朝の姉弟
「ぅん、ふわー」
朝、目が覚めた私は、目を擦りながら体を起こして周りを見回した。
そこは、いつも見慣れている私の部屋だった。
「?私、いつの間に部屋に戻っていたんだろう?」
ただ、不思議なのが。
昨日、私は部屋に戻った記憶がないこと。
「うーん?昨日何があったっけ?……っ!」
昨日の事を思い出そうと記憶を遡ろうとしたら急に頭痛が走った。
「痛っ!うぅ、頭がズキズキする、なんでぇ?」
頭を両手で抑えながら私は呻く。
少し経ち、痛みが引いた私は、思い出すことを諦めた。
「昨日何があったかは分からないけど、私が忘れていたいことなんでしょう。なら、思い出さないのがいいかな?」
私に言い聞かせるように言った。
思い出そうとした時に、寒気が走ったんだから。
「よし!それじゃあ、朝御飯を作りに行きますか」
そう言って、部屋を出た。
朝御飯を作りに向かった時に、姉さんの部屋を横切ったら身体全体から鳥肌がたった。
「っ!えっ、何で鳥肌が?!」
急な出来事に私は、頭が混乱してしまいその場で立ち止まってしまった。
「御華~、そこで何をしてるの?」
混乱していた私に、姉さんの声が聞こえた。
姉さんの声が聞こえた方に顔を向けたら、ちょうど部屋から出てきた所だった。
「ね、姉さん、何でもないよ。おはよう。」
姉さんの方を見たら更に鳥肌が立ち、顔をまともに見れなくなっていた。
「おはよう。でも御華、随分、顔色が悪いけど?」
「だ、大丈夫!それより、今から朝御飯を作るけど何か要望ある?」
私は、誤魔化すように料理の要望を聞いた。
その言葉に姉さんは訝しげな表情を作っていたが、料理の要望の方に意識が逸れたみたいだ。
私は、心の中でホッ!っと安堵した。
「そう?大丈夫ならいいけど。それより、料理の要望ね。うーん?」
右手の手の平を頬に当てながら目を閉じて、小首を傾げ考え始めた姉さんを見て私は、相変わらず綺麗だ、っと思った。
それから少しして姉さんは食べたい料理が決まったのか、姿勢を直して言った。
「御華の料理なら何でもいい!」
真理に気付いたとばかりに堂々と言い気った。
それも、両手を左右の腰に当てて胸を張る、というおまけ付きで。
それを聞いて私は、呆れるしかなかった。
「はぁー、姉さん。それが一番、料理を作る側からしたら困る返答だよ。分かってるの?」
姉さんなら料理を作った事があるから理解できるかも、って思って聞いたら。
「分からないわよ?今まで一度たりとも言われたこと無いもの」
あっ!姉さんは、私か両親にしか料理を作った事が無い。
その時だって、私達から要望を言ってるから分からなくて仕方ないのかな?
「もう。はぁー、今日の朝御飯はトーストしたパンとスクランブルエッグにウィンナーとスープにするからね?」
疲れた私は、簡単に作れる料理にした。
「うん!分かったわ。何分位に行けばいいかしら?」
うーん、簡単な料理だけだし、だいたい30分かな?
「だいたい30分に来てくれたらいいよ」
「わかったわ。楽しみにしてるわね?」
姉さんの言葉に苦笑してしまう。
簡単な料理を作るって聞いたのに、楽しみにしてる、なんて言われたらもう少し凝った料理を作りたくなるよ。
「姉さん、来る時間変更ね?」
私の言葉に姉さんは、首を傾げた。
「それはどうして?」
姉さんのせいだからね?気付いていないだろうけどね。
だから私から、言う。
「はぁー、姉さんのせいだからね?楽しみにしてる、なんて聞いたら料理人として、もう少し凝った料理が作りたくなったからよ」
私の言葉に姉さんは目を見開き、すぐに満面の笑顔になった。
「ふふ、ありがとう。楽しみにしてるわ」
「もう、またそうやって」
むぅ、私は頬を膨らませながら、姉さんを注意した。
「ふふ、今度からは気を付けるわ」
姉さんはそう言いながら私の膨らんだ頬を人差し指で軽く押した。
フゥーー
押されて頬が萎んで行くのと同時に、どんどん空気が口から無くなっていった。
「分かったならよし!それじゃあ私は料理を作りに行ってくるから」
私は姉さんにそう言葉を残して、リビングに向かって行く。
「えぇ」
姉さんの声を聞きながら。
「あっ!姉さん、料理が出来たら呼びに行くからそれまで、部屋で待っててね」
「ふふ、えぇ、分かったわ」
何でだろうか?姉さんから微笑ましい視線を感じるのは。
そう思いつつリビングに今度こそ向かった。
もうその時には謎の寒気も消えていた。




