9/24
9
ともあれ、みゆきに「顔つきが変わった」なんて言われた僕は、控えめに笑って席についた。それから、何でもないことのように口にした。
「ねえ、しゃぶしゃぶって食べたことある?」
どこか惨めな響きを添えて、僕は話を続けた。
「俺、しゃぶしゃぶ食べたことないんだ。うち、母子家庭で貧乏だったからさ」
――と、架空の身の上話をはじめたのだった。
彼女がデリヘル嬢だからこそ、何を言おうと、その後どうなろうと知ったことではない。会話の行方なんてどうでもいいはずだった。けれど、大した嘘ではないとはいえ、胸の奥にはかすかな後ろめたさが残っていた。




