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ベッドで横向きになったまま、「ねえ、今晩一緒に食事しない? つきあってよ」と誘うと、みゆきは僕に目を向け「今日はもう仕事を終えようかな」と呟いた。「一度事務所に戻らないといけないから」と言い、すぐに戻ってくると告げた。僕たちは駅前で落ち合うことにした。
彼女は僕の職業について、いっさい訊いてこなかった。他のデリヘル嬢たちとは違い、どう言えばいいのか、お金に執着していないように見えた。お高くとまった人かと思っていたが、何者なのかもわからない僕と食事に行くなんて、変わった人だとも思った。あるいは、ただの寂しがり屋だったのか、その場に飽きてしまっただけなのかもしれない。
みゆきと僕は部屋を出て、ホテルの前でいったん別れた。僕は傘をさして駅に向かった。
十五分もしないうちに、みゆきがやって来た。口元には、微笑んでいるような表情が浮かんでいた。
ブラウスの上に上着を羽織り、紫色のスカートに、先の尖ったハイヒールを合わせていた。
傘をさしたみゆきが、雨に濡れた看板の灯が滲む繁華街を歩いてくる。光と闇が煙るあいまに、彼女の姿があった。
それから四十九歳になった今に至るまで、僕がみゆきのことを覚えているなど、彼女は知っていただろうか。




