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第十八話 極みの型発動!

 目を覚ますと、ナビィが俺の顔を覗いている。俺は地面に倒れていた。水の中におぼれたような感覚が喉を襲う。俺はゴホッと水を吐き出した。


「イッシン! 大丈夫、イッシン!!」


「大丈夫だ」と返事をするとホッと胸をなでおろしていた。


「よかったぁ~。死んじゃったかと思った……」


「状況は? どれくらい寝てた?」


「えっと、一分くらい? レイジング・キング・サーモンは……あれ……」


 ナビィは地面で流動する黒い雷雲の塊を指で差す。恐らく、レイジング・キング・サーモンが全身を雷雲で隠しているのだろう。


 だか、何やら不気味な雰囲気を感じた。


「なんだよ、あれ……。また何か仕掛けてくるのか?」


「わからないわ。でも、イッシンの様子を見て振り返ったら、もうあったのよ」


 黒い雷雲は地面で流動しながら固まっている。


 近づかない方がいいのは確かだが……。


「ナビィはあれをどう見る? 攻撃をするべきか?」


「うーん、そうね……うかつに近づいたら何が起きるかわからないけど、あれだけ雲で固められていたら、狙撃も通用しないわ」


「つまり、うかつに攻撃できないから様子を見るしかないってことか」


 だが、何かが引っかかる。


 どうしてレイジング・キング・サーモンはあんなものを残したのか。


 あの中で傷を癒すために雷雲で防御を固めているのだろうか。だとしたら、逆に攻撃を仕掛ける絶好のチャンスだ。しかし、そうは見えない。


 あれだけ攻撃的だったモンスターが急に回復のために防御を固めるのだろうか。行動に矛盾を感じる。恐らく、何かの攻撃の準備。そう考えた方が自然だ。


 だが、一体どんな攻撃を仕掛けるつもりなんだ?


 その時、空からポタポタと雨が降ってきた。


「……ん? 雨か?」


 ふと、空を見上げた。それがなければ気づけなかったであろう。


 奴は、そこにいた。


「みんな、上を見ろ! 空だ! 空にいるぞ!!」


 全員で空を見上げる。レイジング・キング・サーモンは雷雲を纏いながら夜空に雲を作り続けていた。既に、空には島を覆いつくすほどの雷雲が作られている。


 俺達は地面にある雷雲に気を取られていた。


 つまり、あの地面にある雷雲は完全なるフェイク。


「やってくれたな……!!」


 レイジング・キング・サーモンの作り出した雷雲から、雨が降ってきていた。


 雷雲は空で流動し始め、空気の流れを作り出し、雨風が吹き荒れる。


 周りがまた嵐のような環境になるのにそう時間はかからなかった。


「グゴアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 倒れた木や浜辺にある岩がレイジング・キング・サーモンの口元に集まり、雷雲と共に凝縮していく。雲は渦巻き、やがて全てを飲み込んだ。


