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悪役に応募した三流役者。異世界での雇用でした  作者: バッド
2章 アカデミー

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56幕 長い一日が終わる

 ━━ローザとウサデスのバトルも佳境を迎えていた。


「おのれぇぇぇ、このウサデスを倒すとはぁ」


 不死王リッチ。死の概念を司るハデデスに仕える魔物はローザに倒されそうになっていた。プルプル身体を震わせて、もはや虫の息だ。


「ふふん、わたくしの召喚獣の前には、リッチといえども雑魚ですわね。なかなかやりましたけど、ここまでです」


 ローザは髪をかき上げて、得意げに胸をそらす。激しい戦闘であったが、召喚獣にして魔犬ヘルハウンドのとどめの一撃が効いたのだ。


 ウサデスはヘルハウンドに咥えられてカジカジ齧られていた。ヘルハウンドは骨が大好きで、4メートルの巨大な体躯を持つので、その大口にウサデスの大きさはちょうど良かったので、尻尾をブンブン振ってご機嫌だった。


「さぁ、ヘルハウンド。ウサデスとやらを噛み砕きなさいな。これにて終幕です!」


「わぅぅ」


 ローザが手を振り命令するが、ヘルハウンドは聞こえないふりをしてソッポを向く。お気に入りの骨なので、少しずつ齧るつもりなのだ。


「ヘルハウンド、とどめです! と、ど、め!」


「わぅん」


 ローザがヘルハウンドへと近づき命令を再度出すが、ローザとは反対の方向に顔を背けて命令を聞かない犬である。ペットあるある、自分の好きな物を取り上げられようとすると、ソッポを向いて聞こえないふりをするのだ。


「こら、ならわたくしがとどめを刺すから、その骨っころをよこしなさい、この、離しなさい、離しなさいったら! この、ぬぬぅぬぅぅ」


 ウサデスを掴んでヘルハウンドから引き離そうとするローザだが、絶対に離さないぞと、ヘルハウンドはウサデスを噛み、四肢を踏ん張り唸り声をあげる。尻尾もペタンと萎れさせて、不機嫌モード。こうなると犬は絶対に言うことを聞かない。


 ローザも顔を真っ赤にして力を入れるが、基本的なステータスが違いすぎてびくともしない。


「リッチを倒さないといけないのっ! ここでこんなことをしている時間はないのですよ? ほら、貴方たちも手伝って! リッチスレイヤーになれるかどうかの瀬戸際ですわよ?」


 自分1人ではリッチを引き離せないと自覚して、周りの暇そうな生徒たちに一縷の望みを持ち顔を向ける。


「え~っ。ペットはそうなると言うことを聞かないよ」


「下手したら噛まれるから放置で良いんじゃない?」


「その子の頭撫でても良いですか? 大型犬って可愛い」


 やる気ゼロ%の仲間たちであった。


 そうして、ローザ対ヘルハウンドの綱引きバトルに変わっていたのだが━━。


『警告。警告。自爆プロトコルが発動しました。30分以内に退避してください。繰り返します、自爆プロトコルが発動しました。30分以内に退避してください』


 突如として放送が響き、その不穏なる内容に皆が驚く。隔壁が自爆プロトコルにより、すべて解除され窓のシャッターも開放されていく。


「これはなんですの!? 一体なにが起きたと?」


「くくく、どうやらハデデスの仲間が上手くやったよううさね」


 動揺するローザたちにウサデスが含み笑いをする。頭蓋骨にヒビが入り、もう虫の息のはずなのにまだ余裕があるリッチだ。


 その余裕の態度に、ローザも時間稼ぎをされていたのだと気づく。派手に出現したウサデスは、校内に残る生徒たちを引きつけて、その間に本命がなにかしらろくでもないことを画策していたのだ。


「くくく、それではお別れの時間うさね」


 ウサデスは含み笑いをすると、スクロールを手にしたちっこいお手々をヘルハウンドの口の中にいれる。その行動の意味を悟り、慌てるローザ。


「ヘルハウンドッ! 本当に離しなさい。それは危険な━━」


「遅いっ! 爆凍せよ」


爆凍氷バーストアイス


「ぎゃうんっ」 


 ヘルハウンドの体から中から膨れ上がると氷の氷柱が喰い破り、爆発し凍りつく。ウサデスは床に降り立つと、素早く走り出し、窓枠に足をかける。


「ふははは、ローザとやら面白い戦闘であった。うさは力の2割程度しか出してなかったがな」


「なんですって! お待ちなさいリッチ!」


「ふふふ、残りの8割のスクロールはパクるから間違いないうさ」


 ウサデス、貰ったスクロールを横領する気満々の模様。なのでローザとの戦闘も最低限のスクロールしか使ってなかったりする。


「では、アデュー。また会おう、ローザ・泉! うさぁァァァァァァァァ」


 そうしてツルッと足を滑らせて、窓から外へと落下していくウサデスであった。


「くっ、謀られました。皆さん脱出を━━ええっ、皆既に逃げてる!? ちょっと置いてかないでください! 少し薄情ではなくて!?」


 劇の世界の住人は危機管理はバッチリであり、放送を聞いた時には身体が自然に動き、とっくに避難しているのであった。


 慌ててローザも窓から飛び出して、人型の穴を地面に作って脱出できたと言おう。


          ◇


 時間は少し前に戻る。


「このコンテナの中身、全部高価な素材やアイテムばかり! これは上級薬草、こっちは金の針か。束になってしまってあるよ!」


「ここはどうやらアカデミーの素材置き場みたいですね、カナタさん」

 

