49幕 まずはテンプレ
「では、最初は説明をしたいと思うぞ〜。俺の話をここで聞き流すと先々不利になるから覚えておくよーに。まずはお前らはそれぞれカードを渡される」
ボンタ先生は手に一枚の黒いカードを取り出す。クレジットカードのブラックカードにそっくりで、カードの表面に学校の紋章が描かれている。
「これは学校内で使えるカードだ。このカードにポイントを貯めて、購買、学食、武器や魔道具の製作施設の利用代、違反のもみ消し代、先生への買収などに使える。校内では自販機の缶ジュース一本ですら、金では買えないと覚えておけよ〜」
なるほど、小説などでたまに見るシステムだね。そして、ポイントを集めて切磋琢磨するパターンだな。でもセリフの後半の使い道変じゃないかな? あ、この世界では変じゃないのね。
「ポイントは成績やイベントで配られる。そして、ポイントは序列が高いほど、貰えるポイントは多い。ちなみにポイントは円という名前にしている」
変なところでわかりやすい通貨きたよ、これ?
「入学式の順位によるポイントがまずは配られる。タウロス三兄弟やデスナイト戦で活躍した第二王子他の面々は他にポイントを報酬として渡されるからラッキーだったな。アマガミから受け取りに来るよーに」
「はぁい」
デスナイト戦で活躍したのはシグルドだし、タウロス三兄弟戦はカナタが第一の功績を立てたのに第二王子の名前を出すとは、身分の平等の理念がよくわかっている教師だこと。
ブラックカードに指を添えると表面に数字が浮き出る。
『首席合格とその他の報酬・125万円』
予想よりもしょぼい報酬きたこれ。てか、学校が発行するポイントなんか幾らでも作れるんだから詐欺じゃね?
「ふむ、私は一千万を超えてるや。あれだけ苦労したのだから当然かな」
爽やかな笑みでカードを確認している与一第二王子。ちくせぅ、これが格の差と言うやつか。前世からこの辺の報酬の差は変わらないな。
それぞれ悲喜こもごもで、ポイントを見て騒がしい。だが一組ということで、低い報酬の人はいなさそうだ。
「よし、それじゃ序列を決める最初のイベントだ。お前らの魔力を確認させてもらう。魔力の大きさは可能性の高さだからな。その次は体力検査だ」
教壇に水晶玉を置くボンタ先生。キタキタ、これぞテンプレ。あの水晶玉に手を置いて魔力を測ると。
「なので、ドーピング検査から開始する。ここからは水を飲むのも禁止するからな」
あれぇ? テンプレとは少し違うよ? ドーピング検査って、リアルすぎないかな? 今まで見たことのある小説とかで、そんなことを言う先生はいなかったよ? そして、何人かが青褪めていることも。
「うぅ、お水が飲みたいですわ。喉が渇いて渇いて辛いのですわ。なぜこんなに喉が渇いているのかしら。口の中でソースセンベエの残りが張り付いていて気持ち悪いですの」
ヘロヘロ顔のローザさんは、砂漠に遭難した人みたいな感じだ。
飲料水は全て不可か。なぜかローザさんは辛そうに顔を顰めているけど、ドーピングを防ぐためらしいから我慢してね。
◇
ヘロヘロなローザさんは、ゾンビになりそうにフラフラしているが、魔力検査自体は簡単なものだった。
テンプレ通り、水晶玉に手を添えればいいだけらしい。
「この水晶は100万円するからな〜。強大な魔力に耐えきれないと砕け散ったり、魔力量が多すぎて閃光を発したり、測定不能だからゼロでしたと、水晶の能力を無効化させたら、弁償してもらうからな。足りない分は月10%の複利での借金になることも覚えておけよ」
ボンタ先生が生徒たちに注意事項を説明する。注意事項かな? チートな主人公がよくやるパターンだよ? あと、複利とかエグすぎる。
「くっ、この一年間アイアンクローを鍛えてきたのに、使えないのか」
「閃光弾の魔法を無詠唱で使えるように日々練習してきたのにっ」
「魔道具破壊の魔道具を持ってきて、俺は魔力ゼロから覚醒する予定だったのに」
ドーピングに続いて、何人かが悔しそうにしてる。ここは劇の世界、テンプレの俺ツエーの展開は飽きるほど見てきたため、同じ事をする人は多かったんだね。
「なるほどね……ありきたりの方法じゃだめってことなんだ、面白くなってきたよ」
「ん〜、考えるのって私苦手なんだよね〜、みんめー書房になにかアイデアないかなぁ」
第二王子とユリアが小声で呟いているが、僕も同じ考えだ。ここは普通に測るか、それとも斬新な方法を取るか……。ふむ、難しいな。
ここは役者としてのアドリブを期待されてるってことだよね! 張り切るしかないな。
「この水晶は最新式で、魔力量をデジタル化し数値として表示する。光る大きさだと判別しにくいからなぁ。先生が学生の頃は、皆懐に閃光弾を持ってきていてな。誰かが間違えて魔力を込めすぎて周りの閃光弾も反応して、教室が大爆発を起こしたものだよ、懐かしいなぁ」
感慨深く経験談を口にするボンタ先生だが、そんな経験はいらん。どこまで修羅の国なんだよ、ここ。
「とにかく魔力量を測ると言うことですね。では、苗字順に渡辺さんから始めましょうか」
「ええっ!? わ、私からですか!」
なぜか驚く渡辺さん。廊下側の一番前に座ってるんだから当たり前でしょ?
