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悪役に応募した三流役者。異世界での雇用でした  作者: バッド
2章 アカデミー

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53幕 脱出ゲーム始まりました!?

 リッチに扮しているカナタは、有頂天になっていた。有頂天な狸よりも有頂天になっていた。スケルトントン、スケルトンだった。


「ふふーん、見ましたか? 見ちゃいましたか? この僕のカッコいい姿を。リッチ、不死王リッチですよ」


「カットと言われるまでは、演技をしていた方が良いのでは?」


 小憎らしい程華麗なタップで小躍りスケルトンダンスをするカナタに苦笑交じりにセイが生温かい目を送る。失礼な視線だけど、悪役主人公として、今回は僕が活躍するのだ。もう劇名も決めてある『不死王』だ。単純にしてわかりやすい劇名、これなら満員御礼、投げ銭が豪雨のように振り注ぐだろう。

 

 これから隔壁にて閉鎖された校内で、間抜けにも残っていた生徒たちを狩っていく。悲鳴が鳴り響き、苦悶の唸り声が耳に心地よく、死の絶望が劇を支配するホラーとなる。


「くくくく、来たよこれ、僕の時代がやってきた。脇役人生を糧として、主演として頑張りたいと思います。ホラー映画史に残る斬新な━━」


 既にレッドカーペットを歩いてインタビューの練習までする取らぬ狸の皮算用を見せつけるカナタだが。


「えっと、お嬢様。ちょっとこのモニター見てほしいうさ」


 カナタの裾をクイクイと引くロロ。その気まずそうな表情……嫌な予感。今回こそはオーディションに受かったろうと小さな映画のオーディションを受けたのに、気まぐれに人気役者が横入りしてくる時と同じ気配。役者としての幅を広げたいから違う役をやりたくなった? 他の映画でチャレンジしろよ、なんでよりによって僕が受けた映画に横入りしてくるんだよ。


「こほん、なんだロロ? まだ休憩時間だから撮影まで休んでほしいのだが? なんか変なことあります?」


 若干素を見せつつ、ロロの指さすモニターを見る。


「それどころじゃなくなる予感うさ。ほら、このモニターに映るのやばくない?」


「うん、ヤバい……なにあれ? オーク? いや、人間……ですよね?」


 嫌な予感的中。モニターには予想外すぎる光景が映っていた。もはや演技をする余裕はなく、顔を引きつらせてしまう。


 そこにはデブのおっさんが映っていた。脂肪により3重あごになっており、口元からはサーベルタイガーのように牙を剥き出しにしている。身体もタプタプで歩いていると腹が揺れそうなほどに肥満だ。まぁそこまではよい。獣人かなと思えるからだ。問題は下半身だ。下半身が芋虫になっており、小さな脚が繊毛のようにびっしりと生えており、人間の肌をしていて、5メートルはあるのである。


 貴族のような上等の服を上半身は着ており、宝石のついた杖を手にして、なぜか憤怒で爛々と目を燃やし、顔を真っ赤にしながら、芋虫のようにうねうねと這うように歩いていた。


「あれはモンスターうさ? 芋虫とオークのキマイラ?」


 ロロがドン引きの表情で僕を見てくるけど、学長の記憶にあのおっさんはいた。


「あれはオルクス・モーグウィンです。太り過ぎの人でしたが、人間です。人当たりも良く生徒たちを大事にして、授業も分かりやすいと評判の先生と記憶にあります」


「ゴクリ。人の良い先生だったうさね……それなのにあんな姿に?」


「えぇ。専攻は魔界学。最近は7罪の魔王の召喚と生贄についてという研究をしていらしたようですけど。特に暴食の魔王オルクス召喚の魔法陣を作ろうとしていました」


「絶対人の良い姿は偽物うさーっ! 魔王を召喚する気満々うさよ!? どうして皆止めなかったうさ?」


 耳をピンと伸ばして、絶叫する兎さんである。ブンブンとお手々を振って、ツッコミを入れてくる。


「いや、たしかに9割疑わしいですけど、名前から言って真っ黒ですけど、そんなことを言ってたら、原子分裂の研究者とか、ウィルス研究をしている人とかも怪しいと色眼鏡で見ることになるじゃないですか。職業に貴賎はないんです。そーゆー事をいうとコンプラに引っかかって首になるので、皆も怪しい怪しいと思いつつも、口には出せなかったんですよ」


「いきすぎたコンプラの弊害っ!」


「オルクス先生は時折白衣に血をつけていたり、独り言で世界支配とか魔王の偉大なる力を現世にとか言ってたんですけどね」


「もはやツッコミしきれないうさ!」


 昨今のコンプラは人の発言を全て封じてしまうのだ。


「まぁ、そんなことよりも、あのモニターの音声をオンにはしてみましょう」


 ポチッと音声をオンにすると、オルクスの声が聞こえてきた。憎しみに満ちた声で、怒りに燃えていると聞いただけで分かる。


『お、おのれ、後数ヶ月で完全に魔王オルクス召喚と同化を行えたというのに、なぜバレた? ここまで準備をするのに何年かけたと思っている? 十年だぞ、十年! もはや半分も召喚同化はできなかったが、バレた以上ここにはおれぬ。校内の生徒たちを食い尽くした後に脱出してやるわ!』


 説明ありがとうございます。ん〜、なるほど、なるほど?


 小首を傾げてオルクスのセリフの意味を考える。んーー?


