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白い結婚のまま、さようなら ~女好きな夫との離婚は決定事項です  作者: 白まゆら


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おっ、お久しぶりです

 恥ずかしさのあまり顔を赤くする私と、同じように顔を赤くしたジアス様が咳払いをされて、立ち上がりました。

「クレイン様、覚えていらっしゃいますか? 王太子殿下です」

「はい、もちろんですわ。再びお会いできて光栄です。王太子殿下」

 ジアス様に紹介していただいたので、最上級のカーテシーをして王太子にご挨拶いたします。

 まだ顔は熱いですけどね。

 結婚式でお会いしてから六年の歳月が経ちましたが、相変わらずのお美しさです。

 確か二十八歳におなりだったと思います。

 二歳下の王太子妃とは仲睦まじく、お子様も三人いらっしゃるとお聞きしています。


「うん、会えて嬉しいよ。もうすっかり大人の女性だ。ますます美しくなって吃驚だよ」

 成長を喜んでくださる王太子に嬉しくなって笑顔を向けます。

 すると王太子から「うっ」という奇妙な声が聞こえました。

「こ、これは破壊力が凄いな。なるほど。ジアスが過保護になる訳だ」

 コホンと咳払いされる王太子に首を傾げます。


「とにもかくにも、無事にエイワード国に戻ってこられて良かったよ。侯爵家を継ぐ手はずは整っているのかい?」

「家令が準備をしてくれています。教会の承認さえ下りればすぐにでも、書類を提出させていただきます」

「ああ、教会に関しては先程ジアスが手続きしたからすぐに返事が来るだろう。では爵位の手続きは、優先案件として処理するように私が働きかけておくよ」

「まあ、ありがとうございます」

 どうやら懸念していた教会の件は、ジアス様が先に動いてくれていたようです。

 それに侯爵になる手続きも王太子が協力してくださるみたいで、早急に全ての手続きは完了しそうです。ありがたい事です。


「それで、どうやって今の侯爵を追い出すつもりだい? 書類上クレイン嬢が侯爵になったとしても、血縁を主張してなんだかんだと居座るかもしれないよ。そこのところは考えているのかな?」

「一応、言い逃れできない彼らの悪事の証拠を使用人に集めてもらっています」

「なるほど。侯爵なら縁が切れるほどの悪事をしていそうだね。それでその中に、キャスカ嬢が隠し持っている薬に関して何か有力な証拠はなかっただろうか?」

 王太子が現在、王宮で調査している異母妹の薬の証拠がないか確認してきます。

「出所ですよね。それが、気が付けば補填されているらしく、当家の侍女頭でも調べられていないようです」

「それほど巧みに動いているのか? 先程の彼女の浅はかな態度からすれば考えられないのだが?」

 王太子の仰る通りです。

 確かに自分の妄想だけで動いている異母妹に、使用人に見つからないように薬の調達に行けるような画策ができるとは思えません。

 尾行している騎士にも見つからないようになど、なおさらです。


「とりあえず不敬罪で捕まえたから、その線も問いただしてみよう。まあ、小娘の戯言だからすぐに釈放しなければいけないが、少しは何かしらの情報を吐くかもしれないしな」

 異母妹は先程、王太子に失礼な発言をして騎士に連行されました。

 暫くはそれを口実に取り調べができるので、利用しようと仰います。

 他国では王族に無礼を働けば死刑になる国もありますが、我がエイワード国では程度にもよりますが、手をあげた訳ではないので異母妹の年齢であれば一週間程の拘留ですみます。


 サビティ国でもカロリーナ様がカミュウ殿下にしてしまった不敬は、本来なら一年の拘留となるところでしたが、あの時は元夫の廃嫡を促すのに彼女を利用しようとしたので無罪放免となりました。

 まあ、今はそれ以上の事をしてしまったので結局は地下牢にお住まいになっているみたいですが……。

 異母妹も近いうちに同じ事になるでしょう。

 その時、お父様と継母はどのような顔をされるのかしら?

 全て私が悪いのだと、昔のように八つ当たりするのでしょうか?


