5話
曇った窓の向こうは、曇った空で嫌な感じ。何処からか聞こえるこの騒がしいゲコゲコは、カエル達が
「雨もっと降れー! 降りまくれー!」と雨乞いのような意を込めながら合唱中。
曇った窓に人差し指で何かを書く。う、る、さ、い――ほっぺたを真っ赤にした少年は、鼻をつづった。ティッシュ何処だ、薄暗い部屋で目当ての物を探す。
チクタクチクタク、ディズニーのキャラクターであるアヒルが笑ったり泣いたり怒ったりと様々な表情をしている時計がチクタクチクタク。
数字と針が光っているので暗いところでも時間を確認できる優れ物だ! 少年は時間なんて気にしないのか、一度も時計を見ない。ベッドの下をじーっと見ている。ん? と声を出して、右手を伸ばす、伸ばす。ティッシュを探さなくて良いのかい? と声をかけてあげたいけど、ベッドの下からはピンクのアルバムが出てきた。
「雨宮理沙……あの子かな」
ずず、鼻をつづりアルバムを理沙ちゃんの許可なく見る。一ページ、二ページ、三ページ、見る見る、四ページ、五ページ、六ページ、目に焼き付けるように。
少年は電気も付けずに薄暗い部屋でアルバムを見ている。暗いところで文字を見たりしたら視力悪くなるよ! って事で今直ぐやめなさい! さあ電気を。
「そうか、そうだったんだ。だからあの時あんなに心配していたんだ……」
驚いている、理沙ちゃんのアルバムを見て。そっとベッドの下に戻しうつむくと、両目から涙が溢れた。胸の辺りに手をそえ声を出さずに泣いていて、涙はほろほろと落ちている。
――離れ離れは辛い。凄く遠くに行ってしまったから尚更――
ゴロゴロ、ゴロゴロ。雷が鳴って天候はさらに悪化。少年の表情はどんより。アルバムで何を見たんだろう、気になる気になる。
「あっ、すっかり忘れてたよティッシュ」
ベッドの横の勉強机にあるのはボックスティッシュ。少年の鼻からずずず、ずずず、汚いよ。一枚ティッシュを引っ張る。鼻をかむ、しかしもう一枚ティッシュを引っ張る。ずずず、しかし鼻水はたれる。
はぁ、とため息をつきティッシュをちぎって、鼻の穴に入れた。少年はニコっと笑い満足気。
「これで鼻水は大丈夫だろう、あとは奴等に見つからない事を神に願うしか」
呟くとベッドに寝転び、目を閉じておでこを手で触った。布団の上でお昼寝をしている真っ白な体温計は、三十八度と表示している。少年熱あるな〜。
ゴホン、咳き込んだ、ゴホン、ほっぺはさっきからずーっと真っ赤。早く病院に行った方が良いけれど、エリザベスは夕食作ってるし理沙ちゃんはココア飲んでるし。早く誰か病院に! ヘルプ〜!
――――★
暗い、くらい。
ここは真っ暗何も見えない。
段差があったらこわい、障害物があったらこわい。
眩しい光は何処ですか?
植物を元気にする光は何処ですか?
誰かいたら大きな声でお返事してください。
ひとりぼっちは心細いんだ、泣きそう。
「こっちだよ」
えっ? 今声が聞こえたような。
……気のせいだよね、ここには誰もいないし。
こんな所に来る人なんていないし。
「こっちに来るんだ」
また聞こえたよ幻聴が。
やめろー、黙ってくれー、迷惑なんだー。
「強情な奴だな」
あれ、なんか光ってる。手とか足とか光ってる。
「お前は一人じゃないんだよ」
――――☆




