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パラレル会議 主のうたた寝

地獄の一室。静かな時間だった。


書類仕事の途中。

誰も大きな声を出さず、ただそれぞれの作業をしていた。

 

そして、気づけばこはくが眠っていた。

窓際に静かに座ったまま、わずかに頭を傾けている。

呼吸は穏やか。

衣の袖が床へ流れ、黒い髪が肩を滑っている。

転生前清明が最初に気づいた。


「……寝ているな」


道満が視線だけ向ける。


「ああ」


転生後清明は、完全に手が止まっていた。

見ている。ずっと見ている。

道満が嫌な顔をする。

 

転生前清明は静かに立ち上がった。

部屋の隅にあった薄布を取る。

そして自然な動作で、こはくの肩へそっと掛けた。

起こさないように。丁寧に。


「冷える」


それだけ言う。静かな気遣いだった。

こはくは起きない。

転生後清明がそれを見る。少し納得したように頷く。


「優しいな」


転生前清明は首を傾げた。


「普通ではないのか?」

「普通だ」

「だがこはくには必要だ」


転生後清明の声は妙に真面目だった。

道満が深くため息を吐く。


すると今度は道満が立ち上がった。

こはくの近くへ行く。

転生後清明が見る。転生前清明も見る。


道満は慣れた動作でこはくを抱き上げた。

軽い。何度もやっている動きだった。

衣を乱さず、頭を支え、そのまま静かに歩く。

転生前清明が少し目を見開く。


「随分自然だな」

「寝床へ運ぶだけだ」


道満は短く返す。


「こんな場所で寝かせておく気か」


転生前清明は頷く。


「なるほど」

「慣れている」


転生後清明はじっと見ていた。

道満が嫌な予感を覚える。

 

寝台へこはくを下ろす。

静かに横たえ、衣を整える。髪を払う。

起こさない。完全に“慣れた世話”だった。

転生前清明は感心したように呟く。


「長いのだな」

「……まあな」


珍しく道満が否定しない。


その瞬間だった。転生後清明が動いた。

当然のように寝台へ近づく。


道満「待て」


転生後清明は迷いなく、こはくの隣へ入ろうとしていた。


「何をしている」


道満の声が低い。転生後清明は真顔だった。


「共に寝る」

「やめろ」

「伴侶として自然だろう」

「伴侶ではない!!」


即答。転生前清明が静かに瞬きをする。


「未来の私はそこまで行くのか」

「行きたい」

道満「願望を実行するな」


転生後清明はこはくを見る。

静かな寝顔。距離が近い。


「こうして共に眠るのは理想だ」

「却下だ」

「何故だ」

「お前が今ここで寝たら起きた時説明が面倒だからだ!!」


転生前清明、少し考える。


「確かに誤解を招くな」


転生後清明は不思議そうだった。


「誤解ではない」

道満「最悪だ」


転生後清明はまだ諦めていない。

寝台の横に座る。距離が近い。視線が柔らかい。

完全に“伴侶ごっこ”の顔だった。

道満は頭を押さえる。


「お前は本当に……」


転生前清明が静かに言う。


「未来の私は、こはくが絡むとかなり行動力が増すのだな」

「増す」


転生後清明が真顔で頷く。


道満「誇るな」


すると眠ったままのこはくが、少し動く。

無意識に転生後清明の方へ寄った。

ほんの少し。衣の端に触れる程度。

転生後清明、固まる。


道満「……っ」


最悪だった。

転生後清明は静かにこはくを見る。

数秒沈黙。


「……今、寄ったな」

「偶然だ」

「寄った」

「偶然だ!!」


転生前清明は静かにその光景を見ていた。

それから小さく頷く。


「なるほど」

「未来の私は、これで駄目になったのか」


道満は深く、深くため息を吐いた。


「そうだろうな……」


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