episode 05:猫パンチをもらいました
その夜。
私は自分の体をまさぐられる感触で目を覚ました。
目を開けると、ネコの顔が私の胸の方にあった。
後頭部しか見えないけれど、見慣れたネコの髪だ。
どうやら、私にまたがって体に触れているらしい。
視線を部屋へ投げるとまだ暗く、夜であることしかわからなかった。
もう一度猫へ視線を向けると、起きたことに気づいたらしいネコと目があった。
「…なんのつもり?」
とりあえず、どいてもらおうと体を押すけれど、びくともしない。
「…俺……」
ネコは触れる手を止めて、視線を下へずらした。
そんな顔されても、この状況を流すわけにはいかなかった。
「どいて」
力をこめて押したけれど、やっぱりかなわなくて。
どうしたらいいかと悩んでいると、ネコが私に抱きついた。
「無理」
そうして、また私の体を密着した状態から触れだして。
手を服の中から入れて、肌を直接撫でられる。
どうして私はこんな状況になるかもしれない、と想定していなかったのだろうか。
甘いとしかいいようがない。
ふがいない自分に腹が立った。
ネコの手はどんどん胸の方へと近づいてきて、そっと丘の下を撫でた。
限界だ。
私は昔の経験を生かして、ネコの首筋に力いっぱい手刀を振り下ろした。
「ぐっ」
ネコは呻き声を上げて、脱力した。
その分、自分に一気に体重がかかって重かったが、仕方がない。
「躾が必要だわ」
私自身の認識の甘さも治さなければ。
とりあえず、ネコを布団から蹴り落とす。
部屋の明かりをつけて、ネコを引きずり外へ放り出した。
風邪を引くことはないだろう。
てか、風邪をひいたところで知らん。
玄関にしっかり鍵をかけ、寝なおした。
朝、目覚ましで起きるけれど、昨夜のことがあって少し眠い。
支度を済ませてドアを開けると、ネコが土下座して待っていた。
「すいませんでした」
そんなこと言われても。
許すことはない。
普段通りに玄関に鍵をかけ、ネコをふんずけて通り過ぎる。
「今日は歩きにくいわね」
いい天気だったけれど。
私の気分は最低だ。




