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episode 10:暴走した猫は止められない


翌朝、私が起きるとネコはすでにもう起きていた。

というか、寝たのかな?

徹夜かしら。


「俺、兄貴を手助け出来たらいいなーと思った」


そして、答えを出したらしくどこかすっきりした表情でそう告げた。


「そう。お兄さんに相談してみたら?」


「おう。一度帰るわ」


またな、とネコは言って、片手をあげてぶらぶらしながら出て行った。

なんというか、真っ直ぐな男である。



バイトから帰ってきたら、また玄関横にいつかの光景のように黒い塊が見えた。

その塊は物音でこちらに気づいて、


「遅い!」


そんなこと言われても。

いるとは思わないじゃない。

それに、言われる謂れもないじゃないか。

バイトに文句言うな。


「…帰ったんじゃなかったの?」


前を通り過ぎて、玄関を開ける。


「帰ったぞ。また来ただけだ」


そんな誇らしげに言われても。


「…そう。入る?」


「入る」


そうして、いつもの定位置に座った。



私もラグの上に落ち着くと、結果の報告をしてくれた。


「あのな?真面目に学校行って、必要なことを学ぶことにした。だから、しばらく紗世に会えない」


うまくいったらしい。

私は頷きながら、


「わかったわ。頑張ってね」


「…それだけか?」


それだけ?って。


「…応援してるわ?」


「なんで疑問系なんだよ…」


どうやら、違ったらしい。

ネコは項垂れながらがっかりした声を出した。


「うるさいわね。なによ、文句ある?」


「あるわ!紗世は寂しくないのか?」


「え?」


寂しい、という言葉にびっくりした。

改めて、考える。

ネコに会えないと、私は寂しいのかしら。

しかし、そんなことを長々考える前に、ネコは言葉を続ける。


「俺は!紗世に会えないのは寂しい」


「えっと…」


「紗世が好きだ。だからいつも一人でいる紗世が心配でたまらない」


言われた言葉が、理解できなかった。


「…好、き……?」


自分で、口に出して言ってみる。

好き、って何。

ネコが私を好き?

思考がショートして、うまく考えられない。


「あぁ、紗世が好きだ」


ネコは、もう一度はっきりと言った。


「えっと、あの…」


私は、うまく考えて言葉を出せなくて。


「返事は今度聞かせてくれ」


「う、うん…」


「じゃあ、またな」


ネコは言いたいことを言うだけ言って、去っていった。

後には、呆然と座り続ける私だけが残された。


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