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電話を終えたみゆきと何を話したのか、わずかだが覚えている。そのあと彼女が話し始めたのは、好きな芸能人のことだった。みゆきによれば、関東近県でコンサートがあると必ず足を運び、ハチが花に群がるように、出待ちをしているのだという。


みゆきのような大人の女性が芸能人の追っかけをしているとは意外だった。そんな話を聞きながら、彼女ほどの美貌があれば、石井竜也も心を惹かれるのではないかと思った。


焦げた肉が網に張り付くころ、みゆきは座ったまま会計を済ませ、自分の携帯電話の番号を二つ教えてくれた。それから、苗字も教えてくれた。


「どっちにかければいいの?」


「どっちでもいいよ」


当時の僕は、まだ携帯電話を持っていなかった。アパートにあったのは、電話加入権を買うだけで八万円ほどかかった固定電話だけだった。


しかし、世の中はすでに携帯電話の時代へと移り変わっていた。これを機に、僕も携帯電話を買った。機種はdocomoのN209iだった。世間からすれば、かなり遅い買い物だったことは間違いない。


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