宝石商の水銀 その2
というわけで、実験から五日経った。
この間に、素材としての特性の研究から、本格的な錬金の実験を行ったりと、既に進行している。
もししっかりとした研究機関に素材としての公的な研究依頼だったらもっと時間をかけてゆっくりと研究するのだろうし、もちろんそちらの方が研究としては良いだろう。
だが、あくまでも今回はジュエリが個人的なツテの、個人的な依頼としてのものだ。
ならば、今回は錬金術士としての観点から、どういう素材か、どういう使い方をすればいいのか、どういう使い道があって既存の物とはどういう違いがあるのか。
そういう物を錬金術士として必要な物を調べれば良いのである。
こういう時に、別の分野での使い道を考えるのもその道のプロだ、という意見も存在するのだが……。
このアヨティスは、学術都市だ。
つまり、それぞれの専門家が存在する。
それはつまり、基本的には、その道の事はその道のプロに任せるのが、そのプロへの信頼にも繋がる。
もちろん、自分の専門分野外の事でも口を挟めるくらいの知識や経験を持っているなら、もしくはそれに値する発見をしたならば話は別だが……。
互いの仕事を奪いすぎない、というのは、お互いのプロとしての必要な配慮であり、気遣いでもあり、敬意でもあるのだ。
そういう意味では、アレイシアはまだまだである。
基本的にアレイシアは、自分で全部出来たら良いのに、と思うタイプであるし、知識を全部知りたい、と思うタイプだ。
もちろん、そういう好奇心旺盛だったり、知識欲溢れる人物を咎めたりはしない。
ここは学術都市なのだ、基本的には、ここの住民は、学ぶためにここに居るのだ。
学びたい、知りたい、出来るようになりたいという意思を褒めこそすれど、誰が咎めようなどと思うものであろうか。
問題は、そうするのは厳しい道のりであると同時に、そうやって自分の分野を広げるにはそれに見合う存在にならなければならないという覚悟が必要なのだ。
というわけで、有望株とはいえ、それでもまだまだ未熟な二人は今回は錬金術士として、自分の仕事をやるのが今回の役割なのだ。
「というわけで、情報共有~、ぱちぱちぱち~。」
「ふへへ~……ぱちぱちぱち~……。」
「はいはい、ぱちぱち。」
アレイシア、エクセ、ジュエリ。
三人でお茶会をしながら状況報告会をしようという事になった。
因みに用意したのはジュエリだ。
依頼した立場、というのもあるが、単純にアレイシアとエクセとお茶会したかった、というのも大きな理由だ。
ジュエリも若いが、それでも若い学院性二人と仲良くしたいのはストレス発散でもあるのだ。
「ふひひ、さて、もうすぐ一週間だけど~……どんな感じぃ~……?」
「……先にエクセからお願いするわ。」
「は~い。じゃあとりあえずこれっ。」
アレイシアの言葉に頷くと、エクセはコトン、と一つの瓶を置いた。
アレイシアとジュエリはその瓶を覗き込む。
「これは……ポーションかしら?」
「お~……薬効の抽出、出来たんだね~……。」
「まだ無毒化して飲めるようにしただけなんだけどね~。でも、とりあえず薬効自体は発揮出来るから、薬としては使える、くらいには来たよ~。もちろん、薬学専門の人だったら違う薬を作れるんだろうけど……多分ポーション以外の薬になるからね~。」
「無毒化出来るだけでも凄いと思うけれど……。」
置かれた瓶の中身は、緑色に光を発する水銀のような銀色の液体であった。
基本的に、ポーションは緑色、というのが一般的な共通認識である。
これは薬草から成分を抽出して、ポーションを作った結果緑色になるというのが一般的であった歴史があるからだ。
その為、基本的に錬金術士が売るポーションは緑色が多いし、逆に錬金術士側も売上の為に緑色に着色するという錬金術士も居るらしい。
「で、どういう効果があるのかしら?」
「それがね~、再生の効果を持つポーションになったんだよ~。」
「再生~……?普通の怪我の治療も、再生じゃ、ないの~……?」
「ああ、それはですね~、厳密にはちょっと違うんですよ~。」
「ふむふむ~……?」
エクセ曰く。
通常の治療のポーションは、再生能力を上げたり、有害な物質を消したりといった、一般的な治療の薬を即効性や携帯性を上げたりするのが通常の治療用ポーションである。
じゃあ今回の再生のポーションとの違いは何か、というと、再生のポーションは再生という部分のみに集中した効果であり、例えば元々の部位の欠損などが発生した場合、スライムが分裂するかのように同じものが生えてくる、というのが再生の治療を行うポーションである。
「……って感じの認識で良いですよ~。」
「それって……。」
「ふへへ……あれ、これって……めちゃくちゃ凄い素材~……?」
「素材としてはとてもすっごいですっ、それ以上に加工とかがもっとすっごく難しいですけど~。」
「ふへへ……もしかして、コストに見合ってない……?」
「効果の高い高級なポーションなら、その場での部位欠損とかは治せますからね~……。多分再生のポーションとしての売り方を考えるなら、かなり高級にして、時間が経った部位欠損や、重病患者の為に使う……くらいになりますかね~。」
「うへへ~……これは、結構素材としてあまり安売り出来ないね~……。」
「安売りして怪我の判断を、腕を斬り落としてこれを使えばいい、みたいになったら大変ですよ~。しかも作るのに凄く技術が要ると思いますし~。……と、私から報告出来る内容はこれくらいですかね~。」
「ふへへ……十分、良い情報だったよ~……エクセちゃん、ぐっじょぶ……。」
エクセの報告の内容に、嬉し気に返すジュエリ。
報告内容としては、ジュエリとしては満足だったようだ。
「さて、次はアレイシアだよ~。」
「良い報告だったら……嬉しいな~……うへへ~……。」
「そうねぇ……まあ、とりあえず、これを渡すわ。」
アレイシアは、レポートを二人に渡した。
これから、レポートの内容の説明が始まる。
この物語を、私の書く物語のオールスターみたいにしたいなとは思うんですけど、まだまだ執筆始めて年数も書いた文量も少ないので、先は長いなあと思います。




