episode 08:またには優しい日もあります
ネコが懲りずに泊り込んだ朝。
朝が弱いのか、学校へ行く支度をしていても全く起きる気配がない。
支度の合間に、何度も声をかけたけれど無駄だった。何の反応も示さない。
仕方がないので、強めにゆっすって声をかける。
「学校行くけど、ネコどうするの?」
それでも反応が見られなくて。
もう『揺する』ではなくなってくるレベルで力任せに転がすと
「…ここにいる」
転がされた姿勢のまま、小さくかすれた声でやっと返事をした。
「そう。じゃあお留守番よろしく」
私はネコを放置したまま、玄関の鍵を閉め登校した。
一日の授業が終わり、家に帰ると、ネコが転がされた朝のままの姿勢でラグに伸びていた。
あれから、動いてないのかしら…。
「…生きてる?」
「…あぁ。おかえり」
微動だにしないままで、しっかりした声が聞こえてきた。
生きてはいるようだ。
というか、なぜその姿勢のままなの。
「…ただいま」
部屋の端にかばんを置き、脱衣所で着替えてからネコとは座卓を挟んで反対側に腰を下ろす。
ネコは体を起こして、手を体の後ろについて支えながらぼんやりと外を眺めていた。
「…悩み事?」
「俺にも悩みはある」
あてずっぽうだったのに、本当に悩んでいたのか。
というか、人の部屋でうじうじ悩まないで欲しい。
追い出そうか、いや、とりあえず聞くだけ聞いてみようか。
「何に悩んでるの?」
すると、私の顔を目を見開いてまじまじと見つめてきた。
「…珍しいな、聞いてくるなんて。明日は槍が降るかもな」
笑顔を作り、足でネコの脛辺りを蹴る。
「人の部屋でうじうじ悩まれても鬱陶しいわ」
ネコは蹴られたところを両手で押さえて、少し涙目になった。
「やっぱ紗世だな…」
「どういう意味よ」
「そのままだよ…」
そのままってなんだ。
さらに、蹴ってやった。




