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離婚の決意

病院に着いた。

すみれはベッドで寝息を立てている。


⦅なんで、俺は裏切ったんだ?

 なんで、一時(いっとき)でも紬の方が可愛いと思ったんだ?

 ………俺…………。⦆


「あ……あなた。」

「あ……済まない。起こしちゃったか。」

「ううん、いいわ。

 それよりも、どうして来るの?」

「俺のせいだから……。」

「言ったはずよ。あなたも被害者だって……。」

「俺は! 何もされてない……何も、な。」

「それに私が決めて怪我したのよ。」

「そう決断させたのは俺だ。」

「なんで、そうなるの?」

「出来る限りのことはしたい。」

「それって………慰謝料ってこと?」

「離婚は免れないって分かってる。」

「そう…………。

 …………………あ!………あなた、検査結果は?

 どうだったの?」

「陰性だった。」

「そう………男女間の感染が増えてるって………。」

「そうなのか。」

「あなたが感染源じゃないってことよね。」

「コンドームを欠かさなかったし、彼女以外の女性とはヤッテない。」

「正しくは、私と彼女以外ってこと?」

「そうだ。」

「ここで、こんな話して……馬鹿ね。

 プライバシーも、へったくれもないわね。」

「あ……そうだな。」

「…………………ねぇ………。」

「うん?」

「なんで、あなたの彼女は感染したの?」

「………………。」

「私、聞く権利があるわ。」

「そうだな……………彼女の名前は、島本紬。」

「知ってるわ。紬って名前は……苗字が変わったのね。」

「うん、俺とのこと知られて離婚したんだ。」

「離婚……したのね。」

「彼女は……最初……家庭を壊さない関係で……って言ったんだ。

 ご主人とはセックスレスだと言って、寂しいって言ってた。

 だから、そういう仲になった。」

「ダブル不倫の始まり?」

「そうだ………俺は……裏切っているのに……壊したくないって………。

 そう思ってた。」

「それで、どうして彼女は感染したの?」

「彼女が俺と結婚したいって仄めかし始めた。

 それで、距離を取った。

 俺は……すみれと離婚する気が全く無かったからだ。

 彼女は俺と結婚するために、妊娠したいと思ったそうだ。」

「妊娠したら結婚出来るって、あなたが言ったの?」

「否、彼女がそう思ったんだ。」

「そう……妊娠するはず無いものね。」

「…………そうだな………は……ははは………。」

「どうしたの?」

「未だに無精子症ってこと……傷つくな……。」

「あなた! そのことで、あなたを責める気は無いわ。」

「分かってる……分かってても傷つくんだ。」

「…………それで、何故なの?」

「彼女は妊娠するためにネットで俺と同じ血液型の男を求めたんだ。」

「えっ! 嘘でしょう。」

「本人から聞いたから間違ってない。」

「………そんな………。」

「その男に……精子の提供だけを頼んだそうだ。メッセージで……。

 会うまでは……だったかな?

 兎に角、会って精子を容器に入った精子を受け取れると思ってたそうなんだ。

 そういう内容でお互いに納得して会ったと言ってた。

 それが違ったらしい。」

「違った……なら、止めれば良かったのに。」

「どうしても妊娠したかったらしくて、男の要求を断れなかったそうだ。」

「要求って……まさか……。」

「……性行為をする。それで精子を提供する。

 そう言われて……同衾したと………。」

「なんで………それまでして………男の目的は最初から騙すつもりだったのに?

 一度で妊娠できると分からないのに?

 一度限りだったの?」

「それは知らない。」

「何度も、妊娠するまで……だったのかしら?」

「………聞いてない。」

「そこまでして、あなたと結婚したかったのね。」

「俺は!………俺は望んでなかったし、そう言った。」

「愛されてたのよ。彼女なりに……あなたを愛してたんだわ。」

「………愛してたって言われても………。

 もう、俺には愛って分からないよ。」

「紬さんのような愛もあるんじゃない?

 牛島さんのような愛もあるのだから……。」

「……………。」

「でも、あなたの愛はたった一人に向けられているのね。」

「え…………。」

「あなたは、あなたしか愛してないわ。

 紬さんのことも愛してなかったのよね。

 愛していたら、私とサッサと離婚して、紬さんとの再婚を模索してたはずよ。

 でも、あなたは………そうしなかった。」

「俺は………最初からそんな気は無かった。」

「そうよね。だから、あなたは紬さんを愛してなかったのよ。」

「…………そうだな。」

「そして、私のことも愛してないわ。」

「!」

「あなたは、あなた自身だけを愛しているの。前からずっと………。」

「…………………………。」⦅分からない……そんなこと言われても……。⦆

「………別れましょう。」

「!」⦅嫌だ……嫌だ………。⦆

「私が再就職するまで籍に入れたままにしておいて、ね。

 慰謝料は頂きます。

 私の当面の暮らしの為、分かってね。」

「……………………。」

「どうしたの? 顔を伏せて………。」


俺の肩は震えていたそうだ。

泣いて震えていたことに俺は気付かなかった。

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