55幕 オルクスとのバトル!
魔王オルクス。暴食の大罪を持ち、食べた相手の力を完全に吸収する恐ろしき魔王。
間抜けにもロボットを食べてしまったため、暴食が無効となったアホな豚さんともいう。されどプラズマエンジンとやらを内蔵し強力な火器を装備しているアンドロイドとなったので、僕にとってはかなりの脅威だ。
「なぜこちらに来たのだね? ここの奥には生徒たちはいないと思うのだが?」
隠されたカードキーを探してパスワードを入れて起動させたエレベーターで地下施設に訪れていたカナタは、リッチの姿で目の前にいるオルクスへと胡乱げな視線を送る。
きっと今頃はウサデスと戦闘をしていると思ってたのに、エレベーターの上に乗って突然追いかけてきたのだ。ガコンと衝撃が走るとエレベーターは地下に着くなり落下。ギリギリ脱出した僕の後にオルクスが姿を見せたのだ。
「お主がそそくさと柱に隠されたエレベーターに入るのをみて、本能がエレベーターを追えと囁いたのだ。なぜか儂にもわからんが」
オルクスは首を傾げているが僕にはわかる。研究所脱出のイベントには突然現れる化け物がつきものだからね! 特にエレベーターなんて格好のイベントシーンだ。
劇の世界の業に歯噛みしつつ、心の片隅では納得してしまうカナタです。
地下施設は体育館のように広く、天井も高く、多数のコンテナが置かれていて迷路のようになっていた。恐らくはこの奥がセキュリティルームなのだろう。
どう考えてもろくなことをしていなさそうな気がする施設だし、なんならボス戦のために用意された施設にも見える。さすがは劇の世界である。
ウサデスに任せようと思ったけど運命は僕を見逃してくれなかったらしい。ウサデスに渡した数々のスクロールに費やしたポイントを返してほしい。500000ポイントもかかったんだぞ!
「我はこの通りリッチよ。戦う必要はないと思うのだが?」
「天に太陽は2つ昇らず。本能がここで暴れるのは1人でよいと囁くのだ。貴様はここで殺す」
クワッと目を見開き、いや、バイザーが赤く光ると、オルクスは咆哮する。
「貴様を殺せと囁くのだ! できるだけド派手にバトルをして、この魔王オルクスの復活を人類に知らせろと!」
その囁く人って邪神じゃね?
「ならば仕方あるまいて。この不死王ミダスの前に立つ愚かさを教えてやろう!」
仕方ないので、オルクスとバトル開始!
◇
「闇よ、矢となり敵を穿て!」
『ダークアロー』
ホネホネの指をオルクスに向けて、闇の矢を撃つ。冥府術はこの2年間できっちりと覚えている。初級魔法など造作もない。
天井からの明かりで煌々と照らされる地下層。しかしそれでも闇色の矢は見にくく、その速さもあり視認は難しい。
「ぶもぉん! プラズマシールド!」
豚鼻を蠢かし、オルクスは超光熱にて形成されたプラズマドームを自身の周りに展開させて対抗する。そのドームは触れればプラズマにより一瞬で燃え尽きる威力を持っているので、オルクスも余裕を見せている。
「ふ。愚かな豚よ」
その選択肢は予想通り。僕は薄笑みにて、プラズマドームに向かう闇の矢を見守る。疾走する闇の矢はプラズマドームに命中し━━。
あっさりと貫いて、オルクスの豚鼻に炸裂した。
「ぶっひぃ!?」
魔法を喰らったというよりも、プラズマドームをあっさりと貫けれたことに驚いたオルクスは動揺して身体を仰け反る。
「ふ、我が唱える魔法は正確無比よ。プラズマドームの僅かな隙間を見極めて、小さな穴があることを見抜いたのだ!」
「くっ、エネルギー吸収型の闇属性だからか!」
