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パラレル会議 転生前の清明と転生後の清明

地獄の一室。道満はすでに帰りたかった。

原因は目の前にいる。


清明。

――二人。


片方は、転生前。

まだ輪廻へ戻る前、地獄で働いていた頃の清明。


もう片方は転生後。

人として生を送り、こはくへの感情を盛大に拗らせた後の清明。


さらに最悪なことに、こはくまでいる。

妙に静かだった。

 

転生前清明は、こはくを見る。

静かな存在だと思う。不思議な気配をしていると思う。だがそれ以上ではない。

ただ、“気になる存在”という程度。


対して転生後清明は、こはくが部屋に入ってきた瞬間から視線が固定されていた。


道満はそれを見て深いため息をつく。


(始まった)

 

こはくは特に気にした様子もなく、その場に座る。

転生前清明が少し不思議そうに言う。


「未来の私は、そんなにこはくを好いているのか」


転生後清明は即答した。


「愛している」

道満「即答するな」

転生前清明「……?」


本当に分からない顔。

転生後清明は真面目だった。


「お前はまだ理解していない。人として生きると感情は変化する」


転生前清明は腕を組む。


「変化、か」

「私は今、こはくを見て落ち着くとは思う」

「だが恋慕とは違う」


転生後清明は静かに頷いた。


「最初はそうだった」

道満「最初って言うな」


こはくは黙って二人を見ている。

転生前清明はその視線に気づき、普通に話しかける。


「何故未来の私はそこまで執着したのだ?」


こはくは答えない。沈黙。

だが転生後清明はその沈黙を見て、少し柔らかい顔になる。


「拒否されていない」

道満「怖い解釈をするな」


転生前清明は本気で分析を始める。


「つまり私は……長期間接触した結果、情動が変質したのか?」


転生後清明は真顔で答える。


「そうだ。こはくは危険だ」


道満が咳き込む。


「お前が言うな」


転生前清明はさらに首を傾げた。


「危険?」


転生後清明はこはくを見る。視線が柔らかい。


「好きになってしまう」

転生前清明「……?」

道満「だから真顔で言うな」


そこで、こはくが不意に動く。

静かに、転生前清明の近くへ寄った。


転生後清明、止まる。道満、察する。


(あー……)


こはくはただ、近くを通っただけだった。

だが距離が近い。転生前清明は普通に受け入れる。


「?」


特に意味を見出していない。

転生後清明の目が細くなる。


「近い」

道満「始まった」


転生前清明は困惑する。


「何がだ」

「こはくは元々距離感が近いだろう」


転生後清明、静かに言う。


「そうやって人を駄目にする」

道満「被害者面するな」

 

こはくは静かに座ったまま。

転生前清明は、未来の自分を観察するように見ていた。


「……なるほど。人としての生が、お前をこうしたのか」


転生後清明は頷く。


「感情は一生ごとに移ろう。私はこの生で、こはくを選んだ」


真面目だった。あまりにも真面目。

転生前清明は少し考える。そして、こはくを見る。


「未来の私は、お前に触れるのか」


転生後清明、即答。


「触れる」

道満「答えるな」

「抱きしめる」

道満「増やすな」

「伴侶になりたい」

道満「やめろ!!」


転生前清明は完全に思考停止していた。


「……私が?」


本気で理解できない顔。転生後清明は静かに頷く。


「分かる日が来る」

転生前清明「来ない気がする」

道満「私もそう思いたい」


するとその時。

こはくがふと、転生後清明へ視線を向ける。

ほんの短い動き。

だが転生後清明は、それだけで静かに表情を緩めた。


転生前清明、それを見る。

少しだけ黙る。


「……ああ」


小さく呟く。


「未来の私はこれを積み重ねたのか」


転生後清明は静かに答える。


「そうだ」


その声は妙に穏やかだった。

道満だけが机に突っ伏す。


「何で俺だけ正気側なんだ……」

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