・遺物:反物質セル - 男は宇宙に出ても変わらない -
「ぬおぁっっ?!!」
潜入開始早々、銃撃を受けた。おっさんの盾に直撃した銃弾が火花を散らした。
「こっちだおっさん!!」
「お、おうっ!!」
タレットのリロードの隙に奥右手にあった飛び込んだ。盾を構えたままおっさんも後に続いた。
「き、聞いてたけど聞いてねぇぜ、こんなんっっ?!! なんだよあの手数はよぉっ!!?」
「あれがオートタレットだ」
室内を探るとコンソールを見つけた。そこからゴンドゥが解析したパスワードを叩き込むと、この区画の防衛システムが止まった。
「おい坊主、こりゃなんだ?」
それから軽く使える物はないか物色すると、おっさんにハンドガンを突き付けられた。そいつは安全装置が外れていた。
「そ、そいつをこっちに向けんな……っっ」
「お? コイツ、俺らを撃ってきた弓に似てんな?」
「ソイツを捨てろ原始人っっ!!!」
引き金に指をかけたまま銃口をのぞき込む男からハンドガンを奪い取った。
「ハハハハッ、いつも余裕ぶってる坊主の珍しい顔が見れちまったなぁ」
「死ぬぞバカ!!」
暴れる心臓を抱えて、それから銃の状態を確認した。それは主に宇宙船内部で使われるディスラプターガンだった。放たれたエネルギーが対象を包み込むことで、施設を破壊することなく敵を蒸発させる凶悪な武器だ。
それがどういう物なのかをおっさんに説明してやった。
「ピンとこねぇな」
「だろうよ……。ま、こいつは収穫だ、ありがとよ、おっさん」
「へへへ、素直な坊主も悪かねぇな」
ディスラプターガンはエネギーセルが尽きていた。状態はいいので動力さえ確保すれば頼もしい得物になる。守られるだけの立場もこれでおしまいってことだ。
「いのかねぇな……?」
「タレットか? そりゃ止めたからな、ジェイたちに通信を入れて回収させる」
「やるじゃねぇか、坊主」
「ゴンドゥの手柄だ。あいつがくれた情報がなかったら止められなかった」
奥に進むとまたオートタレットの迎撃を受けた。それをおっさんが盾で防ぎ、強行突破してコンソールにたどり着いては機能停止させる。
「お……っ、なんだよそれ!? おおーーっっ、いいじゃないかね!!」
「ま、悪くない」
3つ目の部屋からは不良管理者のお宝がコンソール内に眠っていた。リタやアムには見せられないような[お楽しみ]だった。
「いいね、いいじゃないかね……。なぁ、これ持って帰れねぇかね!?」
「そんなに気に入ったのなら回収しておっさんの部屋のコンソールに入れてやるよ」
「話わかるじゃねぇの!」
「俺も男だからな」
男がバカなのは宇宙でも地上でも変わらなかった。海賊時代の仲間にもこういう露骨な画像を自分の戦闘機にペインティングするやつが多くいた。
「……けど、リタとアムの方がずっと綺麗だ」
「ほー……ぞっこんじゃねぇの」
「事実を言ったまでだ。あんなに綺麗な女は他にいない」
「羨ましいねぇ、坊主の若さが。おっさんくらいになると一人の相手にそこまで一途にはなれねぇもんさ」
目当ての格納庫はすぐそこだ。再びおっさんに守られながら奥に進むと、銃撃のお出迎えもなく一際大きな隔壁が立ちはだかった。
解析したパスを入れるだけでその隔壁が開き、俺たちはその奥にある広い空間へと警戒しながら入り込んだ。
「あれがハンブッシ・セールか?」
「ああ」
反物質セルとは棺桶みたいな形をした巨大な電池だ。銀色に輝くそれがまるで墓地のようにひしめいていた。
「あれがあれば宇宙に行けるのか?」
「そうだ」
「やったじゃねぇか、坊主!!」