「あ、もしかしてこのマジカルハザードがオルクスを狙ったものだと思われてる?」

 

 ポムと手を打って、推測した内容にため息をついちゃう。


「……あ~、その可能性ありうさね」


『おのれぇぇぇ、魔王召喚同化を始めたと同時にマジカルハザードを発動させおって……外部との繋がりが結界により絶たれたせいで、召喚が失敗してしまったではないかぁ~!』


 絶叫するオルクス。うんうん、僕の予想は当たっていたらしい。なんで入学式初日にそんなことしてるんだよ。いや、初日だからこそか。初日は皆早めに帰っているはずだし教師たちの気も緩んでいたはず。しかも朝からあんな騒ぎが起きていれば、もう何も起こらないだろうと油断してもおかしくない。


 その油断の隙をついてきたらしい。


「なんて卑怯なっ! せっかくの入学初日なんだからおとなしくしていれば良いのに。暗黙のルールでしょ!」


 にゅにゅにゅと拳を握りしめて、オルクスを責める僕だけど、なんでロロもセイも僕の顔を見て、何言ってんのこいつみたいな表情をしてるのかな? 僕は例外だよ。システムにクラッキングするのにこの日が最良だっただけだ。


「しかしまずいですね。あんな豚のキメラがいたら、僕の影が薄くなってしまいます。せっかく準備をしてきたのに」


「たしかにカナタさんの主演映画が台無しになりそうですもんね。小生はそれでも構いませんが」


「そんなことはさせません。あのオルクスはさっさと退場してもらいましょう。与一第二王子から貰ったこの召喚カードで」


 ケラケラと笑うセイを横目に、黄金に輝くカードを取り出す。貧乏な僕とは違って、金持ちの第二王子の持ち物だ。


「なんですかそれ? 召喚カード?」


「いえ、『パペット作成』の魔法カードです」


「んん? 『パペット作成』って、たしかEランクの雑魚カードですよね。なんでそんな黄金に輝いているんですか?」


 コテリと小首を傾げるセイだけど、それには理由がある。


「このカードは与一第二王子の固有スキル『ミダスの手』で黄金の価値を備えているんです」


「黄金の価値? 単に黄金にしただけ?」


「普通、ミダスの手と聞いたら、そう思いますよね? でも先輩は面白い効果にしたんです」


 先輩。即ち第二王子は大御所先輩だ。しっかりと生き残って王族として活動している。すぐに接触してきたので、予定通り力を合わせて活動することにしたのである。ちなみにユリアも大女優先輩である。ともあれ、今は与一第二王子の能力の説明といこう。


 『ミダスの手』。神に願って王様が触るもの全て黄金へと変えられるようになったという伝説の能力だ。


 これを大御所先輩は改造した。


「『ミダスの手』は伝説通りなら、黄金に変えます。それを黄金の価値にまで跳ね上げるという能力に改変したのです。例えていえば、ゴム鉄砲をマシンガンにとか、錆びた剣をエクスカリバーにとか。一日に使える回数は教えてもらえませんでしたが、極めて強力で便利な能力と言えるでしょう」


「ほー、なるほど、生まれが王族のため、固有スキルはBランクが最高のはず。黄金の価値の性能というとこの世界ではBランク相当。オリハルコンやミスリルがありますからね。でも、その能力ならランク以上の力を発揮できると思います」


 感心するセイだけど、僕もそう思う。Bランクは高位ランク。Bランクのアイテムを量産できるなら金には困らないし、戦闘でも役に立てる。しかもタイマンではそこまで強くないのに、見栄えも良い。視聴者が好きそうな能力と言えよう。


『私の能力は無敵。選ばれし者の力なのにぃぃ』とか、主人公に倒された時に叫びそうな能力である。僕ももう少し格好良い能力にすればよかったかも。


 さすがは大御所先輩だと、僕も性能を聞いた時に舌打ちするほど感心したよ。


 なので、最安のパペット作成カードも、ミダスの手にかかると強力なカードへと早変わりする。


「というわけで、この室内ならどこでも転移させられるカードとパペット作成のカードを使って、あの豚には退場してもらいましょう」


 モニターに映るオルクスの目の前にパペットが召喚されるようにカードの力を解き放つ。


「いでよ、ガーディアン『レッドサイダー』! あの豚を殺して、この劇の方向性を元に戻すんです」


 パアッと光り輝くと、カードは消えてなくなり、オルクスの目の前に出現する。


 三メートルほどの背丈の人型の金属製のロボット。重厚な装甲に、プラズマシールドを展開可能であり、肩には高熱キャノン。腕からはプラズマソードを伸ばしている高性能ロボだ。バイザー型のカメラアイをオルクスへと向けて、赤く光らせる。


『魔物を発見。撃破します』


『ぬぬっ!? これはなんだ?』


 オルクスが突然現れたロボットに驚くのを、ニヤニヤと見守るカナタたち。


「ふははは、やっちゃってくださいレッドサイダー! ボコボコにするのです」


 高笑いをして、応援をするカナタたちであった。


           ◇


「え~と、魔王って強いんだね」


「あのプラズマシールドはどうやって解除するうさ?」


 数分後、オルクスはメカオルクスに変身していた。レッドサイダーは食べられちゃった。

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― 新着の感想 ―
大御所先輩の正体あっさり出てきましたね。もっとドラマチックに行くかと思ったけど、リッチで鼻高々のカナタ氏は、そっちで盛り上げる気もなかったようだし。 メカオルクスには、オルクスで対抗だ! 何言ってんだ…
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