・サーモンの頬に拳が突き刺さり、水に叩きつける。
衝撃で大きな水しぶきが上がった。レイジング・キング・サーモンはダメージを食らいすぎたのか、纏っていた雷雲が剥がれている。
俺は空中で全身が筋肉痛になり、動けなくなった。
「だめだ……。思っていたより、早いな……ちきしょう」
体を預けるように水の中に落ちる。互いに動けず、水の中で横たわっていた。
周りの水がだんだん潮の流れで湖の中に引いていく。
(助かった……窒息するところだったぜ……」
だが、全身が痛すぎてその場から動けない。俺はただ、横たわるしかなかった。
レイジング・キング・サーモンは俺の打撃による拳圧の跡が体中についており、苦しそうに悶えている。
「グゴ……ガァ……」
「へへっ……やってやったぜ……」
俺も体の感覚が無く、動くことすらできない。互いに、戦う余力がなかった。
そう、思っていた。
だが、レイジング・キング・サーモンは苦しみながらも俺に向かってくる。
「おいおい……まじかよ……」
体を回転させ、尾ひれで俺を攻撃した。
「グゴガアアアア!!!!」
「あがぁ!!!!」
腹に強烈な一撃を食らう。勢いよく吹っ飛ばされた俺は受け身を取ることすらできず、ただ転がることしかできなかった。
胃の中がひっくり返ったような気持ち悪さが体を襲い、嘔吐する。
「おえええっっ……」
レイジング・キング・サーモンは少しずつ俺に近づき、また体を回転させた。
「やめっ……」
尾ひれに弾き飛ばされ、そのまま大岩に激突し、体から骨が軋む嫌な音がする。
「うああっ……」
目の前にドサッと何かが落ちる音がした。よく見ると、気絶しているナビィだった。どうやら、ナビィが寝ている大岩にぶつかったらしい。
レイジング・キング・サーモンはゆっくりと俺達に近づいてくる。
「まずい……ナビィ……逃げ……」
レイジング・キング・サーモンは体を回転させ、尾ひれで攻撃を仕掛けてきた。
その時だった。目の前に壁が現れたのは。
「変形機構、巨人の大城盾!!」
「グガアアアアアアアアアアア!!」
ボーガンの変形機構が目の前に広がり、尾ヒレの攻撃を防ぐ。
「すまねえ!イッシン、ナビィ、待たせた!!」
だが、嫌な音がした。威力に耐え切れず、拡張パーツが剝がされてしまっている。
「なんつう威力だ、これを食らい続けたのか!?ちきしょう、死なせねえぞ!」
ボーガンは一旦、変形機構を解除する。攻撃に転じようとするが、レイジング・キング・サーモンの尾ヒレの攻撃の方が速かった。
ボーガンは俺達を守るために盾で攻撃を受ける。
「ぐああああああ!!!!」
威力に耐え切れず、ボーガンは盾ごと吹っ飛ばされた。
レイジング・キング・サーモンは水の塊をボーガンに向けて放つ。
ボーガンは盾で防ごうとするが、水の塊の中には雷雲が入っていた。
「やべえ!忘れてた、まずい!!」
水の塊が盾に直撃した瞬間、雷雲が弾け、電撃がボーガンを襲う。
「あがあああああああああああああああ!!!!」
倒れたボーガンに見向きもせず、レイジング・キング・サーモンはゆっくりと俺達を食べようと口を開ける。口の中に俺達を入れたその瞬間、ボーガンが全身を痙攣させながら起き上がり、大盾を口の中にねじ込んだ。
「うおあああああ!!やらせてたまるかあああああ!!」
痺れた体を無理やり動かしているが、レイジング・キング・サーモンの口を塞ぐので精一杯だった。
「頼む!!フリル、撃ってくれえ!!」
フリルに聞こえるように大声で叫ぶ。だが、フリルには撃てない理由があった。
「ダメです、まだ冷却時間が終わりません!!」
「くそお!!俺が持たせる!!なんとかしてくれえええ!!」
フリルは銃身を見るが、冷却時間のためにカバーが開かれている。
銃身から煙が止まらなかった。
「どうしよう、このままじゃ、お嬢様が……みんなが死んじゃう。早く……早く終わって、お願いだから!!」
ボーガンが必死に耐え続けている。だが、次第にレイジング・キング・サーモンの噛む力に押し負け、体が縮こまっていた。
「くそおおおおおおおおお!!!!」
もうボーガンは限界だった。フリルは考える。今、自分に何ができるのかを。
フリルはレイジング・キング・サーモンに向かって走り出した。
「うわああああああああああああああああああ!!!!」
カスタムバレルガンをレイジング・キング・サーモンの口の中に突っ込み、ボーガンと一緒に噛む力を抑える。
「ボーガン、食べられちゃダメです!!私達で守りましょう!!絶対に!!」
「おう!!」
「やああああああああああああああああああああ!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