 セイと2人でコンテナを開けて狂喜のダンスを踊る美少女だ。立ち並ぶコンテナの中身はなにかなぁと、学術的興味から覗いてみたら、大量の資材であったので喜んでます。


 なので、アイテムボックスに次々と入れていきます。ここはアカデミーの宝石箱だぜぇ。


「全部盗んで大丈夫なんですか? バレないです?」


「魔王オルクスが全て呑み込んでしまったんです。もう消化されて、コンテナは全てなくなりました」


 けろりと答えて、オルクスの死体をみる。


「本当はオルクスも『記憶喰メモリーイーター』をしておきたいですが、今の僕はスロットが埋まってますからね。残念ながら捨てていきます。その代わりにと言ってはなんですけど、暴食の権能が全てを引き起こしたと言うことにします」


 学長とレルム、そしてクオーン・シンと、スロットは埋まっている。どれも使い勝手が良いので、残念ながら上書きは止めておく。


「今回の報酬のポイントでスロットは増やせそうですのに、残念でしたねカナタさん。小生も心苦しく思います」


「欠片も思っていないことを口にしないでください。まぁ、どちらにしても死骸は残さないとコンテナが無くなった理由が無くなっちゃうから、吸収はしませんでしたけど」


 全てのコンテナをアイテムボックスにしまって、パンパンと埃を落とす。むふふ、これだけあれば億万長者は確実。資材を全て失ったアカデミーに売りつけても良いだろう。お金に困っていたので助かるよ。


「……カナタさん。美少女がしてはいけない顔をしてますよ? 悪魔令嬢にしか見えないですよ?」


「そこは悪役令嬢と言ってくださいよ。悪魔令嬢とか、言葉の響きが良くないです」


 胡乱げな視線を掻い潜り、部屋の奥を見てニヤリと嗤う。そこにはポツンとドアが設置されていた。


 サーバーにダイレクトに接続できる最終管理権限の持ち主しか入れないセキュリティルームだ。


 学長の虹彩認証も、魔力パターン認証も、パスワードすらも、厳重なはずのセキュリティは僕には意味がない。


「チェンジ学長」


 学長に変身すると僕はセキュリティルームに侵入するのであった。


 中は端末が1台だけポツンとあって、奥にはサーバーが置かれている。魔法電子システムを使われているため、サーバー自体が青く光っているのがファンタジーな光景だ。


「デュパンデュパン〜。むふふ、お愉しみの時間だぜぇ、次元神」


「誰が銃使いですか、誰が。そのセリフを口にすると大体失敗する結末になりませんか?」


「たしかにそうかも。それじゃ怪盗キットカットの方が良い?」


「あれは推理ものなのに、全てを無意味にするチート持ちだからいいかもですね」


 ツッコミをするセイへと笑みを向けつつ端末を起動する。すぐにモニターが光り、ポチポチとパスワードをいれると、全ての管理権限が解放された。


 キーボードのカチャカチャと鳴る音を心地よく思いながら、内容に素早く目を走らせる。


 校内行事予定。


 資材管理。


 セキュリティ。


 裏事業。


 ポイント管理。


「ポイント管理、これですね」


「なんか変な項目ないです?」


「他のは全部魔法USBに入れておきます。それよりもポイントですよ」


 パキリと指を鳴らすと、僕はポイントを操作する。


『クエスト・呼吸をしろ。報酬1億ポイント』


 クエスト内容を設定すると、僕の眼の前にボードが浮かび上がる。もちろん、今設定したクエスト内容だ。


『呼吸をしました。おめでとうございます、報酬として1億ポイント入手』


 そして即クリアしちゃうのだった。やったね、これならもうポイントを稼ぐ必要はないね。


「うわぁ、ドン引きのクエストですね、これ。もう全生徒へと配布したのですか?」


「もちろんです。これで序列争いも虐めや弱いもの狩りがなくなり、平和的な解決。さすがは聖女と言えるでしょう。この功績を表に出せないのはとても残念です。ですが、誰も見ていない所で頑張るのも聖女としての心得。仕方ないですね」


「そこまで自身の行動を正当化するカナタさんは、本当に役者だったのか本体に問い合わせをしたいところです」


 そっと頬に手を添えて、ため息をついちゃう。


 とはいえ、あとは脱出するのみだ。


「証拠隠滅はどうするんですか? 端末の横にある赤いボタン押します?」


 なぜか端末横にあるどでかい赤いボタン。自爆ボタンとも書かれてます。ここは秘密の研究所なのかな?


「押しませんよ。ログを消せば良いんです。サーバーをフォーマットし、復元不可能となるようにゴミデータでプログラムを全て上書きします、そのための魔法USBも持ってきました」


「手際良すぎます。本当に役者だったんですよね?」


「まきゅ」


 ポチリ。


 なにか嫌な音がしてボタンを見ると焦げて毛皮がアフロになっているマーモットが赤いボタンを押していた。


「ボタンって押したくなるまきゅ?」


 ……。


 …………。


 ………………。


『自爆プロトコルが発動しました』


『警告。警告。自爆プロトコルが発動しました。30分以内に退避してください。繰り返します、自爆プロトコルが発動しました。30分以内に退避してください』


 マーモットの虚無の瞳を見て、セイと顔を見合わせて、コクリと頷く。


「地下から脱出!」


「やっぱりこうなりましたか!」


「置いてかないで〜」


          ◇


 入学式初日。アカデミーの学舎は吹き飛び跡形も無くなった。


 そうして長い一日は終わりを告げたのであった。


 恐るべきハデデス教団。今後、最高金額の賞金がハデデス教団に掛けられるが、それは後日の話。

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― 新着の感想 ―
更新乙 うさぎと違いマーモットなんて仲間にするから~ 今からでも焼肉にするしかない!!
入学初日に消し飛ぶ学校。これはひどい
ルックスYに続き、破壊される学舎w
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