lastepisode:猫の飼い主
ネコと最後に会ってから、8ヶ月以上が経った。
ネコと出会う前の自分の生活に戻っただけなのだけれど。
数日は、ネコの言葉を真剣に考えた。結局、答えは出なかったのだけれど。
数ヶ月、慣れるまでに時間がかかった。思った以上に、ネコと一緒に居る空間が当たり前になっていたようで。ふとした瞬間に探してしまったり、呼んでしまったりしたことがあった。独り言も増えたような気がする。
3ヶ月が経つ頃には慣れたもので、ネコのことを考えなくなった。
ただ、淡々と学校にバイトと過ごしていくだけ。
そうして、1月になり、2月になり、3月に差し掛かる頃。
バイトから帰ってくると、玄関前にネコがいた。
黒いダウンのジャケットに、マフラー手袋、ニット帽と完全装備である。
足音で気づいたらしく、ネコが私を見て立ち上がり、
「遅い!」
第一声がそれなの?
もっと他の言葉があるでしょ…
盛り上がりかけた気持ちが一気に氷点下まで落ちた。
「バイトよ。…久しぶりね」
少し溜息が出たのは仕方がない。
「おう。第一志望の大学受かったからな。会いに来た」
私の気分とは逆で、ネコはニコニコと笑顔で機嫌がよさそうだ。
随分待っていたのか、頬や鼻の頭が赤くなっていた。
「…おめでとう。まさかほんとに真面目にしてたとは思わなかったわ」
「信用ねえなぁ」
苦笑して、頭を軽く振った。
ネコの前を通り過ぎ、玄関を開く。
「…入る?」
以前のように、尋ねる。
ほんとは、少しドキドキしていたけれど。
「…期待、するだろ?いいのか?」
ネコは、私の瞳をじっと見つめて、気持ちを推し量るように、見定めようとしていた。
私はそんなネコの視線から逃れるように、足元を見る。
「…いいわ」
意を決して猫に視線を合わせる。
「私も寂しかったみたい」
苦笑いで答える。
本当は認めるの癪なのだけれど。
言った瞬間に視界は真っ黒に塗りつぶされた。
「く、くるし…!」
「わり、嬉しくて、つい」
でも、抱きしめられた腕の力は全然弱くならなくて。
「…ほんとにもう、困ったネコね」
そして、私はネコの背に腕を回して抱きしめた。