レイジング・キング・サーモンの口が開いていく。だが、レイジング・キング・サーモンも負けじと噛む力を強めてきた。
「グゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
必死に二人で抑え込む。その瞬間だった。フリルのカスタムバレルガンから煙がプシューッと出て、カバーが自動で折りたたまれる。冷却時間終了の合図だった。
「終わった!!」
だが、レイジング・キング・サーモンは二人を追い出そうと、口の中で水の塊を生成し始める。
「グガアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「もう遅いです!食らいなさい!!」
フリルはレイジング・キング・サーモンの喉に向けて銃口を向けた。
「変形機構、七竜の激唱!!」
ガトリンングのバレルが回転し、大量の銃弾の雨が撃ち尽くされる。
「グガガガガガガガガガガガガァァ!!!!」
銃弾を撃ち尽くし、バレルの回転が止まって煙が出た。
レイジング・キング・サーモンの口から閉じようとする力を感じない。
フリルはボーガンと共にレイジング・キング・サーモンの状態を確認する。
レイジング・キング・サーモンは白目を向いていた。意識が完全にないことを二人で確認し、討伐完了を確信した。
口の中からナビィとイッシンを外に出し、二人は腰を抜かして倒れる。
「おっ……終わったぁ~~」
「おっしゃぁ~~」
全力を尽くし、力を使い果たした二人。気づけば日を跨ぎ、太陽が昇り始めていた。朝日に照らされながら、しばし休憩をする。
しばらくすると、ナビィとイッシンは目を覚ました。
「あれ、私、どうして寝てるんだろ……?」
「いててっ……ん?」
俺達は手で目を擦る。ぼやけた視界が開けてくると、目の前には大きなレイジング・キング・サーモンの死体とそのそばで寝ているフリルとボーガンがいた。
「あっ!レイジング・キング・サーモン!!」
飛びつくようにナビィがレイジング・キング・サーモンの元へと走り出す。
レイジング・キング・サーモンをペタペタと触り、死体であることを確認した
「討伐完了したの……すごいじゃない!!」
ぴょんぴょんと足を浮かせて喜んでいる。
俺自身も目の前に討伐されているレイジング・キング・サーモンに驚いていた。
「すげえ、討伐したんだな……。あの化け物を」
自分の手のひらを見る。まだ震えていた。
極みの型を使っても、俺の力だけじゃ討伐できなかった。俺はまだ弱い。
まだ成長できる自分と、まだ見ぬ強い敵に俺は笑っていた。
「イッシン。なんでにやけているの?ちょっときもいよ?」
「えっ……」
ナビィの一言に少し心がぐさりとくる。
俺、そんなにキモイ顔をしていたのだろうか。
「ま、とりあえず、レイジング・キング・サーモン討伐完了ね!早速、みんなで解体するわよ!!」
砂浜で寝ているフリルとボーガンが重い腰を上げる。明らかに疲れが出ていた。
「まっ、待ってくれよ、ナビィ。もう少し……休憩を……」
「おっ……お嬢様……私も少し……休憩をしたいです」
「もーしょうがないわね、二人共」
ナビィは顔を膨らませる。コカトリュフの時もそうだったが、ナビィはモンスターの解体になった瞬間、すごく元気になる。何か理由があるのだろうか?
「なあ、ナビィ。なんでそんなに解体したいんだ?」
「えっ、モンスターの解体が好きだからよ?イッシンは好きじゃないの?あのモンスターの肉をそぎ落とす瞬間の快感、部位を切り分けて眺めるあの満足感。まさに、眼福。たまらないわあ!」
「うわあ、変態だあ」
「何よ!好きなんだから良いじゃない!!」
「まっ……まあ、そうだな。でも、みんなが好きとは限らないからさ。ボーガンとフリルも疲れているから解体できる体力が戻るまでは休憩しようぜ」
「うーん。まあ、しょうがないわね。じゃあ、休憩する間にハコビモモンガの発煙筒を出しておくから、レイジング・キング・サーモンを少し食べちゃうのはどう?本格的な調理はできないけど、刺身で食べるくらいならできるんじゃない?」
「あっ……そうか。モンスターの肉は万能肉。捌きさえすればそのままでも食べられるのか」
すると、ボーガンとフリルも喜んでいた。
「いいなあ!食べようぜ!!」
「お嬢様、食べましょう!それなら手伝えます!いえ、手伝わせてください!」
「じゃあ、満場一致ね!レイジング・キング・サーモンの試食をしましょう!」
「やったぁー!」
「うおー!」
みんなで喜び、レイジング・キング・サーモンの試食が始まった。




