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変わり者錬金術士アレイシアの研究日誌  作者: 大蛇山たんと


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修理 アルモニアのロッド その2

修理、とはいったものの、こういう既に一度作った物を改めて作るのは作り直し、もしくは改造する、という方向性の方が近い。

おまけに、単純に同じ形の物をそのまま作り直し、となると、更に難易度が上がる。

もう一度錬金術を使う場合、いっそ別のものに変えたり、更に性能を上げてしまった方が楽なのだ。

もちろんこれはアレイシアの特性だ、一般的な錬金術士……特にエクセのような複製錬金術が得意な錬金術士だったら話はまた別だろう。

自分の難儀な性質を恨めしく思いながら、どうするかと考えながら作業に移る。

杖の本体の方はとりあえず魔力の水に浸しておいて構わない。

白い宝石に溜まった不純な魔力をまずは出させていく。

杖に彫った術式に魔力を満たしていく。

こうしないと、「アルモニアの場合」は問題が発生するのだ。

アルモニアの魔法の特殊さは、触媒の宝石にも負担をかける。

なので、まずは取り外した小さな透明の宝石たちを魔導機を使って潰していく。

魔導機の導入にはお金がかかったが、アレイシアは満足している。

魔導機に記録した術式に無属性の魔力を流して術式を発動させて、無属性のハンマーで潰していく。

ここで属性を込めると、宝石が変質してしまうのでここはアレイシアの頑張りどころの一つだ。

幸い、アレイシアも魔力は多い方な上に、無属性への変換は魔力操作の基礎なので条件を満たしているので何とかなる。

潰して、潰した宝石が拡散したら止めて集め直して、また潰して。

それを繰り返した後、今度は水の中でろ過していく。

これで、宝石の使えない部分と使える部分を分けていくのだ。

そうして、使える部分を錬金釜に入れていく。

使えない部分は、魔力の水に浸していく。

廃棄する、というのも選択肢ではあるのだが、アレイシアはこういうものは再利用したい派だ。

そもそもアルモニアのこういう修理の場合、魔力がこの使えない部分に魔力が溜まってしまっている場合が多いのだ。

質の高い魔力を持った素材として使えるのだ、有効利用をしない理由はアレイシアには無い。

本当はこのまま加工して改造して……と行きたい所だが、今回はあくまでも応急処置。

使えるようにさえなれば良い、というのがお客様であるアルモニアの依頼だ。

というわけで、今回はこれは保存。

次は、先程選別した宝石を魔導機で、今度は粒を先程より大きめにして潰していく。

先程の宝石は砂くらいの大きさに例えるなら、今度は砂利くらい。

粒が残るくらいにして、それを集めると錬金釜に入れていく。


「よし、ここまで出来たら……。」


そう呟きながら、今度はかき混ぜる用の愛用の杖を持って錬金釜の中をかき混ぜていく。


錬金術中の釜の中という物は不思議な物だ。

普通に考えると、水の中に固形物を入れてその状態で杖のような棒でかき回したら、まず液体の中でその固形物にぶつかるだろう。

砂や粉、別の液体を混ぜたら濁ったりするし、特に小麦粉などのようなものを入れたら別の性質の物に変化してしまうだろう。

だが、錬金釜の不思議なのか、それとも錬金術に使う水が特殊なのか、それともその両方なのか。

一応普通の水でも錬金釜を使えば簡易的な錬金術は使える辺り、錬金釜自体に特殊な力があるのは間違いないであろうが、そこから魔力の篭った水を使う事による相乗効果は計り知れない。

そこから更に杖の魔力や、錬金術士本人の魔力、錬金施設の充実も加えれば更に倍率はドンっと増える。

そうやって魔力に満たされた錬金釜の中では、物理的な干渉は発生しない。

ずっと液体を回している感覚のみが手には返ってくる。

だが、完成の時には、物理的な感覚が手元に返ってくる。

錬金術士は、その「瞬間」が来るまで、魔力を注ぎながら杖を釜の中でくるくると回していくのだ。

一見単純な作業に見える。

というか、最初は単純な作業だ。

まあ、その単純作業をひたすら続けるというのが最初の訓練なのだが。

錬金術は、このアヨティスの中で研究されている学問の中では、どちらかというと地味な存在かもしれない。

錬金術に限った話ではないのだが、最初は学問の派手な部分に惹かれてその学問を勉強を始めるも、最初の地味な作業、地道な努力が合わずにその学問の道から去っていくというのはこの都市アヨティスどころか聖王国デミウルゲン内でも珍しい事ではない。

そして、錬金術の中で最初のその地道な努力の一つがこのくるくると杖を回す事なのだ。

学問でありながら、とにかく体力を使う。

なので当然ながらまずは健全な肉体が必要であることが前提条件となってくる。

そして、それを乗り越えても、今度は魔力のふるい落としが待っている。

つまり、魔力を流し込みながらの作業だ。

魔力量がそもそも少ない人や、魔力の操作が苦手な人はここで躓く。

基本的にこのデミウルゲンの中で、何らかの学問を修める際には魔力が関係する事がほとんどだ。

錬金術もその例外ではない。

ここまでやってまずは錬金術士のスタートラインに立てる。

だが、実はここまでは結構努力で何とかなる場合が多い。

このスタートラインまで立つのは、努力で身体を強くしたり、魔力操作を上手くしたりすることで、努力する根気さえあればスタートラインには立ちやすいのだ。

そこからは更に厳しくなる。技術的な理論の勉強はもちろん、錬金術の発想という個人のセンスという才能も出てくる。

もちろん、これらが錬金術士全てに必要な物ではない。

今アレイシアは学術都市アヨティスの学院生であるという所から研究の為に勉強やセンスが必要だが、例えばデミウルゲンの中でも田舎の方では恐らくあまり研究などをしなくとも、基本的な錬金術さえ出来れば錬金術士としてやって行ける可能性もあるのだ。

アレイシアの場合は、研究者としての性であると同時に、趣味と言っても過言ではない。

なので稼いだお金で魔導機を錬金室に導入したりしているのだ。

そして、杖を回しながら魔力を流し込み、やがてまだ高い位置にあった日が傾き始めた時であった。


(コツン)


「よし……。」


杖に返ってきた感触に、完成の瞬間を実感する。

杖を引っかけて、錬金釜の中からアルモニアの杖を持ち上げて、取り出す。

やはり、水の中にあったのに杖は濡れたりはしておらず、杖には細かく術式が刻まれており、先程取り外した宝石が再び綺麗に輝きながら、填め込まれている。

白い宝石も、不思議と輝きを増しているように見える。


「よし……完成ね。」


杖の様子を確認し、問題が無いのを確認して、満足げに頷く。

こうして修理を完了したアレイシアは、錬金室から出て、アルモニアの元に向かうのであった。


一人で黙々と作業すると、会話シーンがほとんど作れないので文章量が増えてしまいますね……今度からどうにか会話させるか、台詞量を増やしたいですね。

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