 そこで私の脳裏にふと、お父様の顔が思い浮かびます。

「あの、その薬にはお父様は関わっていないのでしょうか?」

 私の言葉に王太子が驚いた表情をします。

「侯爵が? 何かそう思う根拠はあるのかい?」

「いえ。私は今までサビティ国に居ましたのでお父様の行動は存じませんが、異母妹に薬をあげる方が屋敷に居たなら、彼女が動かなくても手に入れる事ができるのではないかと思いまして。使用人は家令が全員管理していますので、そのような事をする者はいないかと」

「確かにな。だが今のところ、侯爵にもそのような動きは見受けられないようだが……」

「侯爵でなければ夫人はどうだろう? 彼女の行動も騎士が監視しているのですか?」

 私と王太子が首を傾げていますと、ヘイネス公爵が尋ねてきました。


「一応つけていはいるが、キャスカ嬢や侯爵ほどではないな。盲点があるかもしれない。すぐに動いてみよう」

 そう仰られた王太子が、横にいるジアス様をグイッと引き寄せます。

「いいヒントをありがとう、クレイン嬢、公爵。全てが解決したら城にも遊びに来てくれ。ああ、新マルシアス侯爵のお披露目会が先か。もちろん私も呼んでくれるよね。楽しみにしている。では急ぐのでこれで失礼する」

 爽やかに部屋を出て行こうとする王太子の腕はジアス様の首元に回っていて、ズルズルと引きずっていきます。

 慌ててジアス様がその腕を振りほどきました。


「お帰りになるのならお一人でどうぞ。私は王太子殿下に報告に伺っただけで、本日は城に用事がある訳ではありません」

「何を言う。私が忙しければお前が補佐するのは当然だろう。今までクレイン嬢に会いに行くのに時間をやっていたんだ。これ以上は我儘というものだぞ」

 ジアス様の反論を軽くかわし、今度は彼の肩を組もうとしますが、本人に阻止されました。

 虚しく落ちる手を見て、王太子が目を細めます。

 こ、これは不敬にならないのでしょうか?

 慄く私を横に、ジアス様と王太子の攻防戦が始まりました。


「何を仰っているか分かりません。私は城勤めしていないので、殿下に付き合う義務も権利もありません。補佐なら側近のクラシアス様がいらっしゃるではないですか」

「アレは優秀だからな。執務はほとんど任せている。ん、ジアスは権利が欲しいのか? ならば役職をくれてやるぞ。そうだな、近衛騎士の団長になるか? 騎士団でもいいぞ」

「やめてください! そんな面倒なもの、絶対に嫌です。貴方に使われたくないから城勤めしないでいるのに、無理矢理押し付けるような真似はよしてください」

「はっはっはっ、我儘な奴だなぁ。クレイン嬢、優秀なこいつを公爵の地位だけで満足させておくのは勿体ないと思わないかい?」

 いきなり矛先が私に向きました。


「クレイン様を巻き込まないでください」

 こちらを向く王太子から庇うように、ジアス様が私の前に立ちます。

 私はその大きな背中をジッと見つめました。

 確かにジアス様ほどお強かったら騎士にもなれたでしょうが、今のお二人の会話から読み取れるのは、ジアス様が城勤めを厭うていらっしゃるという事です。

 それならば私の答えは一つしかありません。


 私はジアス様の背中から顔を出して王太子に答えます。

「王太子殿下が仰るように確かにジアス様は優秀ですので、お城に勤められても素晴らしい業績をあげられるでしょうが、ヘイネス公爵家を継がれるというのも大変な重責のある事だと思います。私はジアス様がなされたい事を応援したいです」

 不敬かもしれないと思いながらも、キッパリと意見を言わしていただきました。

 これで気を悪くされたらマルシアス侯爵家を継げなくなるかもと不安に駆られましたが、それでもジアス様が嫌な事を後押しなどできません。

 ただ気付けば心細さのあまりジアス様の服の裾を掴んでいましたが、これは見逃してくださると嬉しいです。

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