宝石商の依頼
ある日の事。
アレイシアが素材の補充をしようと、市場に出ている所だった。
本日の学院は休日なので、きままに補充出来る。
まあ、そもそも学院の授業は単位さえ取れていれば受けるかどうか自由だし、そもそもアレイシアも経営許可をもらっているのでそこら辺は甘く設定されているので、基本的にはきままに過ごしているのだが。
成績についても特に問題は無いため、心配不要だ。
というわけでまあ普段からあまり気にしてはいないのだが。
「さて、市場で揃う物は大体揃ったわね。後は、何か昼食でも……。」
そんな独り言を確認するように呟きながら歩いていると……。
アレイシアの視界が突然真っ暗になった。
「っ!?」
突然の事で「びくぅ!?」と身体を震わせるアレイシア。
「だーれだー……。」
「……そ、その声は……ジュエリさん……ですかね……?」
普段あまり人付き合いが良い方ではないアレイシアはかなり慎重に言葉を選ぶ。
しばらく続く沈黙。
アレイシアの心臓はバクバクになっていた。
「……せーいかーい……。」
やがて、ようやく視界が明るくなるのをアレイシアは確認すると後ろを振り向く。
そこには、長い金髪に銀の星のように煌めく光を纏った髪を持ち、そして服の袖や腰のスカートに様々な色の小さな宝石のような石をつけ、指には宝石の指輪をはめた女性……ジュエリ・クリスタリザが居た。
ジュエリは、アレイシアよりも少し年上の女性だ。
宝石商や鉱物の売買を行っており、アレイシアが採取にいけない時や、アレイシアでは採取が難しい鉱物をアレイシアが買いたい時にお世話になっている。
逆にジュエリの方から錬金の依頼をする事も多く、お互いにお得意様、という商売関係だ。
「ふう……いきなりびっくりさせないでくださいよ。」
「びっくりしたー……?ふへへ、大成功だー……。」
一見色とりどりの宝石に着飾ったこの商人は、そのある意味成金趣味にも見えなくもない派手な衣服に反して性格はのんびり屋であった。
その為、めんどくさがりなアレイシアとも波長が合う為か、プライベートでもそれなりに親交があるのであった。
「……で、今日はどうかしましたか?今日は宝石や鉱物の補充の必要は無いですけれど……。」
「久しぶりなのにつれないなー……。今日は、アタシの方から依頼があったんだよー……。」
「依頼ですか……?それならアトリエの方に来てくれた方が良かったでしょうに……。」
「さっき行ったよー……。それで留守だったから店に戻ろうと思ってたら、丁度見つけたからついでにちょーっと悪戯しよっかなーってー……。」
「ああ、なるほど……。それはすいません、けど、だからって悪戯はしないでくださいよ。」
「うへへ、ごめんごめんー……。で、依頼の内容だけど、ちょっとそれに関わる必要な物があるから、アタシの店に来てよー……。」
「わかりました、行きましょう。」
という事で、予想外の所から依頼へと向かう事になったアレイシアだった。
そして、ジュエリの店……大通りに面した、結構立地の良い場所にある宝石と鉱物の店、「ジュエリー・ダイアリー」。
自分の名前をもじってつけたらしいその店は、アヨティスの中でも結構繁盛している店だ。
そこにアレイシアとジュエリが入ると……。
「あ、ジュエリさん、それにアレイシアちゃんだ~。こんにちは~。」
「エクセ……?どうしたのかしら?何か素材でも買いに来たの?それとも贈り物とか?」
「ううん、違うよ~?ジュエリさんに呼ばれたんだよ~。」
「そうそう~……聖アヨティス学院の中でも、錬金術士の中で注目株の二人に依頼したいんだよー……。」
「私達二人に……ですか?」
「つまり、錬金術関係って事ですね~?」
「そういうことー……ふへへ。」
……アレイシアもだいぶめんどくさがりな性格だが、エクセはゆるふわな女子、ジュエリはのんびり屋。
かなり空気感が緩くなるが、それが当たり前に感じるくらいにはみんなマイペースだ。
だが、同時にジュエリが言う通りにアレイシアもエクセも、錬金術士としては実力は高い。
……まあ、エクセの方は店は繁盛しているが、アレイシアの方は一日に依頼が三件来たら良い方な商売っ気の無い店だが。
「ふへへ、んで依頼の品だけどー……。じゃーん……。」
「「うん?」」
錬金術士二人は、ジュエリが持ってきた壺を覗き込む。
「……水銀、ですか~?」
「そう見えるけど……液体状だけど、壺の中身が濡れていないわね。」
「うへへー……流石は錬金術士、水銀の扱いに慣れ親しんでるよねー……。でも、普通の水銀じゃないんだよねー……。」
「ふむふむ……?」
水銀自体が、そもそも結構貴重な物質である。
水銀は金属という特性を持っている上に、常温でも液体状態を保っているという事で、需要……特に、魔導機に使う素材として、かなり需要があるので市場に回ってこない事が多いのだ。
「実はねー……この水銀、薬としての成分が入っているらしいんだよー……。」
「す、水銀が……。」
「くすり……ですか~……?」
エクセは驚き顔、アレイシアは若干引き攣った顔をした。
当然である。
昔の研究が発展していなかった時代はともかく、水銀が人体に毒があるという事は当然の知識である事は、この世界でも共通の知識であった。
学術都市の学院生であり、おまけに錬金術士の二人にはそれが当たり前の知識である。
それなのに薬効成分がある、というのはどういう事かと思うのは当たり前の話だ。
だが、ジュエリは話を続けた。
「で、依頼の内容なんだけどー……ふへへ、この水銀を、錬金術の観点から薬として使えるかをエクセちゃん、他の使い道があるかをアレイシアちゃんに研究してほしいんだよねー……。」
「「……。」」
依頼の内容に、アレイシアとエクセは顔を見合わせる。
そして、二人は頷いた。
「これは~……。」
「なかなか、難題な依頼ね……。」
突然の難題な依頼に難しい顔をするアレイシアとエクセ。
それに対してジュエリはふへへ、と笑っているのであった。
新しい話は何にしようかだいぶ悩みましたが、まあアイデアが浮かぶままに気ままにやっていきます。この作品自体、あまり着地点を決めずにやりたいというのと、この作品はこの作品で私の中の世界観のある意味では集合点みたいにしたいので。