「時間稼ぎをするつもりだわ」
「あれが裏聖女か、この教室の主導権を取られないようにしないと」
「あの女神か天使かのような可愛さで、悪魔のように真っ黒な性格なんだな」
そこのモブ。お口チャックしてくれない?
渡辺さんが水晶に手を乗せると、予想していた光景と違い、ピピピとデジタルな音がして、数値が現れる。
「渡辺、魔力量158、なかなかの数値だ、おめでとう。アカデミーの平均は80だから、さすが一組なだけはあるな、先生も鼻が高いぞ」
「ありがとうございます!」
渡辺さんが嬉しそうに席につく。たしかに予想よりも魔力量が高い。魔力量が高い程、強力な魔法を行使しやすくなるので、渡辺さんが喜ぶのは当然だ。
以降も100を平均に生徒たちが測っていく。先んじてドーピング検査や、不正を防がれたためにおとなしく測っている。
「ユリア・バータ。魔力量280!」
「勝家・シン。魔力量306」
「シグルド、魔力量350」
「ローザ・泉、魔力量331」
くっ、やはりレギュラー陣は魔力量が高い。中でも主人公はやはり魔力量がずば抜けてる。さすがは神に選ばれたこの世界の中心なだけはある。
皆がレギュラー陣を見て予想以上の力を持つことに警戒と驚愕を覚える中で、遂に残りは僕と第二王子だけとなった。第二王子は最後なので、僕の番だ。
皆が純粋で無垢な女神の化身であるカナタ・アマガミを注視する。
「では、先生。僕は魔力量を測る前に、魔力を高めるための奉納舞をしたいと思います。よろしいでしょうか?」
しずしずと歩いて、先生へとニコリと微笑みかける。
「ん? 聖女はそんなことをして魔力量を高めるのか? ……ん〜、まぁ良いだろ。魔力の集中の仕方は人それぞれだからな」
「ありがとうございます。では、教室の真ん中で踊りますので、席を避けてもらえますか?」
真っ白な雪のように微笑むとほとんどの男子と多少の女子が席を退けてくれるのを手伝ってくれる。
「では、天におわせます神へとお力を借りる舞を」
ふわりと裾を翻し、凛とした表情で背筋を伸ばし、僕は舞を始める。ふわりふわりと花が蕾から咲き開くように。
水面を歩くかのように、床に小さな波紋を残し、桜花びらが空に舞うように。
銀髪がキラキラと輝き、天の川のように空を流れ、プルルンと胸が揺れて、芸術のような細い脚が優雅に伸びる。
踊りは役者の重要なスキル。前世ではミュージカルに出ることもあるかもとダンスを鍛えて、バックダンサーの練習相手として活躍したこともあるくらいだ。
「これが聖女の舞……美しい……」
「まるで妖精のようだ、背中に翼があるかのようだ」
「寝っ転がれば、スリットの奥が垣間見えるわ。今日は可愛らしいピンクなのね」
生徒たちが見惚れてウットリとする。最後の女子は寝っ転がりスマホを構えないように。
「神への奉納。己を信じる心。神聖力と念の力が奇跡となります!」
舞を終えると、水晶へと手を伸ばす。
「はぁぁぁ、とやァァァァ! 僕の力よ、覚醒せよ! だぁァァァァァァァァ!」
気合い! 全ては心の力、精神が物事を上回る。理を超えて、聖女の力が全てを生み出す。
ペチンと水晶に手を置くとデジタルが動きだし、舞までした人は初めてなので皆が注目して、隅っこをマーモットと兎が駆けてゆく。
そうして数値が表示されて━━。
「カナタ・アマガミ。魔力量456! これまでで最高値だ!」
遂に一番良い魔力値が出力されるのであった。
ナンバーワン。僕がナンバーワンです。
「ふふふ、皆さん、ごめんなさい。奇跡の力って本当にあるんですよ。神は常にそこにいるんです」
ふよふよと浮いている巫女がそばにいるからね。嘘はついてないよ。
「うぉぉぉ、すげー! 本当に強いのか怪しんでたよ」
「エロチックな神聖服を着ているだけじゃないんだな!」
「見直したわ。今度一緒にお風呂に入りましょう。その力の源を知りたいわ」
騒然となる生徒たち。最後の女子だけ、後で隔離したい。
とはいえ、聖女としての面目躍如というところだね。
「神にお力を借りないと、いつもはここまでの力を出すのは難しいのですけどね」
しっかりと予防線を張っておく聖女である。
これで同率一位は確定だ。あとは第二王子だけか。
「与一・アトランティス第二王子、魔力量……456! アマガミと同じ数値だ! まったく同じとは驚いたね、こりゃ」
「いえ、今日はたまたま調子が良かったんです。恥をかかなくて良かった」
驚くことに、第二王子も僕と同じ数値だった。本当に驚いたね。2人とも456だなんてさ。
「この場合、同率一位とする。いやぁ~、先生も鼻高々だよ。今年の学生は優秀だねぇ。同率一位なんて、長く勤めているけど、初めて見たよ」
同率一位ということで、ますます皆のボルテージが上がり、僕たちはアカデミー初の同率一位として伝説の一節を建てるのであった。
それと、水晶はしっかりと片付けておきました。整理整頓は得意だからね!