 バチバチと雷雲が光り輝き、やがて大きな光の弾となって膨れ上がる。


「なんだあの光!? 大技が来るぞ! どうするナビィ!?」


「あの高さじゃ、私とフリルの攻撃もさすがに届かないわ! 逃げるしかない!」


「でも、逃げるったってどこに!?」


「水中しかないわ。みんなで湖まで走りましょう!」


 湖に走ろうとした時だった。フリルが俺達に叫ぶ。


「待ってください! まだ策はあります!」


 足を止める俺達に、フリルは説明した。


「私のチャージした変形機構を撃ちます。正直、当てられるかはわかりませんが、可能性はあります」


「いけるのか、あの高さでも?」


「わかりません。ですが、逃げてもあの大技を狙って撃たれたら終わりです。なら、迎え撃った方が被害を抑えられるかもしれません」


 ナビィが口に手を当てて考える。


「勝算はどのくらいあるの?」


「五分ですね。正直、賭けだと思います」


「わかったわ。私達の命、あなたに預ける。イッシンとボーガンも、いい?」


「ああ、もちろんだ」


「当たり前だぜ」


「……いいんですか?」


 ナビィはフリルの前に拳を突き出す。


「その代わり、失敗しても後悔しないこと! 私達は、みんなで戦っている。命を預けたんだから、思い切りやりなさい!」


 俺とボーガンもフリルの前に拳を出した。


「任せたぜ、フリル! お前ならやれるさ!」


「俺もだ。ナビィの両親に拾われた命、お前に使われるなら文句はねえ!!」


「……わかりました! 必ず成功させます!」


 フリルはみんなと拳を合わせる。その目は決意に満ちていた。


「では、ボーガンは私の手助けをお願いします。これを撃った後、私は五分間、何もできません。……いいですか?」


「おう、任せろ!」


 フリルは専用の耳栓を耳にはめ込み、武器を構える。


 腰を低くして照準を合わせ、狙いを定めた。銃身の脇についているスイッチを押し、銃身のホイールが青白い光りを出しながら回転していく。


 高速回転するホイールからキュイイイインと高い音が鳴り響いていた。


 回転の速度がどんどん早くなっていく。


 次第に、銃身から出ている青白い光も強くなっていった。加速が限界まで達し、カスタムバレルガンによる負荷でフリルの体が振動し始める。踏み込んだ地面がめり込んでいくほどの負荷に俺達は心配した。


「大丈夫か? フリル!」


「はい。ギリギリですが、なんとか!!」


 俺達は全員でフリルの体を支える。上空に撃ち出すため、重心が不安定になってしまい、予想よりも負荷が大きい。


「くそっ、標準がぶれる……!!」


 だが、先に攻撃を撃ち出したのは、レイジング・キング・サーモンの方だった。


「グゴオアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 大きな怒号が鳴り響き、バチバチと電撃が流れる強烈な光の弾丸が、光線となって降ってくる。空気が歪み、轟音と共に見えない圧力で押し潰されそうだった。


 その時だった。ボーガンがみっともなく泣き叫び始めたのは。


「おいおい、本当に大丈夫だよなこれ! やっぱ逃げた方が良かったんじゃないかなあ!!」


「ちょっと! あんたさっきまで、拾われた命、お前に使われるなら文句はねえってかっこつけてたでしょ!!」


「でもよお!! 怖えもんは怖えって!!」


 フリルは震えた体で安定しないまま、光の弾丸の中心に照準を定める。


「みなさん、いきます!! 耳を塞いでください!!」


「たのんだ!」


「がんばってフリル!!」


「早く撃ってくれえ! 怖えよお!!」


 フリルの変形機構は、専用の巨大な銃弾をアサルトバレルにはめ込み、銃身についたホイールが高速回転することで超強力な電磁力が発生する。それにより、銃弾に大きな加速力が付与され、その弾速は極超音速による究極の一撃を放つ。


「変形機構、超速雷鳴砲(アクセラレールガン)!!!!」


 一瞬、空間が止まったような気がした。


 空気がひりつくようなピー……ンと、小さな耳鳴りのような音がする。


 その一瞬が過ぎ去った瞬間、銃口から凄まじい爆発音と共に、大きな衝撃が空気を震わせた。電撃を纏った加速する銃弾がエネルギーの光線に衝突し、空間を歪ませる。フリルの放った弾丸はエネルギーの光線をあさっての方向にはじき返し、レイジング・キング・サーモンの胸びれに着弾した。


「グゴアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 胸ビレが焼き切れ、レイジング・キング・サーモンは悲鳴と共に、落下し始める。


「よっしゃあ!」


「やったわね、フリル!」


「さすがだぜ!」


 だが、喜ぶのもつかの間、フリルの銃身のカバーから煙が出始めた。


 ここからしばらくの間、フリルは冷却時間で攻撃ができない。


「撃ち落としましたが、当たったのは胸ビレだけです! 私はボーガンと一緒に退避しますので追撃をお願いします!」


「わかったわ!」


「おう!」


 凄まじい勢いで空から落ちてくるレイジング・キング・サーモンの落下地点を予測し、俺とナビィは位置につく。レイジング・キング・サーモンはかなりのダメージを受けたはず。ここで追撃できればかなりのアドバンテージだ。


