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肉が運ばれてくると、みゆきは右手に持っていた携帯を左手に持ち替え、男と話しながら慣れた手つきで肉を焼き始めた。焼けたタン塩を僕の小皿に入れてくれる。
僕が食べている間にも、みゆきはまたタン塩を焼いて、小皿に入れてくれた。僕が口パクで「もういい、いらない」と伝えると、みゆきは目でくすっと笑った。
そんなやり取りが、タン塩からカルビまで続いた。ロースを焼く頃には、僕がトングを握って肉を焼いていて、みゆきは相変わらず電話に夢中だった。
——おい、いい加減にしろよ。
心の中で少し毒づいたが、平気な顔を装っていた。
みゆきの貴重な時間を割いて食事に付き合ってもらっているんだから、感謝しなきゃいけない。そう自分に言い聞かせていたけれど、いったいどっちが付き合ってもらっているのか、もうよくわからなくなっていた。
僕は彼女にとって、特別な存在じゃないんだな。今こうしてみゆきと一緒にいることが、かえって空しくなってきた。
……なんてね。確かにそうかもしれないけど、当時、僕はまだ携帯電話を持っていなかったから、目の前で携帯電話を使って話しているみゆきを見ているうちに、僕も携帯電話というものが欲しくなっていたのかもな。