「予想してたんなら、驚くフリを見せるとかやめてくれない? 嘘をついたのにバレバレで恥ずかしいじゃんね」
せっかく違う手段でプラズマドームを無意味にしたかのように見せかけたのに、あっさりとばれーてーら。
まぁ、魔法使いにとっては簡単に思い至るから期待はしてなかったけどね。物理系防御はこの世界では弱すぎるのだ。だからこそ、ロボットもあっさりと壊されたんだけどさ。
「プラズマシールドは無意味か。だぁが、プラズマエンジンは攻撃にも活用できるのだぞ?」
背中についている4枚のウイングバインダーのスラスターから炎が噴き出ると、加速して空中を飛ぶオルクス。
「マイクロプラズマァミサァイル!」
そして背中に搭載されたマイクロプラズマミサイルを撃ち放ち、16連装のミサイルは噴煙を残し、カナタへと向かってくる。
「なんか魔王に似つかわしくない攻撃方法ですね、カナタさん」
「同意するけど、あれを受けるのはヤバい!」
セイの気楽そうな声を無視して、印を組むと魔法を使う。
「闇よ、空をか、ヤベ、中略!」
『闇の翼』
背中に闇の翼を形成すると、カナタは床を蹴り空へと逃れる。身体が浮遊感でふわふわして、急加速により風圧により押し付けられる。
「このミサイル、誘導タイプか!」
ミサイルは地上スレスレで急角度で曲がると、カナタを追尾してきてしまう。加速するミサイルを前にカナタも翼に魔力を注ぎ、旋回する。
「このっ!」
コンテナスレスレに飛び、ミサイルが追いつく寸前に身体を翻す。何発かのミサイルはコンテナに命中し爆発し、轟音と共に破壊されたコンテナの金属片が宙に舞う。
それでもまだ残るミサイルは多い。
(闇の防御を使っても無意味なんだよなぁ。エネルギーは吸収できるけど、吸収している間に加速したミサイルは通過して爆発するだろうし。冥府術って、物理系防御は弱いからなぁ)
「まぁ、それならそれで方法はある。不死王の力を侮ってもらっては困るぞ、豚魔王」
『シャドウブリンク』
闇の分身。要はデコイを作るとミサイルへと迎わせて、ミサイルは本物と錯覚し、次々とシャドウブリンクに命中すると爆発していく。
「ちっ、誘導型は魔法と相性が悪すぎるか! ならば、ビームで焼き尽くしてやる!」
オルクスは舌打ちすると、カナタを追撃してきてショルダーキャノンで狙ってくる。プラズマが空中で放電し、煌めく閃光が地下空間を激しく照らす。一条の光線はカナタを追いかけて、コンテナを薙ぎ、床を溶かし、焼き尽くさんとする。
「厄介な武器を! え~と、闇よ、敵を追いかけ食い尽くせ」
『闇烏』
カナタは旋回しプラズマビームをギリギリでかわしながら、闇のカラスを生み出すと、オルクスへと反撃をする。漆黒の翼を広げて、カラスはオルクスを啄もうと襲いかかっていく。
「チィッ、厄介な魔法を!」
プラズマビームの射撃を止めて、オルクスもスラスターを吹かせて横にずれると、手に炎の剣を生み出す。
「ぶもぶもぷも!」
炎の剣にて接近する闇のカラスを斬りながら、空を飛ぶオルクス。闇烏は敵の精気や魔力を吸収する魔法だ。プラズマエンジンから生み出されるエネルギーも吸収されるので、今のオルクスにとっては致命的な魔法てあった。
ロボットを吸収したため大幅に弱体してしまったアホな魔王である。
「魔力を使わずとも肉体を強化できるエンジンなので便利と思ってたのだがな。だが、プラズマエンジンに肉体強化を任せている分、魔力を攻撃に使えるのだよ!」
『火炎魔王剣』