武器庫のコンソールにパスワードを入れてシステムを乗っ取った。通信で船へと報告を入れて電動フォークリフトを呼んでもらった。
ディスラプターガン用のエネルギーセルもあった。装填すると青白く発光してエネルギーゲージがマックスまで伸びた。
「裏切るなら今かね?」
「ああ、今裏切れば古代人の武器がアヴァロニア王国の物になる」
「お前らが納めた金貨3万枚が欲しいって言ったら……くれるかね、アヴァロニア王は?」
「応じるだろう。アークトゥルス級が手に入ったら世界征服を始める気みたいだからな」
おっさんは黙ってこちらに剣を向けて、こちらはディスラプターの銃口を上げた。
「やるのか?」
「いや……」
おっさんは苦笑いを浮かべて剣を腰に戻した。今回のはジョークって感じではなかった。
「あのクソ野郎の世界征服と、坊主が見せてくれる星の世界。どっちが見たいかと言えば答えるまでもない話ではないかね?」
「言っとくが星は持って帰れねーぜ」
「そりゃ残念だ。だがここで裏切ったら坊主が回収してくれた[お楽しみ]が見れないではないかね? ああいうの、もっと、ないかね……?」
「え……? いや、まあ……」
鼻息荒くしておっさんはそう聞いてきた。なんて教育によくない大人だろう。おっさんの顔は本気も本気だった。
「ゴンドゥのいる恒星系基地まで行けば、誰かしらが持ってんじゃねぇか……?」
「マジかよ!? 決めたっ、そいつを手に入れるまで裏切らねぇ!!」
「あ、ああ……。どこまでが本気で、どこまでジョークなんだよ、アンタ……」
俺も男だ。見たくないと言ったら嘘になる。
やがてフォークリフトを操縦するジェイや同行のリタとアムがやってくるとこの話は一端おしまいになった。
「おい、ジェイ、後でおっさんの部屋にきな? 超いいもん見せてやるぜ……」
男ってのはいつの時代も変わらなかった。ジェイがあのデータを見てどんな顔をするのか楽しみで、おっさんと一緒に俺も悪い顔をしていた。
公序良俗に反するものをカッコイイと感じてしまうのは男のさがなのかもしれない。猥褻だとわめくやつがいるからこそ、宇宙海賊たちはあえて女の裸体を戦闘機にペイントする。消えちまった仲間が恋しかった。
・
何一つアヴァロニア王国に古代の遺産をくれてやる気はない。武器庫にある物品は根こそぎ全てを回収し、隔壁のロックも元に戻した。
アヴァロニア王国が俺たちの行動に気付いたのは全てを積み込み終えて正面ゲートを再び土砂で埋め直した後のことだった。
「陛下、タマハラ族のやつらが郊外の山林を掘り返していったと、軍からの報告が……」
王とその側近は謁見の間に盗聴器が仕掛けられているとも知らずにベラベラと喋ってくれた。
「やつらめ……金を納めてきたのはこのためだったか……」
「しかし陛下、こちらは金貨3万枚を得ました。結果として悪くない取引だったのでは……?」
「バカめっ!! あの星の船のような貴重な宝を、我の領地から盗んでいったのだぞ……!! 汚らわしいタマハラ族と竜使いごときが……っっ!!」
騙されたことに気付いた王の叫びは傑作だった。やはりアヴァロニア王家は俺たちを本心では見下していた。
アークトゥルス級は反物質セルの交換のために安全な母港へと引き返した。予定通りの夜明け前には光臨の丘に到着し、郊外の平らな土地へと着陸した。
動力炉を止め、古い反物質セルを全て抜き取って、新しい物に交換する。古代遺物を保管するために新造してもらった倉庫があったが、すぐにそこもいっぱいになってしまった。
皆が真夜中の盗掘作業で疲れていた。しかし着々と崩壊を迎えようとしている太陽の民の窮状を考えれば休めなかった。