 だが、レイジング・キング・サーモンは落下しながら水の塊を連射してくる。


「私はあの水の塊を撃ち落とす。イッシンは攻撃の準備を!!」


「わかった!」


 ナビィは降ってきた水の塊を矢撃で撃ち落とす。


 だが、レイジング・キング・サーモンは口から雷雲を地面に吐きだした。


「うおあっ!!」


 俺とナビィは地面に落ちてきた雷雲に触れないように離れる。


 レイジング・キング・サーモンはそのまま雷雲に着地した。


 そのまま雷雲を纏って空を飛ぼうとするが、少しふらついている。


 フリルの攻撃で胸ビレが焼き切れたせいか、姿勢制御が上手くいっていない。


「あいつ、上手く飛べないのか?」


 飛ぶことを諦めたのか、空中から歯をむき出しにしてナビィに襲い掛かる。


「まずい、ナビィ!!」


「やばっ!!」


 ナビィは迎撃しようと矢を放つが、レイジング・キング・サーモンは口から雷雲を作り出し、矢は吸収されてしまった。


 そのままナビィに向けて押し付けるように雷雲を放つ。


「えっ……」


 死を悟ったのか、ナビィの動きが一瞬止まる。


 俺はシューズの爆雷石を爆発させ、ナビィの前に飛び出した。


「とどけえええええええ!!!」


 だが、雷雲は俺の前を通り抜け、ナビィに直撃する。


 雷雲が弾け、バチバチと青白い光がナビィの全身を包んだ。


「きゃあああああああああああああああああああ!!!!」


「くそがあああ!!」


 俺はナビィを食らおうとするレイジング・キング・サーモンを蹴り飛ばす。


 雷撃を食らったナビィを抱えた。


「ナビィ、大丈夫か!!」


 全身から焼け焦げた匂いがする。ナビィの体を揺らすが、返事がない。


 恐らく、生きていたとしても失神している。生きているのかを確認しようにも、レイジング・キング・サーモンは追撃の突進をしてきた。


「グゴオオオオオオオオオオオ!!!!」


「やらせるかあ!!」


 俺はレイジング・キング・サーモンの前に飛び出す。


「グゴア!?」


 逆に近づいてくることを予測できなかったのか、奴の不意を突けた。


 飛び出した勢いを利用しながら構えを取る。腕を引き絞り、力を込めた。


「豪魔獣王流、戦騎(せんき)(かま)え、戦乙女(ヴァルキュリア)()剛弓(ブレイク)!!」


 レイジング・キング・サーモンの鼻に渾身の一発を食らわせる。


「グオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアア!!!!」


 だが、レイジング・キング・サーモンは怯まず噴気孔から大量の水を吐き出した。


「なんだ!? 津波!? やべえ、ナビィ!!」


 ナビィの体を抱きかかえる。だが、あまりの波の勢いに俺達は押し流された。


「うおあああ!!」


 ナビィが水を飲み込んで溺れないように顔を水面に上げる。


 あっという間に水が島を埋め尽くした。


「くそっ、とりあえずナビィを安全な所に!」


 自分の周りで、安全な場所を探す。


 辺りを見渡すと、人を一人寝かせられそうな大岩を見つけた。俺は大岩まで泳ぎ、ナビィを寝かせる。首の頸動脈を確認すると、まだ鼓動を感じられた。


「よかった、生きてる。とりあえずは安心だ」


「グオアアアアアアアアア!!!!」


 だが、安心したのもつかの間、レイジング・キング・サーモンの声が聞こえる。


 俺を見つけ出し、突進を始めた。水中にいるからか、地上にいる時よりも速い。


「やるしかねえか……」


 ここぞという時、まさに今がそれだろう。俺は極みの型を発動させる準備に入る。


 極みの型は発動させるのに条件がある。


 俺は思い出すために昔、道場で教わったじいちゃんとの記憶を探った。


