第4話 化物は突撃訪問される
あくる土曜日の朝。
この日、一樹にとっての悪夢が始まる…
「ふぁ~、母さんおはよう」
「あら、カズくんおはよー!」
「飯は?」
「お味噌汁以外はできてるわよ~」
「あいよ、すぐ作るわー」
影山家の朝食において、味噌汁は非常に大事なものである。
具材の厳選はもちろんの事、全国各地のあらゆる味噌を取り寄せ、研究に研究を重ねたオリジナルブレンドの味噌。
そして、またもや全国各地から取り寄せ、研究に研究を重ねた出汁。
これらが合わさることによって、365日毎日飲んでも飽きない、究極の味噌汁が、完成したのであった。
「相変わらずカズくん、こだわるよね~」
半ば呆れたように言う母。
「当たり前だ。焼き物はある程度の勘があればソコソコの物ができるけど、汁物や煮物はその時の味にに対し、気温、湿度、気圧も考えながら何をどんだけ入れるかっていう、経験と勘が物を言うからな」
「むぅ~!ママのだっておいしいのに!」
プンスカ怒る母に対し
「カッカッカッ!ウマイ物にかける情熱と研究量が違うわ!」
そう豪語する一樹。
伊達に出汁の研究だけに2年も3年も費やしてないだけはある。
食は一樹にとって唯一の楽しみといっても過言ではないもの。
生き甲斐とでも言うべき物を見つけ、それに全身全霊をかけた一樹に、母が敵うはずもないのは当然であり、必然でもある。
「よし、できた。今日も完璧だ!」
最後の味見をし、一樹が納得した所で…
ピンポーン!
「あぁん!?誰だ!この朝っぱらから!」
「もう、すぐに怒らないの!でも、こんな朝早くから誰だろうねぇ?」
「知らん!とりあえず出てくるから、母さんは飯をよそっておいて」
「わかったけど、喧嘩はダメよ!」
「知らねーよ!ったく、今から飯だっつーのに…」
そうぶつくさ言いながら玄関に向かう一樹。
がちゃ!
「誰だよ?こんな朝っぱらから!」
そう喧嘩腰でドアを開けた。
そこには見覚えのある人影が。
「わたくし、私立光星高校生徒会会長、次元綾乃と申しますが、影山一樹くんのお宅でよろしいでしょうか?」
げっ!生徒会長!このままクソアマ、なんで家知ってんだよ!
顔には出さず、胸の内で悪態をつく一樹。
それに対し、綾乃は目の前の男が一樹だと気づいてない様子。
それもそのはず。
普段の一樹は、学校ではかけている伊達眼鏡もかけず、目元を隠す様なくせっ毛の前髪も後ろに流してある。
そして、隠れていたは目は鋭いもので、おまけに三白眼。
これで一樹だとわかれと言うのが無理な話だ。
「そうだけど、一樹は今いないよ?」
しれっと笑顔で嘘を付く一樹。
「そうですか…失礼ですが、一樹くんのお兄さまでしょうか?」
「あぁ、そうだけど?一樹に何か用だった?」
「ええ、昨日の放課後に生徒会室に来るよう言ってあったのですか、来なかったので、なにかあったのかと思い、訪問させて頂いたのですが…」
「あぁ、昨日ね。なんか体調悪かったみたいで、帰ってきてすぐベットに潜り込んでたよ。」
「そうなのですか…ちなみに帰りの時間はわかりますか?」
「さぁ?結構遅くなるみたいだけど、時間まではわからないかな。」
しつけーなぁ、早く帰れよ!
朝食をお預けくらって、イライラしながらも笑顔で対応する一樹。
「しかし、昨日まで体調が悪かったのでは?」
「あ、あぁ、朝になったら完全に良くなったみたいで…」
うるせぇ!そんな所突っ込むんじゃねーよ!
適当についた嘘で足元をすくわれそうになり焦る一樹。
自業自得である。
「くっ!…くはははっ!」
「な、なんだ!?」
「言ったであろう、影山一樹!私の目が誤魔化せるとは思うな!」
「なっ!?」
「なぜわかったか、か?」
「チッ!」
「簡単な事だ。いくら眼鏡と髪型で顔を誤魔化しても、骨格と声までは誤魔化せまい!」
くそっ!思ったよりも目が良かったみたいだ…
まさか、そんな事でバレるとは思いもよらなかった。
だが、まだ疑問は残る。
「ってか、どうやって家の場所を調べた?」
「そんなものは、もっと簡単だ!貴様の担任に呼び出しても一向に来ない旨を伝え、なにかあったのではないかと心配だから、家を訪問したいと言って聞いたのだ!」
おいぃぃぃ!
個人情報保護法どこ行った!?
仕事してください、個人情報保護法さん!
ってか、クソ担任もバカか!クソったれ!
「チッ!ってか、こんな朝っぱらから迷惑だろうが!」
「朝っぱらからでないと、貴様が逃げるかも知れないだろうが!」
お見通しかよ!?