炎の剣の炎がおどろおどろしい闇を纏い、さらに凶悪さを増す。恐ろしいほどの魔力が込められて、一目で危険だとわかる。
「この火炎魔王剣は身体を焼くだけではない。魂すらも焼き尽くす地獄の剣。掠るだけでも命取りよ!」
「ならば当たらなければよいだけなのだろう?」
『冥府剣』
カナタも闇の剣を作り出して、オルクスへと接近すると剣を振るう。
ガツンと衝撃が走り、鍔迫り合いをする。魔王と不死王の身体能力は同等のようで、お互いにまったく押されることはなく、カナタは剣を引き戻すと、蝶が舞うようにヒラヒラと剣を振るっていく。
オルクスの剣撃は直線的なもので、威力と速度はあっても、カナタの振るう剣は受け流し続けて、身体に触れさせることはない。
「骨の化け物の癖に魔法だけではなく、剣を使えるのか!?」
「昨今の不死王は剣も覚えるのだよ!」
お互いに引くことなく、剣を振るい終わりのない打ち合いを続けていく。
2人は均衡しているように見えるが、実のところカナタは焦っていた。
(レルムの肉体は強力だけど、そろそろ魔力が残り少ない! 回復する隙はなさそうだし、どうしよう)
カナタはレルムの肉体を十全に使えるし、魔法も全て使用可能だ。だがそれも魔力あってこその話である。本来のレルムの魔力よりも数段階も低いカナタでは長期戦は無理であった。
なので内心は冷や汗塗れのカナタであったが、オルクスも焦っていた。そのため、長期戦を選ばずにオルクスは短期戦を選んでしまう。
「ぬぅぅ、フルパワー!」
「くうっ!」
スラスターを全開にするとオルクスは突撃してきて、慌ててカナタは横にずれて躱す。突風が横殴りに襲ってきて、コンテナへと押し付けられてしまう。
オルクスはというと、突撃したまま減速することなく、空を駆ると上昇してカナタを睥睨してくると忌々しそうに口を歪める。
「ぶっひぃ! これ以上時間をかけると、校内の人間たちが逃げてしまう。こうなれば、火炎魔王術にて終わらせてくれるわ!」
炎の剣を打ち消すとオルクスは両手を天へと伸ばす。
「このオルクスの最強の魔法にて死ぬがよい」
『暴食炎殺魔王顎』
空中に魔法陣を形成させると、オルクスは全ての魔力を注いでいく。魔法陣は膨大な魔力により、周囲の空間を震わせていき、空間自体が熱せられていくが、不思議なことに冷たさも感じさせる。
「ぶふふふ、感じるか? 地獄の入り口が分かるか? この火炎の威力に魂が恐怖しているのだ。さァァァァ、これにて終わりだ、骸骨よ!」
魔法陣に亀裂が走ると、火炎が噴き出てきて、口のようにパカリと割れる。いや、口のようではなく、完全にそれは巨大な口であった。広い地下空間全体を一口で呑み込める大きさに巨大化すると、カナタもコンテナも、全てを呑み込み口を閉じるのであった。
逃げ場所など無く、カナタは呑み込まれてしまい、オルクスは喜色の笑みを浮かべ笑う。
「勝った! よく分からない骨を倒したぞ! ブヒィィィ」
勝利に酔うオルクスが跡形もなくなった骨の王へと高笑いするが━━。
「よく分からないなら攻撃してこないでくださいよ」
「!?」
真上から聞こえる少女の声に身体を驚きで硬直させ━━。
ズズンと鈍い衝撃が肉体に走る。
「あ!?」
そうして、身体を見るとオルクスの胴体を貫いて、闇の槍が覗いていた。
「な、なんじゃこりゃぁ〜!」
「そのネタ、絶対に誰もわかりませんよ、お疲れ様でした豚さん」
驚愕の叫びをあげるオルクスはどこから現れたか分からない少女の闇の槍により身体を2つに引き裂かれると、プラズマエンジンが衝撃で大爆発を起こし、四散するのであった。