『いいか、イッシン。極みの型はな、全神経を反射で動かす技じゃ』


『反射で動かす? 何を言っているんだ? じいちゃん』


『まあ、見とれ』


 じいちゃんは一瞬、目を瞑る。その瞬間だった。


 目にも止まらぬ速さでじいちゃんは俺の前に立ち、俺の額を指で弾いた。


 バチンッと強烈な音が炸裂し、俺の体はただのデコピンで吹っ飛ばされる。


『いってええ!! 何すんだよ、じいちゃん!!』


『今、わしの動きが見えたか?』


『えっ……』


 確かに、じいちゃんの動きは見えなかった。それに、ただのデコピンで体が吹っ飛ばされる程の威力。さすがに俺もデコピンで吹っ飛ばされたのは初めてだった。


『これが、反射の力じゃ』


『どういうことだよ? すげえのはわかったけど、もっとわかりやすく説明してくれ』


『うむ、イッシン。お前は今、全ての動きを意識しながら使っておるな。じゃがな、それだと力が制限されてしまう。意識をせずに行動をすることができれば、力の制限がなく、本来の力が出せるのじゃ』


『それが、反射ってことか?』


『そうじゃ。いいか、イッシン。反射を理解するためには、体の反射がどういう状態になると起こるのかを理解する必要がある』


『反射の瞬間? あれかな、熱湯が入ったやかんを手で触った時とか?』


『うむ。それもそうじゃが、もっと概念的な物じゃ』


『概念的な物?』


『死の瞬間じゃ。人間の脳は死の瞬間を感じると、体の反射が起こる。五感と同じじゃ。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。これらは死なないために存在しておる。目の前が見えなければ死んでしまうから視覚があり、音が聞こえなければ危険を察知できないから聴覚があり、触れた感触がなければけがをしてしまうから触覚があり、味が無ければ食べられないものを食べてしまうから味覚があり、匂いがわからなければ危険な場所にいるかがわからないから嗅覚がある。それと同じように、反射とは脳の力の制限を受けずに全力で死の危険から避けるためにある人間の最終防衛装置なんじゃ』


『へー……そういうことか。確かに、熱いやかんに触れた時とか、反射で体を動かす時って、すごいスピードで動くよな』


 確かに、さっきのじいちゃんのスピードはそれに似た速さを感じた。


 まるで、頭で考えずに動いているような、まさに瞬足。


『でも、どうやってその反射を自分の動きにするんだ? さっきのじいちゃんは、確かに反射と同じくらい素早い動きだった。でも、意識しないで動かなきゃいけないんだろ? どうやってやっているんだ?』


『それはな、反射する瞬間を脳にスイッチとして記憶させるんじゃよ』


『脳にスイッチ?』


『いいか、一心。ルーティーンというのを知っておるか?』


『ああ、あれだろ? なんか、スポーツ選手が試合の前にやる、パフォーマンスを上げるためのやつ。ポーズを取ったりとかそういう……あれ、意味あるのか?』


『うむっ。あれこそ、脳のスイッチを入れるためにやっとるんじゃよ』


『あんなルーティーンなんかで? ほんとかよ?』


『一心。ルーティーンをなめるでない。そうじゃな。例えば、お前も格闘家ならわかると思うが、常に百パーセントのパフォーマンスを必ず出すことは可能か?』


『いやっ、それは無理だろ。必ず、どこかしらで不調になることはある。どれだけ訓練していても、その日の体調にならねえとわからねえ』


『じゃが、このルーティーンをすることで毎回、百パーセントとはいかずともそれに近いパフォーマンスを出せることができるようになると言ったら、どうじゃ?』


『まじか……それは結構すごいな。メンタルとかちょっとした指の動きでさえ、パフォーマンスは落ちる。それを毎回百パーセントに近い状態で出せるなら、それはすごいことだ』


