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第84話 襲撃

たくさん愛されて

“大丈夫だよ。今度は上手くいくから。”

と甘く囁くから

なんだか今度こそ上手くいくような気がしていた

小説しか1番に考えられない欠陥人間でも

1番に愛する人を優先出来ない最低な人間でも

拓人さんが許してくれるなら

普通の恋人同士になれるんじゃないかなんて

そんなことを夢見てしまった

そんなわけ…なかったのに

拓人さんは私を1番に愛してくれているのに

私は小説のことばっかり考えているなんて

やっぱり上手くいくわけなかったんだ

たくさん愛してくれることが心地よくて

自分から手放すことが出来なくて

結局、前よりも最悪な結果を招いてしまった

自分から突き放さなければいけなかったのに

私が拓人さんを幸せになんて出来るわけがなかったのに

…今更後悔しても遅いけど



拓人さんと同棲して半年が経った

小説活動も順調だし、拓人さんとの関係も些細な喧嘩はあるものの良好な関係だと言えるだろう

今日は拓人さんは会社の交流パーティがあるそうで

珍しく夜遅くに帰ってくるようだ

夜遅くに帰ると言っても22時には帰ってくるそうなので

私はリビングで小説を読みながら拓人さんの帰りを待っていた

小説を読み終えるとちょうど22時だった

スマホのLINEを見ても拓人さんから連絡はない

…おかしい

拓人さんは家に帰る時間をわざわざ毎回LINEする

私が返信したことはないけれど

今日は22時に帰ると言っていたのにまだ帰って来ないし、帰りの連絡のLINEすらない

相当酔っているのだろうか…

こんなことは初めてで心配になる

私は“大丈夫?”とLINEをしてみたが返信はなかった

おそらく悪酔いして連絡することも出来ない状態なのだろうけど…

いつもの連絡がないだけでこんなにも不安な気持ちになるんだなと思った

不安な気持ちを抱えながらリビングで拓人さんの帰りを待っていると


ガチャっと音がして玄関の扉が開いた

私はソファから急いで玄関へと向かうと

そこには女の人に介抱されている拓人さんがいた

「…拓人さんは一人暮らしだと聞いていたのに。誤算だったわね。まさか迫田玲と同棲してるなんて。」

と女の人が言う

「えっと…拓人さんを送ってくれてありがとうございました。私と拓人さんの関係は出来れば内密にして頂きたいです…。」

そう言いながら私は女の人から拓人さんを引き離して肩に抱える

重い…

「うーん…それは難しいかな。」

「…。」

「それにしてもしくじったなぁ…拓人さんの自宅に連れ込まれたから同意の上だったと主張したかったからここに連れてきたのに。こんなことならホテルに行けばよかった。」

「あの…何の話をしてますか?」

「拓人さんに薬を飲ませて、昏睡状態にさせてから自宅に押しかけて既成事実を作る計画だったんだけどなぁ…」

「え…は…?」

「ここまで来て計画を放棄するわけにはいかないの。今回失敗すれば二度と拓人さんに近づくことも出来ないだろうし…今日、拓人さんとの子供が出来ればこっちのもの。子供ができさえすれば、私と結婚するしかないもの!!」

「帰ってください!!そんな人に拓人さんは渡さない!!」

「フフッ。もう無理。ここまでやって後には引けない。私はやり遂げなければいけないの。だから…ごめんね?」

女の人は急に包丁を取り出して私のお腹を刺した

女の人はお腹から包丁を引き抜き私のお腹から血が流れて落ちる

痛みのあまり立っていられなくなり私は拓人さんを離してその場にうずくまる

痛い

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

それでも…ここで諦めるわけにはいかない

だってここで引いたら拓人さんはこの女に襲われて既成事実を作られてしまう

私はお腹から血を流しながら床で昏睡状態の拓人さんを抱きしめる

「ダメ…拓人さんに…酷いこ…と…しないで…」

「そういえば…迫田さんは小説家でしたっけ?こんなに美しいのに勿体ないですよね。」

そう言って私の右腕を今度は包丁で刺してきた

「きゃあああああああああああ!!」

右腕に激痛が走る

「あーぁ。これで小説も書けなくなっちゃいますねぇ。迫田さんの小説が読めなくなるの残念だなぁ。」

こわい

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい

もう二度と…小説を書けなくなる…?

私はお腹と右腕の激痛を堪えて、玄関から逃げ出した

ハァ…ハァ…ハァ…

どうする?どうすればいい?

マンションの外まで逃げてきて今、するべきことを必死に考える

警察に連絡…?

すぐに来てくれるか?

とりあえず鈴木さんと…純也さんに連絡を…

ポケットにスマホを入れていたのでまずは近くに住んでいる鈴木さんに助けを求めた

「た、助けて下さい!!た、拓人さんが変な女の人に襲われそうで…!!で、でも!!1人で助けに行ったらダメです!!刺されちゃう!!気をつけて!!」

私は鈴木さんに電話が繋がって捲し立てるように話す

「お…落ち着いてください。どうしたのですか?変な女の人?刺されるということは凶器を持っているのですか?」

「そう!包丁持って襲ってくるの!だ…だから気をつけて…」

アドレナリンが出ていて興奮状態だったのが冷めていき

呼吸が難しくなってきた

苦しい…

「お願い…拓人さんを助けて…」

私はそう伝えてスマホを切った

次に純也さんに電話をしたかったけれど、そんな気力は残っていなかった

力尽きてその場に倒れ込む

意識が朦朧としてきた

私は…このまま死ぬのかな…

「おい!!大丈夫か!!」

私はかろうじて目を空けると男の人が私を抱えて声を掛けていた

「きゅ…救急車!!」

と言うので私は男の人の手を握って止める

「ダメ…あまり…大事にすると…ダメだから…」

「何言ってるんだ!!あんたこのままだと死ぬぞ!!」

「お願い…人目につかない病院に連れて行って…」

「…くそ!!絶対に死ぬなよ!!」

男の人は救急車を呼ぶことをやめて私を抱えて走り出した

私が…拓人さんを1番大切に出来ていれば

拓人さんが襲われることなんてなかったのに

小説が書けなくなる恐怖から私は逃げ出した

葛藤が頭を巡る

助けたかったのに

何も出来ずに逃げた

ごめん…拓人さん

私…やっぱり拓人さんを幸せに出来なかった

一筋の涙を流して私は意識を失った

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