アルモニアとエクセ
「ごちそうさまでしたー。」
「ごちそうさま……。さて、面倒だけど登校の準備ね……。」
「アレイシア、今日は登校するんだ?」
「今日の講義は、少し興味があるの。」
聖アヨティスは、店の経営などで仕事がある生徒には、出席日数などの条件を緩くする、というルールがある。
その代わりに、試験の成績に求められる実績のハードルが高くなるので、より実力を求められるのだが。
アレイシアはそれに対して特に不満は無い。
なので、こうやって興味がある授業がある日には出席するという方向にしている。
「アトリエの方はどうするの~?」
「出席時間はアトリエを閉めて、終わったら戻ってくるわ。」
「どうせ出席するなら一日学院に居ればいいのに~。」
「私は研究で忙しいのよ。」
「研究で忙しいのはうちの学院の生徒のほとんどがそうでしょ~、私だって研究したいしさ~。」
「アルモニアの魔法の研究もやれたらやるわよ。」
「ほんと?ラッキーっ。」
アルモニアの使う魔法は、アヨティスの全体から見ても不思議な魔法であった。
基本的には、錬金術だったり神秘術だったり、魔法では魔法式だったりと、何らかの方式や形に則って出力されるのがほとんどの人の魔法だ。
だが、アルモニアの使う魔法は、今までの魔法の式では表せない、独特の魔力の使い方であった。
魔力をそのままぶつけたりする、というようなシンプルな使い方なら、魔力をそのまま使う魔法式として使い方の中ではポピュラーではあるのだが、アルモニアは同じように魔力をそのまま使って、魔法式を使わずに結果や現象だけを発現させるという独自の魔法が使えるのであった。
これは血筋などの関連性なども見当たらず、アルモニアの家系でもアルモニアだけに発現した独自の魔法だ。
それ故に最初は使い方がいまいち分からなかったが、聖アヨティス学院に入学してから研究してからは、ある程度コントロールしたり思い通りに魔法が使えるようになっている。
それの手伝いをアレイシアもする事になったのが出会いのきっかけだ。
アレイシアの錬金術がアルモニアの魔法には使えたからだ。
アトリエの看板を「OPEN」に変えてから、登校の時間まではアトリエで客を迎える用意をしていたが、今日の午前中は客は来なかった。
「アレイシアももっと宣伝とかしたらいいのに~……。」
「私の研究の時間が減りすぎるのは嫌だわ。」
ぼやくアルモニアに拒否の言葉を言いながら、アトリエの看板を「CLOSE」にしてから登校する。
アルモニアも今日はアレイシアと登校する事にしたらしく、髪や身なりを整える。
聖アヨティス学院は、制服は存在するが、そもそも制服の維持が大変だ。
基本的にしっかりと制服を着て登校する生徒は、貴族などの金持ちの生徒だけで、大体の生徒は式典などといった重要なイベントの時だけ制服を着て、普段は店の服や私服を着て登校する事がほとんどだ。
特に、店の服を敢えて登校する、というのは、その人の身分や所属を示す良い目印であると同時に、その店などのアピールチャンスでもあるのだ。
例えば、加工をするお店だったら、その加工によって作ったアイテムを着けたり、それによって得た装飾品を着けて実績をアピールしたり。
そうする事で、仕事を貰ったりする事で、実績や研究を更に求める。
そういうシステムが出来上がっている。
因みにアレイシアは私服で登校しているのだが、その髪色が錬金術の失敗によって起きた変化なのは少し学院内でも有名な話になっていたので、アレイシアが何もしなくてもアレイシア自信が勝手に宣伝になっているのであった。
そして、それでも客が閑古鳥が鳴く状態な辺り、この国での錬金術の需要の違いが分かるだが。
そしてアルモニアは、魔法学の生徒なのだが、その中でもモンスター退治といったかなり荒事に向いた魔法を多く使うので、肩回りを開けていたり、スカートを短くして中にはパンツも履いている。
髪も前髪を結っているので、長い髪でも視界が良くなるようにしている。
一見すると、学院の生徒ではなく冒険者に見える。
まあ、実際冒険者のような事をしているし、それも含めてアルモニアの魔法研究なので仕方ないのだが。
登校中、学院の近くで女生徒たちが集まって話している。
アレイシアとアルモニアが近くを通ると、その女生徒達の中心に居た人物が声をかけてきた。
「アレイシアちゃん、アルモニアちゃん、こんにちわ~。」
「こんにちは、エクセ。」
「こんにちは、さっきぶりですね、エクセさん。」
彼女こそエクセ・ジェンティ。
ふわふわとした雰囲気に見合う、フリルの着いた可愛らしい服装だ。
一応彼女も錬金術士であるが、彼女の服装は錬金術士としての機能性と可愛らしさのデザイン、両方を兼ね備えた服装だ。
ポーション専門店として繁盛しているおかげで、服装のデザイン性にも拘ることが出来るというのがわかる。
「えへへ、アレイシアちゃん、アルモニアちゃん、パン美味しかった~?あれ、近くのパン屋のおじさんに貰ったんだけど、気に入ってもらえたなら嬉しいな~。」
「はいっ、とても美味しかったですよ。」
「礼を言うわ、朝食を何にするかまだ考えていなかったから、丁度良かったわ。」
「良かった~、おじさんにもありがとうございますって伝えて置くね~。」
性格は見た目の通り、かなりふわふわとしているというか、緩く感じる性格だ。
人からも好かれやすく、学院でも人気者だ。
といっても、いつも人に囲まれている人々の中心人物という感じというよりは、結構積極的に自分から関わりに行って、いつの間にか中心に居る、といったタイプだ。
もしかしたら寂しがりやなのかもしれないが、そういう所も含めて努力するタイプなのだ。
なので、そういう成功を妬むような者は少ないし、お店も人気なのだろうな、とアレイシアは分析している。
「これから授業~?」
「ええ、貴女も?」
「うん、錬金術士として、新しい事にも挑戦したいからね~。」
ポーション専門店といっても、他への挑戦をしていないというわけではない、のも人気の秘訣だろう。
ポーションといっても、ただ怪我を治すだけではない。
回復の速度や治す内容、更に怪我以外にも毒や麻痺毒などといったものに対するポーション、魔力の回復ポーション。
更に、かけるタイプに飲むタイプ、撒くタイプなど。
撒くタイプなら匂いや効果範囲、飲むタイプなら飲みやすさや味など。
細かい差によって子どもやお年寄りにも使いやすいようにする必要がある。
更に、新しいポーションを考える必要もあるのだ。
だから、新商品開発の為にエクセもこうやって新しい理論の勉強の為に授業を受けるのだ。
「今度お礼に何か作ってそっちに送るわ。」
「ほんと~?わ~い、アレイシアちゃんの作る道具、細かい所まで作ってくれるからありがたいよ~。じゃあ、授業に行こう行こう~。」
「ええ、じゃあ、アルモニア、後でね。」
「は~い、エクセさん、アレイシア、またあとで!」
こうして、魔法学のアルモニアと錬金術のアレイシアとエクセの二人はそれぞれの学科の授業に向かうのであった。
そういえば、この物語の主人公はアレイシアですけど、この世界の主人公はアレイシアにするか、エクセにするか、それとも二人にするかもまだ決めていないです。まあゆっくり考えていくことにします。




