パラレル会議 道満はこはくが好きではないのか?
地獄の一室、また始まっていた。
転生前清明。転生後清明。こはく。
そして巻き込まれ枠の道満。
閻魔は途中で笑いながら消えた。
「後よろしくー」
最悪だった。
転生前清明は、静かに考え込んでいた。
未来の自分は、こはくを愛している。
伴侶になりたいと言う。触れたいと言う。唯一になりたいと言う。
そこまでは理解した。
「……道満」
不意に名を呼ばれる。
道満は嫌な予感しかしなかった。
「何だ」
転生前清明は純粋な顔で聞く。
「お前は、こはくをどう思っている?」
空気が止まる。転生後清明が道満を見る。
こはくも静かに視線を向ける。道満だけが固まった
「……は?」
数秒遅れて出た声。
転生前清明は普通に続ける。
「今までの話を聞く限り、お前も長くこはくの傍にいるのだろう」
「未来の私ほどではないが、強い執着があるように見える」
道満の眉が引きつる。
「執着ではない」
「では何だ」
「……」
詰まる。転生後清明が静かに口を開いた。
「道満もこはくのことが好きだぞ」
「何故お前が答える?!」
即座に怒鳴る。
転生後清明は真面目だった。
「事実だろう」
「お前は死後の永遠を預けている」
「こはくのためなら無茶もする」
「触れられる距離に他者が来ると機嫌が悪い」
道満「分析するな!!」
転生前清明は静かに頷く。
「なるほど、好意はあるのか」
道満は頭を押さえた。最悪だった。
未来の清明がいるせいで逃げ道がない。
しかも本人は真顔で補足してくる。
「道満は言葉にしないだけだ」
「長い、重い、あと独占欲が強い」
「黙れ」
道満の声が低くなる。
だが転生後清明は止まらない。
「こはくが乱れると誰より焦る」
「他人に触られるのを嫌がる」
「ずっと傍にいる前提で動いていた」
転生前清明、静かに納得。
「……確かにそれは好意だな」
道満「お前まで納得するな」
道満は深くため息を吐いた。
そしてこめかみを押さえる。
「違う。伴侶だの何だのではない」
転生後清明が即座に返す。
「だが好きだ」
「好きではあるが!」
しまった、と思った時には遅い。
沈黙。
転生前清明が静かに瞬きをする。転生後清明は頷いた。
「認めた」
道満「貴様……!!」
転生前清明は、道満を見る。
「お前は未来の私と違い、独占を求めていないのか」
道満は少し黙る。
言葉を選ぶように視線を逸らした。
「……あれは元より主だ」
「ずっと傍にいるものだと思っていた」
声は低い。
どこか諦めたようでもあった。
「だから今さら伴侶だの、そういう発想がなかっただけだ」
転生後清明が小さく頷く。
「油断していたのだな」
道満「お前は本当に黙れ」
だが転生前清明は真面目だった。
「なるほど」
「お前は“既にあるもの”として扱っていたのか」
「未来の私は、“失いたくないから求める”」
「対照的だな」
道満は答えない。図星だった。
転生後清明は失う前提で動いている。
人間だったから。寿命があるから。だから求める。
だが道満は違った。終わらない前提だった。
死後も。契約も。従属も。
こはくがそこにいることが当たり前だった。
だから欲しがるという発想が、少し遅かった。
静かな空気の中。こはくがふと動く。
道満の近くへ来る。
それだけ。それだけなのに、道満の言葉が止まる。
転生前清明がそれを見る。転生後清明も見る。
こはくは何も言わない。ただ道満の近くにいる。
道満は数秒固まったあと、低く呟いた。
「……ほら見ろ」
「こういうところだ」
転生後清明が頷く。
「分かる。だから好きになる」
道満「共感するな!!」
転生前清明は静かにその光景を見ていた。
そして小さく息を吐く。
「……未来の私は」
「こういう積み重ねで、戻れなくなったのだな」
転生後清明はこはくを見たまま答える。
「そうだ」
道満だけが机に突っ伏した。
「何で毎回俺だけ羞恥を味わうんだ……」