『では、なぜ百パーセントに近いパフォーマンスが出せるのか。それは訓練した動きであるルーティーンを脳にスイッチとして記憶させておるからじゃ』


『えっと……それってつまり、百パーセントの動きが毎回出せるように、ルーティーンをすることで、思い出しやすくしているってことか?』


『まあ、簡単に言えばそうじゃな。そしてこれはわしが行った反射の動きにも同じことがいえる』


『ってことはつまり、反射の動きをルーティーンで脳に記憶させて、いつでも出しやすくしているってことか』


『正解じゃ』


『でも、じいちゃんはいつルーティーンなんてしたんだ? 何かのポーズを取ったようには見えなかったけど』


『うむっ。わしがしたルーティーンはな、目を瞑ることじゃ』


『目を瞑る……それだけで!?』


『そうじゃ。ただし、他の動きなら目を瞑らなくとも、ポーズさえとればルーティーンはできるのじゃが、この反射の動きに限っては必ず、目を瞑るという行為をルーティーンにしなければいかん』


『えっ、なんで?』


『一心、思い出してみるんじゃ。日常生活で反射をした時、お前は必ず目を瞑っとらんか? 熱いやかんに触った時、手を引いた瞬間、目を瞑ってはおらんか?』


『……確かに。目を瞑っている。でも、なんで?』


『それはな、視覚という情報が邪魔じゃからじゃよ。人間が一番情報を処理しておるのは視覚じゃ。反射には大きなエネルギーがいる。なんせ、脳の制限を超えた力じゃからな。無駄なエネルギーを視覚に使っておると、発動はできん』


『そうか。でも、だとしたらずっと目を瞑ってなきゃいけないんじゃ?』


『お前さんは熱いやかんに手を触れた時に、ずっと目を瞑っておるのか?』


『あっ、瞑ってない……』


『そうじゃ。必要なのは力を出すタイミングの一瞬だけ。脳の制限を外す、ほんの一瞬だけじゃ。ただし、その瞬間は必ず目を瞑らないといかん。そのルーティーンによる反射のスイッチを何度も訓練するんじゃ。そうすれば、反射を使いこなせるようになる』


『すげえ、そういうことか。それが、反射をつかいこなすからくり……』


『うむっ。更に、わしの場合はその反射を全身で使っておる。全身の力が反射を利用して限界を超えた瞬間に、それを強引に維持し続けておるからの。それが極みの型じゃ』


『うええ、さすがはじいちゃん。バケモンだな。まあでも仕組みはわかった。つまり、反射で脳の制限を外して全身の力を出す。その後でその力を強引に維持して、全身を常に反射で動かすってことか』


『そういうことじゃ。極みの型はかなり危険の伴う技じゃ。なんせ、限界を超えた力じゃからな。脳が制限していない分、体力の消耗が激しい。使った後は全身が筋肉痛で動けなくなると思え。お前が使いこなせるようになったとしても限界で三分じゃ。それ以上使えば、体が壊れるぞ。わかったな』


『わかったよ、じいちゃん!』


 それから、俺は何度も特訓して極みの型が使えるようになった。


 ただし、使った後は全身が筋肉痛で半日以上動けなくなるおまけつきだ。


 簡単に使っていい技ではない。


 だが、ナビィを守りながら水の中を超高速で泳いでくるレイジング・キング・サーモン相手に、出し惜しみはできない。無理を承知でやるしかない。


 俺は目を瞑り、呼吸を落ち着かせる。


 真っ暗な視界の中、全神経を反射の動きに集中した。


 思い出せ、反射の瞬間を。全身で反射するんだ。スイッチを入れるように。


 カチッと。スイッチが入る感覚、その瞬間、全身の力を一気に出す。


「うおあああああああああああああああああ!!!!」


 全身の筋肉が膨れ上がるように大きくなる。その瞬間、力が維持できるように出し続けた。徐々に体が慣れ始め、全身の筋肉が絞られていく。


「豪魔獣王流、(きわ)みの(かた)無我天翔(むがてんしょう)!!」


 五感が鋭くなったような、まるで全身のオーラが感じ取れるような不思議な感覚。この感覚にはまだ慣れないが、明らかにいつもよりも力が出しやすい。


「いくぜ、レイジング・キング・サーモン!!」


「グゴアアアアアアアアアアア!!!!」

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