「チッ!クソったれが!」
「クックック!」
突然笑い出した綾乃。
それを不思議そうに眺める一樹。
「なんだよ?急に笑いだして。」
「いやな、今の貴様のほうが素なのであろう?」
ハッとした一樹。
一樹はイジメられっこという仮面が剥がれた…
いや、剥がされた事に気づいた。
「チッ!だったらなんだってんだよ!?」
そう言いながらソッポを向く一樹。
「いや、どうという事はないが、なぜ貴様はあんなマネをしているのだ?」
「あんなマネ?」
「イジメられている振りの事だ。」
「振り?なんの事だ?俺は弱っちぃからイジメられてんだよ。」
「ほぅ!弱っちぃ?弱っちぃヤツがあんなボコボコに腹を蹴られた直後にすぐ立ち上がり逃げだせるのか!?」
「あ、アレだ!腹に雑誌入れてたんだよ!」
焦って適当な事を言う一樹だが…
「バカか貴様は!雑誌なんぞ入っておったら蹴っていた者にもわかるし、音でわかるわ!いい加減、己の力を認めろ!私はその辺のポンコツ共と違うぞ!」
もちろん通じなかった。
…やべぇ、なんてしつこさだ。
「チッ!もし俺が強かったらなんなんだよ?」
いい加減うんざりしてきた一樹は口を滑らせてしまった。
「決まっておるだろう!私と勝負しろ!」
「はぁ?なんでだよ?」
「決まっておる!強き者がおるのなら、戦う!当たり前の事だろう!」
「うわぁ…マジか。てめぇクソ脳筋だな…」
一樹のげんなりゲージは振り切れ寸前であった…
「脳筋とは失礼な奴だな!武人の嗜みだ!」
コイツ、マジでやべぇ奴だ!
「はぁ、てめぇがなんと言おうが勝負なんてしねぇからな!」
「ほぅ…負けるのが恐いのか?」
「はっ!そうだよ!俺は弱っちぃからな!」
「そうやって貴様が弱い振りをするから、郷田のような男が調子に乗るのであろう?」
「チッ!知らねーよ!」
「力あるものには責任と義務があるのだ。貴様はその責任と義務から逃げているだけだ!」
「ハッ!それはてめぇの言い分だろ?てめぇの言い分を俺に押し付けるな!」
「ならば、なぜだ!?なぜそこまで力を隠し続ける!?」
「てめぇには関係ねぇだろうが!」
「いや、関係ある!力あるものとして、私は手の届く範囲で 弱きを助け、尽力してきた!だが貴様はどうだ?なんだその体たらくは!?」
ブチッ!
そんな音がなったような気がした。
そして、底冷えするような声が一樹から漏れる。
「は?知らねーよ。ってか、あんま調子に乗んなよ人間が。てめぇにはわからねぇだろうなぁ?力あるものの責任?義務?バカかてめぇは。余りある力は周りにも被害が及ぶんだよ…」
最後は消え入りそうな声になるが、その時…
「カズく~ん!どうしたの~?結構長い間おしゃべりしてるみたいだけど。って、あれ?…まさか!彼女!?もう!なんでもっと早く連れて来ないのよ!?」
この重い雰囲気の中、ブッ込んでくるあたりは、さすが母である。
「はぁ!?バカか!ちげーよ!頭沸いてんじゃねーよ!」
「貴様!お姉さまにその物言いは失礼だろうが!」
「はぁ!?お姉さま!?てめぇの目は節穴か!?どう見たってババアだろ!?」
「ちょっとカズくんヒドイ!ママに対してババアなんて!」
「なんと!お母様でしたか!それは失礼しました!」
「あらあら、いいのよ!むしろお姉さまなんて嬉しいわぁ!」
「申し訳ありません。とてもお若いので、ついお姉さまかと勘違いしてしまいました。」
「あらあら、いいのよ~!カズくん!なんでこんな綺麗な彼女がいるのに連れてこないのよ!?」
「だから彼女じゃねーって!てめぇも否定しろよ!ってか、ババアも人の話聞けよ!」
「すいません、挨拶が遅れました。わたくし、私立光星高校生徒会会長、次元綾乃と申します。」
「あらあら、ご丁寧に。私は一樹の母の影山リサです。よろしくね、綾乃ちゃん!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
そう言いながらお互いに頭を下げあった。
「無視かよ!?」
「それよりカズくん!朝御飯、冷めちゃうわよ?」
「人の話聞けって!はぁ…それより、そういう事だ。とっとと帰れよ。」
「カズくん!追い返すなんて、綾乃ちゃんがかわいそうよ!あ、そうだ!良かったら、綾乃ちゃん朝御飯食べてかない?カズくんのお味噌汁美味しいよ?」
「なに?貴様、料理などするのか?」
「わりぃかよ?」
不機嫌そうに言う一樹な対して、ニヤリとする綾乃。
「いや、別に…それより貴様の料理の味には興味あるな!」
「はぁ!?バカ言うな!とっとと帰れよ!」
焦る一樹に対して綾乃は…
「フッ、何をバカな事か!お母さま!是非ご馳走になります!」
「わぁ!ホント!?すぐ準備するね!」
そう言って母は朝食の準備に向かった。
「うわぁ、マジ最悪。お前、マジで何しに来たわけ?」
「決まっておるだろう!勝負しに来たのだ!」
「もういい…とっとと飯食って帰れよもう!」
「貴様が勝負をとっとと受ければ良いのだ!」
「はぁ、もういい…」
そう言いながら一樹は諦めて食卓に向かうのであった。
どうやら、極少人数の方ですが読んで頂けてるみたいです。
みんなどうやってアクセス伸ばしてるんだろう…(´Д`|||)




